スイス、外国人トロフィーハンターによるアイベックスの狩猟を禁止
和訳協力:矢船 仁美、校正協力:山田 寛
2020年8月28日 PHYS ORG News
裕福な外国人が大金を払うことで、野生ヤギの1種である保護種のアルプスアイベックスを撃ってトロフィーにすることを許可していることについて、激しい批判に直面しているスイスのある地域では、金曜日にその慣行に終止符を打つことを決めた。
スイス南部のヴァリス州は、トロフィーハンティングを許可する唯一の地域であったが、来年以降、外国人にはアイベックス猟の許可を与えないとの声明をだした。
ヴァリス州は、州内のアルプスアイベックスの個体数が健全に増加し続けていることを強調し、今はまだ、狩猟による責任ある個体数管理が必要であると述べた。
しかし、2021年以降「アイベックスの個体数管理は、ヴァリス州在住のハンターもしくはヴァリス州の狩猟免許を保持しているハンターによってのみ実施される」と州は発表した。
すでに排除される運命にある老いた雄のアイベックスをトロフィーハンターが撃つことについて、州は何年もの間ひそかに許可してきた。
しかし昨年、公共放送RTSで放映されたドキュメンタリーによって、より多くの人々がトロフィーハンティングに注目し、トロフィーハンティングの慣行およびトロフィーハンティングがもたらす種の生存能力への潜在的な影響について、スイス中で激しい議論が巻き起こった。
憤慨した市民は、「恥ずべき」狩猟の中止を求める署名運動を開始し、数か月で約75,000件の署名を集めた。
スイスのアイベックス個体群は、19世紀末にすべて絶滅したが、近隣のイタリアから再導入されて以来、スイス国内における個体数は約17,000頭まで増えてきている。
ヴァリス州のアイベックスは、2019年末に6,030頭を数え、その数は同州の15年前の約3,500頭の2倍近くになる。
ヴァリス州では毎年数百頭のアイベックスの捕殺が許可され、今年の最大割当量は544頭である。
捕殺対象はすべての年齢層にわたり、性別にかかわらず対象となるが、通常11歳以上の雄はかなりの高値でトロフィーハンターに提供される。
価格は角の長さによって決まり、最も長い角の計測値は約1.1mで、角一対で最大20,000USドル(約210万円、2020年10月16日付換算レート:1USドル=105.4円)を稼いだと報告されている。
ヴァリス州は、アイベックスのトロフィーハンティングで毎年数十万ドルもの収入を得てきた。
2020年に当局は、11歳以上の大型の雄、最大45頭まで狩猟許可を与え、そのうち外国人ハンター向けは25頭である。
ヴァリス州は、外国人トロフィーハンターがいなくなれば収入を失う一方、この変化は、1日狩猟許可証を持つ外国人を監督および同伴する任を担う野生動物保護管の業務負担の軽減につながることを金曜日に指摘した。
これによりヴァリス州は人件費の節約ができるようになり、議論の主な問題点の1つであった、ヴァリス州住民向けの狩猟ライセンス価格を引き上げる必要がないということだ。
ニュースソース:
https://phys.org/news/2020-08-swiss-foreign-trophy-hunters-alpine.html
★ニュース翻訳を続けるためにご協力ください!
→JWCSのFacebookでページのイイネ!をして情報をGET
→JWCSのメーリングリストに登録してさらに情報をGET
→JWCSの活動にクレジットカードで寄付
« 霊長類の保護対策の効果、いまだ不十分 | トップページ | ディスコライトでパニック:ボツワナのチョベ地区におけるアフリカゾウの侵入を防ぐ太陽光発電ストロボライト »
「23 ヨーロッパ」カテゴリの記事
- 絶滅寸前のヨーロッパウナギが香港のスーパーマーケットに流通(2021.10.26)
- スイス、外国人トロフィーハンターによるアイベックスの狩猟を禁止(2021.10.12)
- 50年以上にわたりタグ装着・再捕獲したサメから得られた最新のサメアトラス(2020.03.17)
- 有機畜産農業が野鳥を増やす(2020.01.31)
- 象牙同盟2024:政治指導者、自然保護活動家、著名人らが共に象牙需要の問題に取り組む(2019.02.19)
「12 哺乳類」カテゴリの記事
- Covid-19によりコウモリと疾病論争が再燃(2022.03.22)
- スリランカがゾウ保護のためプラスチック製品の輸入を禁止へ(2022.01.25)
- 陸棲脊椎動物の絶滅が加速していることが調査により判明(2021.12.14)
- キツネザル類のほぼ3分の1とタイセイヨウセミクジラが絶滅危惧IA類に―IUCNレッドリスト(2021.11.16)
- ディスコライトでパニック:ボツワナのチョベ地区におけるアフリカゾウの侵入を防ぐ太陽光発電ストロボライト(2021.10.19)
「36 野生生物の利用と取引」カテゴリの記事
- ブラジルの先住民グループが違法伐採をめぐる数十年の争いに勝利(2022.04.19)
- 香港市場に出回る絶滅危惧種であるハンマーヘッドシャークのフカヒレは、主に東太平洋地域産であることが判明(2022.04.12)
- 空輸による動物密輸と人獣共通感染症拡散の防止(2022.01.11)
- 陸棲脊椎動物の絶滅が加速していることが調査により判明(2021.12.14)
- クロマグロ産卵場における致命的な漁具に対するトランプ政権による許可の差し止めを求め複数の団体が提訴(2021.11.02)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント