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2021年12月28日 (火)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の先にある未来には地球の健康の再生が必要

2020年4月22日 Landscape News

和訳協力:神前 珠生、校正協力:ジョンソン雅子

歴史上、感染症は人類にとって最大の致命的脅威の一つであり続けている。
人類の長年にわたる感染症との係わりにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、パニックによる食料の買い占め、株の売却、ロックダウンと国境封鎖をもたらし、私たちが脆弱な存在であることを思い出させ、世界に衝撃を与えた。

しかしながら、この悲惨な健康危機に直面しても、人類の努力と創意の力は十二分に発揮されてきている。
数週間のうちに遺伝学者はウイルスのゲノム配列を解析し、世界中の研究室をオンラインでつなげてワクチン開発が開始され、自動車メーカーは工場設備を医療器具生産用に変換し、そして、〝ソーシャルディスタンス〟や〝フラットン・ザ・カーブ(感染者のピークを抑える)〟といったスローガンが、私たちの語彙の一部となった。

振り返って考えることは素晴らしいが、将来を見据えることはさらに素晴らしい。
私たちは、過去の危機を振り返ることから脱却し、気候変動、生物多様性の喪失、森林破壊、誤った土地利用の管理によりもたらされる今後の諸々の危機を予測し、備える必要がある。
どうしたら、我々はこのパンデミックから、未来の破滅的状況を回避する術を学べるだろうか?
それは、病原菌からのもののみならず、環境、社会的・経済的危機、そしてそれらによる地球環境への脅威である。

人類の持つ脆弱性と創意工夫の才は、気候変動、景観の劣化、生態系の破壊によって、未来がどのような姿になるかを予見させてくれる。
私たちは断固として、こうした問題に取り組まなければならない。
COVID-19の危機を通して、自然は、私たちに人間の健康、回復力を持つ景観生態系、経済の安定および私たちの暮らしとの繋がりを改めて認識させ、 行動しないことが引き起こす現実を私たちの目の前につきつけた。
私たちは、危機対応を怠っている。

CIFOR-ICRAF(国際林業研究センター・世界アグロフォレストリーセンター)において、私たちは健全な土壌が、人間の健康と環境の健全性の双方を支えるという先駆的理念の構築を支援した。
私たちが食糧、繊維、水、木材などを得る景観は重要である。
この管理の失敗が人類の脅威となるウイルスの発生元となることも多い。
COVID-19、エボラ出血熱、エイズ、ジカ熱といったものがそのほんの一例として挙げられる。
陸域環境の健全性を維持することに失敗すれば、現在のCOVID-19との闘いと同様の危機を招き、私たちの健康と生活に脅威をもたらす結果につながる。
私たちが、より広く長期的な視点から、現在の危機の先を見通す際に、次の4つのステップを踏むことが、地球の健康を取り戻すために極めて重要である。

1.食糧生産の方法を変える
世界が食料を得るためには、土壌に栄養を与えなければならない。
再生農業は、土の健康を強化、維持し、それによって生産性を向上させるものである。
これは、従来型の化石燃料を基盤とする農業の対局にある。
世界中の従来型農業が営まれている農地では、土を耕し、また収穫から次の収穫までの間は表土が露出したままにされるため、地中の炭素が半減している。
再生農業によって地中の炭素含有量を増加させると、ある研究では、年間の炭素排出量をる30億tを削減できるとしており、その量はEU(欧州連合)の温室効果ガスの年間排出量とほぼ同等となる。
アグロエコロジー、アグロフォレストリー、そして自然農法による食糧生産は、地力を回復させ、生活を守る上で大きな役割を果たすであろう

2.農業を支える森林と土壌を復元する
土壌の劣化が生態系サービス、製品生産、生計に与える損失は、世界で年間6兆USドル(約630兆円、2020年10月2日付換算レート:1USドル=105.616円)に及ぶ。
ボン・チャレンジのような新規戦略の一環として、陸域の環境復元は、土壌の生産性を復元すると同時に、雇用を創成し、商品を生産し、経済的に成り立つ事業とならなければならない。
私たちは、生態系を〝元の通りの〟無傷のままの状態に復元しなければならい、という考えからは脱却する必要がある。
ほとんどの場合、これは不可能である。
そして植樹では不十分であり、場合によっては悪い手法となることさえもある(生物多様性という観点からは、草原に植樹するのは誤りである)。
自然が自ら再生する力を援助することが、生物多様性のための第一の選択とならなければならい。
世界規模で行う森林再生は、200gt以上の炭素隔離、保護地域における生産力のある緩衝地帯の形成、そして製品生産と生態系サービスを生み出すことに繋がるだろう。

3.サプライチェーンを持続可能なものとする
既存のサプライチェーンと取引は、森林破壊、土地の劣化、温室効果ガスの排出、そして健康危機の原因となっている。
そうである必要はない。
森林破壊の責任に言及した企業の誓約ついての独立した立場で監視し、持続可能でない行為に対する誘因の排除、生産者に対し公正価格を支払うこと、厳格な貿易措置をとることは、善良な経済活動を行いながら、並行して利益を生み出すことは可能であると証明するのに、大きな役割を果たすことになるだろう。
アフリカとアジアにおける食糧の80%は、小規模農家により生産されており、ゼロから徹底的に持続可能性を再構築するには大変有利な状況である。
サプライチェーンは、どの段階でも経済的、環境的または社会的に持続可能でなければ、全体として持続可能なものとはならない。

4.自然資本の価値を正しく評価する(貨幣を食べることは出来ない)
自然資本とは、私たちが生活するために依存する、水、土壌、生存圏、食糧、空気、燃料などのことである。
試算によっては、こうした自然の生態系サービスの金額的価値は、全世界のGDPよりも大きいとさえ言われている。
残念ながら、これまで私たちは、自然資本に貸借対照表や、市場において価値をつけることができなかった。
自然資本に価格がつけられなければ、それを保全したり、改良したりしようという気は起こらない。
その結果については多くの報告がある。
ココアからヤシ油に至る商品の生産において、森林破壊、二酸化炭素排出、地域の生計手段の破壊、生物多様性の損失 、加えて土地利用の誤った管理によって誘因される食糧システムといったことの対価は換算されていない。
それに代わり、食糧生産と景観の維持を回復力があり、バランスの取れたものとする新しい取組みを、世界は必要としている。
これがより良い食生活、受粉媒介動物の保護、土壌への農薬散布の削減、より効率的な水資源の利用、耕耘の削減と被覆作物、森林農業の増加、そして単一栽培農業から農業生態学的多様性への転換、といった結果を生み出すことになる。

残念ながら、気候変動を防ぐマスク、森林破壊に対する消毒薬、劣化した土地から隔離するソーシャルディスタンスは存在しない。
しかしながら、私たちは、景観と地球を守るための盾は持っている。
そうすることによって、人類の健康と地球に暮らすすべての人々の生活の質を揺るぎないものにすることが可能となる。
COVID-19のパンデミックは、今こそ行動の時であることを私たちに提示しているのだ。

ニュースソース:
https://news.globallandscapesforum.org/44054/the-future-beyond-covid-19-requires-rebuilding-planetary-health/

 

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