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2022年3月22日 (火)

Covid-19によりコウモリと疾病論争が再燃

和訳協力:蛯名 郁矢、校正協力:佐々木 美穂子

2020年5月5日 UNDARK News

コウモリとウイルスとの特別な関係性に、科学者達が畏怖の念を抱く一方、病を恐れる者は憎しみを抱く。

ここ数カ月間、Arinjay Banerjee氏は思いがけずネット上で時の人となっている。

Covid-19が世界を揺るがし始めた、2019年12月以降、カナダのオンタリオ州にあるマックマスター大学でコウモリの免疫システムを研究するBanerjee氏は、研究対象を今年のパンデミックの背景となったコロナウイルスであるSARS-CoV-2へと軌道修正した。
現状では、定期的な室内実験を継続する数少ない研究者の1人であり、Twitterのフォロワーが増加し、メールの受信箱がいっぱいになった。
内容的には、励ましの言葉や、新型コロナウイルスがいつどのように終息するのかについての質問が多かった。

しかし、すべてのメッセージが好意的というわけではなかった。
Banerjee氏は、「思いもしないような内容ですよ」と述べた。
「コウモリで実験しているってことは、Covid-19(SARS-2)を作ったのはおまえたちだな」といった内容だ。
「隔離されているってことは、おまえらの研究室にウイルスがいるからだな」といった内容もあったという。

こうした不必要に騒ぎ立てる(しかも根拠のない)非難は今に始まったことでもなく、またBanerjee氏や彼の同僚たちに限って向けられた話でもない。
多くの研究者らは、コウモリが悪い意味で注目の的になっているのは、コウモリへの恐怖心の拡大が一因になっていると考えている。
コウモリとは、ここ数十年間、SARSやMERS、直近ではCovid-19等ウイルス性の病気が発生するたびにその関連性が取りざたされた、哺乳類の一群である。

科学者らは何年もの間、コウモリが自然界で最も高い致死力を有する一部のウイルスと、通常ではありえない休戦協定を結んでいるのではないかと、疑問視している。
コウモリは、悪名高い病原体であるエボラウイルスやヘンドラウイルス、マールブルグウイルス、ニパウイルスなどを媒介するが、そうしたウイルスが発症することは稀であり、明らかな症状がでることはほとんどない。
未処置だとかなりの高確率で死に至る狂犬病に罹患しても、コウモリは無傷で済む場合もある。

こうした驚くべき抵抗力の高さには、進化の過程でコウモリがどのように病気と折り合いをつけてきたのかの謎を解明しようと試みる科学者から、熱いまなざしが向けられている。
そこには、ウイルスへの抵抗力を向上させる新たな治療法につながる関係があるかもしれない。
しかしこのことにより、コウモリを動物から人間に伝染する人獣共通感染症の巣窟のようだと考える人々から、嫌悪の対象ともされる。
Covid-19のパンデミックが始まって以来、コウモリはソーシャルメディアで中傷され、捕獲や駆除の対象となり、ねぐらを焼き払われてさえいるとのことだ。
Banerjee氏やほかの科学者らによれば、こうした行為は、世界中の生態系に不可欠な生物の一群を危機にさらすものだという。

スタンフォード大学の進化生態学者であるHannah Frank氏は、コウモリやウイルスに関する研究結果を、コウモリが過度に悪者扱いされることなく伝えるのは至難の業だと述べている。
動物から感染した可能性がある疾病のパンデミック発生中はなおのことである。
世界中で野生生物の生息域に侵入し、その環境を破壊することにより、人間は自ら、動物が持つ病原体に自分たちを曝露させるようになった。
人間がコウモリを恐れて行動すると、この循環に拍車をかけるだけである。
しかし、こうした現状の中では、そんなことを言っても右耳から左耳に通り抜けてしまうだけだ、とFrank氏は述べている。

