食料安全保障と大災害・パンデミックからの回復力を促進
和訳協力:金子 さえ、校正協力:長井美有紀(Myuty-Chic)
2020年5月20日 IUCN WCC 2020 News
現在実施されている農業生産活動の中には、気候変動を著しく助長し、淡水や海洋資源への抑圧要因となり、生物種および生物多様性の喪失において重要な誘因となっているものがある。
IUCN(国際自然保護連合)は、現行プログラムおよび提案されているプログラムの両方において、生産景観の生態学的健全性を回復する必要性を認識している。
農業生態学は、より少ない水で、農薬を使わずに、生物多様性の保全、流域の保護、気候変動への対応など、実際に環境にプラスの効果をもたらす実践法である。
Para la Naturaleza(PLN)は、ハリケーン・マリアによってインフラと作物に被害を受けた農家への経済的な救済を行うために2年以上前に立ち上げられた、農業生態学プログラムを通じて、IUCNの生産景観に着目したプログラムと持続可能な開発目標に沿った活動や行動を行っている。
PR x PRやRotary International(国際ロータリー)などの団体からの寄付により、1,000USドルから5,000USドル(約10万~50万円、2020年10月5日付換算レート:1USドル=105.6円)までの少額寄付が100以上の地元の農家や加工業者に贈られた。
このプログラムの理由は2つある。
一つは、プエルトリコが300万人の住民に、食料安全保障を提供する代替手段を講じることなく、採取型農業的な単一種栽培を放棄したということだ。
もう一つは、カリブ諸島は年に6ヶ月間もハリケーンによって脅かされており、有機あるいは回帰型農業がそれらの脅威に対してより耐性が高いという強みがあることだ。
プエルトリコでは、最も速く復興した農場は、農業生態学的な実践をした農場であった。
農業生態学は、小規模で、自然災害から回復する能力がより優れていることによって特徴付けられている。
なぜなら、異常気象からの影響度が異なる作物を組み合わせているからである。
小規模農家では回復が速いだけでなく、生産効率と生産性もより高くなり、外部への依存度も低い。
PLNの助力を得て、農業生態学を採用した農業への投資は実を結び始めている。
COVID-19による夜間外出禁止令が発表され、スーパーマーケットチェーンが混雑し始めると、食品の流通が制限され、プエルトリコ人は食糧が入手しづらくなっていった。
営業時間の制限、既存の業態の店の閉店、接触による感染の脅威に呼応して、農家団体は、地元の、農業生態学を採用した作物の受注量が増えるのを目のあたりにした。
とりわけ、このことは消費者の行動の変化や持続可能な農業への転換により変えやすい道筋を示している。
カムイにあるMicro Finca farmのオーナーである農家のTadilka Rivera氏は、売上と地元の消費における新たな伸びに気付いた。
「COVIDの影響で、多くの人が新たな顧客となりました。自分たちの暮らす地域に農家がいて、必ずしも食糧をスーパーマーケットに買い物に行く必要はないことを、彼らが知るきっかけになっています。」
ウトゥアドにあるCampesino Apoyo Mutuo farmのFello Perez氏も、彼の作物への受注が50%増加したこと、また地元産品の消費や山岳地帯でのデリバリーの流行についても言及した。
Perez氏と Rivera氏はともに同じ配達モデルを使用した。
葉物野菜や根菜、果物、スパイス、シロップなどでいっぱいの季節商品をバスケットにしたのだ。
グアヤマのFinca Carite 3.0 farmのFernando Maldonado氏が言うように、これらのバスケットは、農家と消費者の間に信頼関係を育む優れたツールである。
消費者は、たとえ少し割高であっても、それが国に投資する方法であるし、何よりも、より新鮮な食べ物を得ることができるので、地元で購入することに非常に前向きだ。
PLNの農業生態学コーディネーターであるSalvador Coleman Tio氏にとって、いざという時、農家や漁師はフードサプライチェーンの混乱に備えて、人々を養うための防衛線の最前線にいる人々だ。
プエルトリコの農業は、PLNとともにあって、IUCNの目標に沿って正しい軌道に乗っているだけでなく、農地の保全と回復を進めながら、こういった脆弱性に対処しようと務めている。
これにより、持続可能な経済を育てているのだ。
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