コウモリを毛嫌いするよりも、コウモリは病気に抵抗する上での協力者だと考えたほうが良いだろうと主張するのは、スタンフォード大学の疾病生態学者であるDavid Schneider氏だ。
「私がいつも考えているのは、お分かりのように、どうやってよりコウモリのようになれるかです。それが正しい姿勢でしょう」。

生物史上初めてコウモリだと言える生物が進化したのは、数千万年前のことで、その頃哺乳類の系統樹上で、前肢が翼へと変化する分枝が発生した。
それ以来数千万年の間、コウモリは1,400種以上(この数は、現在地球上で確認されている哺乳類のおおよそ1/4に及ぶ)にも分岐し、南極を除く全大陸へ生息域を拡大した。
コウモリは花粉を媒介したり、種子を分散したり、存在自体が病気の蔓延につながる蚊のような半翅類等の害虫を餌にしたりする。
バージニア工科大学の疾病生態学者であり、コウモリ保護論者であるKate Langwig氏は、「たいていの場合、私たちはコウモリに対して何もしてあげていませんが、多くの点において、コウモリは私たち人間を助けているのです」と述べている。

ジョージア大学のコウモリ保護論者であるKristen Lear氏は、コウモリが持つ驚くほどの多様性を考えると、何らかの特徴をコウモリ全体に当てはめないようにすべきであると言う。
(Frank氏は、一部のコウモリの種は、共通の祖先にたどり着くまで5千万年以上かかっており、人間がホエザルから分岐して進化した以上に、コウモリの種の間の進化的な距離が離れている、と指摘している。)

とは言え、種全般として、コウモリは他の多くの生き物には不可能だったことを成し遂げているようである。
コウモリは、翼を持つ恒温動物であり、空を飛ぶことができる唯一の哺乳類である。
コウモリはつつがなく年を重ね、ネズミのような同程度の大きさの哺乳類よりも何十年も長生きする場合もある。
数種のコウモリには、人間等のその他の生物には多大な害を与える、癌から感染性発熱に至るまで、多岐にわたる病気に対する抵抗性がある。

奇妙なことに、コウモリは病気にかかっていることが表に出ないだけで、感染に対して免疫があるためではないようだ。
ここ数十年の間に人間を苦しめたウイルスの多くは、コウモリの体内にも存在する。
コウモリでは、典型的な形で症状が表れていないだけなのである。

モンタナ州立大学の疾病生態学者であるRaina Plowright氏は、こうした奇妙な現象は、コウモリが空へ進出したことの副産物ではないかと考えている。
飛行には多大な労力を要し、新陳代謝は静止状態のおおよそ15倍にも高まり、時には長期間におよぶ夜間飛行に臨むこともある。
このような運動は、分子レベルにおいてさえ体に大きな負担をかけ、細胞が機能し生き残るために必要とするDNAに損傷を与え得る、有害な化学物質の生成が誘発される。
この状況に対処するため、コウモリはそうした破壊をもたらす物質を制御し、傷ついた遺伝物質を紡ぎ合わせる精巧な方法を進化させたようである。

こうした修復システムは多機能で、感染症の症状からもコウモリを守っているようだと、オーストラリア連邦政府の科学研究機関である、Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization(CSIRO、オーストラリア連邦科学産業研究機構)のコウモリ免疫学者であるMichelle Baker氏は言う。
ほとんどの哺乳類はウイルスの侵入を探知すると、病原体を体内から追放しようと、炎症という火炎噴射器のような武器で応戦するが、自身の細胞組織にまで甚大なる損傷を与えることがある。
一方、コウモリは、炎症という危険を伴う反応を抑えることができる。
この緩衝機能は、飛行により生じる負担を緩和する方法と重なる部分があるのだろう。
というのも、コウモリの細胞は、炎症システムを始動させる仕組みの一部を失ったようにも思えるのである。

こうしたことに加えて、Baker氏によれば、室内実験では、コウモリの体内では、細胞にウイルスの生活環の一部を阻害する指示を出す、強力なタンパク質が継続的に生成されており、そのことが感染症との戦いにおいて「先手」を取っているように思えるとのことである。
科学者たちが提示する理論では、この有効な戦略の組み合わせによって、コウモリは、免疫学的な勘所を押さえ、自身の体に不必要な損害を生じさせることなく、侵入者を近づけないよう反応するのだろうとしている。

カリフォルニア大学バークレー校の疾病生態学者であるCara Brook氏によれば、コウモリを宿主とするウイルスは、その感染力を維持するため、上述の「コウモリ特有の性質」への対応策を講じているという。
その中には、細胞間での急速なウイルス拡散を可能にする、強力な分子ツールを進化させることなどが含まれる。
コウモリの強固な防衛に適応できるようになった病原体は、ウイルス抵抗性が低い免疫システムを持つ他の種に壊滅的な損傷を与えることが可能となる。
熟練した剣士が未熟な弟子の攻撃を受け流すようなものだ。

最適な環境下でもコウモリを研究するのは困難である。
野生下では動きを追うのが難しく、また研究室で生態を観察するのにも不向きである。
科学者がコウモリについて様々な生物学的知見を提示しているが、その多くは暫定的なもので、その一部は、科学者らが罠で捕獲できた種にだけしか当てはまらない可能性があると、西サスカチュワン大学獣医学部のウイルス学者であるVikram Misra氏は述べている。

Langwig氏は、例えば、実際にはウイルスはコウモリを発病させており、人間が気づいていないだけの可能性があるとし、「コウモリが問題なさそうに飛んでいるからというだけで、必ずしも体調万全とは限りません」と述べている。

免疫学以外の要因も、コウモリの疾病動態に組み込まれている。
寿命が長く飛行範囲が広い上に、多くの種が高度に社会的な生活を営んでいるため、個体間で定期的かつ密接に接触しており、感染が広がる機会が多分にあるのだ。
こうした複雑な特徴すべてが変数であり、生態学者がようやく理解し始めたところである。

また、コウモリが人間に病気を発症させるウイルスを偏って保有しているかについては、科学者間で意見が分かれている。
2017年の研究では、コウモリはその他の哺乳類以上に人獣共通感染症を宿す役割をしていると結論付けられた一方で、同年4月に発表された別の分析では、コウモリが人間に関わるウイルスの宿主となる性質は「例外的ではない」とされた。
後者の研究グループは、コウモリから新たに発見されるウイルスが相対的に多く思われるのは、コウモリ以外の動物における研究不足が要因になり得ると示唆している。

Banerjee氏は、動物とウイルスとの間にある関係が興味深いことに変わりはないとし、今後の抗ウイルス治療上、コウモリを生物医学におけるダイヤの原石と見ている。
コウモリをはじめとする野生動物の体内に存在する微生物の大部分は、人間にとってまったく脅威とはならない。
しかし、コウモリ起源の感染症は、ウイルスやその他の発病性のある微生物との平和的共存する道を示す可能性があるのだ。

まれに病原体が種を超えて感染することがあるが、コウモリが問いざたされることはほとんどないと、Plowright氏は述べている。
生活のためにコウモリやその他の動物を狩猟し、食べてきた長い歴史を持つ文化は多い。
しかしここ数十年の間に進んだ、都市部の著しい肥大化、森林の分断化、野生種由来の高級肉の販売などを含む全世界的な野生生物取引の増大を背景に、これまでないほど人間と野生種との接触が増大している。

コウモリに寄生するウイルスが人間に移る場合、その原因のほとんどは人間による動物の領域への侵入であり、その逆ではない。
ウイルスが他の種に移る際には、病原体は、遺伝的に異なる2つの宿主と緊密な接触がある状態で適合する必要があり、きわめて稀な状況である。
しかし、モンタナ州立大学の疾病生態学者Dan Crwoley氏の言葉を借りれば、我々人間が動物界に押し入ることで、「自身が好きでいばらの道を進んでいる」のである。
加えて同氏は、「もし私が酔っぱらって電車の前に出たとしたら、電車のせいにはしません」と述べている。

Plowright氏は、経済発展が進み続けるのにつれて、人間が罹患する感染症の数も増加するだろうと言う。
「私たちはこれらの種を、生存能力の限界まで追い詰めているのです」とも言う。
「もう手つかずのものはありません」。

生息地の消失や狩猟といった圧力もまた、動物に新たな環境を強いたり、過度のストレスを与えたりする原因である。
結果として、そうした動物は免疫力が低下し、病原体を周囲にまき散らす可能性が高くなる。
コウモリを刺激することで、「私たちは最悪の事態を引き起こす可能性を高めているのです」とMisra氏は言う。

こうした事情で、昨今の過剰なまでのコウモリに対する拒否反応は、さらに状況を危うくしているとLear氏は述べている。
各メディアの報道によれば、Covid-19のパンデミックが始まって以来、コウモリを標的とする目に余る暴力的な行為が増加してきたように思える。
そうした行為により、侵攻者たる人間が恐れるまさにそのウイルスと、なおさら緊密に接触することになる。
焼き払うことで根こそぎ排除しようとする等の蛮行は、SARS-CoV-2がコウモリから人間へと直接感染したという確証もないままに行われている。
これまでの予備調査では、少なくとも1種の「中間」宿主、おそらくはセンザンコウが橋渡しとなり、病原体が人間に入り込んだと示唆されている。

Schneider氏は、アイザック・アシモフ著『ホステス』を引き合いに出している。
この作品は、1951年発刊の短編SF小説で、地球にやって来た数種類の異星人の間で、死に至る謎の病気が蔓延する様子が描かれている。
人間が感染源だと判明し、その病原体は人間にとってはごく普通なもので、その存在にすらほとんど気づかないけれども、地球外生命体を速やかに死滅させるのであった。

「私たちは目に見えないウイルスを運んでしまっているのかもしれません」 とSchneider氏は述べる。

こうしたことから、おそらくは、コウモリが人間の隣人としてあることは非難されるべきではない、とLangwing氏は述べている。
実際に、現在コウモリはこれまで以上に保護を必要としている。
2020年4月に、アメリカ合衆国魚類野生生物局と国際自然保護連合(IUCN)は、人間がSARS-CoV-2を北アメリカのコウモリに広める可能性があるとの懸念から、野生のコウモリと直接的な接触を伴うフィールドワークの一時中断を推奨した。
コウモリとウイルスとの歴史から考えれば、Covid-19のコウモリ版、つまり、コウモリが新型コロナウイルスを原因とする病気を発症することはまずないだろうが、コウモリは自身が抱える感染性の病気に苦しんでいる。
「白い鼻症候群」というアメリカ大陸全体でコウモリ個体群に大きな打撃を与えている真菌性の病気である。

コウモリ調査の中断はそういつまでも続くわけではない。
しかし、コウモリの保護を目的とするプロジェクト等の調査を短期間中断するだけでも、脆弱な種をさらに危機的な状況においやることになるし、ひいてはそうした種によって支えられている生態系にも害が及ぶとLangwing氏とLear氏は懸念している。
コウモリは保護の継続を必要としており、特に、コウモリにはまだ私たちに教えてくれることがたくさんある時なのだから、とLear氏は言う。

ウイルスと共生するコウモリの能力について、彼女は次のように述べている。
「『さあ、コウモリにはできているのだから、私たちにだってどうにかできますよ』と言える大きなチャンスです。だから、コウモリを殺さないで。きっとコウモリは将来、今ウイルスとどのように戦うかを知る鍵になりますから」。

ニュースソース:
https://undark.org/2020/05/05/covid-19-bats/

 

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