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2021年8月10日 (火)

ウミガメと陸ガメの受難

和訳協力:手塚 珠真子、校正協力:伊川 次郎

ウミガメと陸域のカメの世界的専門家が、絶滅の危険性に関する最も包括的な研究結果を発表し、回復に向けてのロードマップを提示

2020年6月22日 Turtle Survival Allince News

International Union for Conservation of Nature's(IUCN:国際自然保護連合)のTortoise and Freshwater Turtle Specialist Group(淡水ガメ・陸上カメ類専門家グループ)所属の51名の専門家らは、2020年6月22日、ウミガメと陸域のカメの絶滅の危機に関する最も包括的な研究結果をまとめ、学術雑誌Current Biologyに発表した。
ウミガメと陸域のカメ全360種のうち、半分以上が絶滅の危機に瀕しているが、論文の著者らは、減少している状況を逆転させ、多くの種を救うために推奨することがあると述べている。
専門家らの分析と調査によると、世界的な保全戦略として重要なのは、野生のカメの食用やペットとしての飼育目的の取引をやめることだという。

毎年何十万匹もの野生のウミガメと陸域のカメが捕獲され、取引されている。
どちらも寿命が長く、成長は遅い。
つまり、野生から捕獲された分の個体数を回復するのに十分な速さで繁殖できないということだ。
この数年間で最大規模の押収劇が何度か発生している。
昨年5月、メキシコ当局はかつてなく大量の生きたウミガメを押収した。
メキシコから中国に15,000匹のカメが密輸されようとしていたのだ。
2018年にはマダガスカルで、わずか数か月のうちに2回ホウシャガメが押収され、合わせると18,000匹近かった。

ウミガメと陸域のカメのうちの3種が過去200年の間に絶滅したが、この商取引に歯止めをかけない限り、その数は増加するだろうと研究論文の著者らは述べている。

「カメたちは何百万年もの間、長くゆっくりとした命の営みを続けてきましたが、人間による密猟や生息地の破壊に直面する現代では、それがうまくいくとは言えません」と論文の筆頭著者であるCraig Stanford氏は述べた。
Stanford氏は南カリフォルニア大学の生物学の教授であり、IUCN-SSC(種の保存委員会)の淡水ガメ・陸上カメ類専門家グループの会長を務めている。
「30年前は、カメ類の中でもホウシャガメは地球上で最も繁栄していた種の1つでした。 しかし、2009年にマダガスカルで政変が起きると密猟が劇増し、ホウシャガメの生息数は激減しました。 国際的なペットトレード目的の密輸と現地の人の食肉による消費が、二重の打撃となったためです」。

ウミガメの肉と卵を食用としている人々の需要が減れば、多くの絶滅危惧種の危機は緩和される。
論文の執筆者らは政府に、現行の法律を厳格に施行し、絶滅危惧種の国際取引を規制するCITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称「ワシントン条約」)を効果的に実施して、乱獲を阻止するよう要請している。

「カメ自体、またその一部、およびカメを使用した製品の国際取引が、何十年にも渡り数種のカメとその個体群にとって深刻な脅威となっていることが確認されています」と、Global Wildlife Conservation(グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション)のカメ類保全プログラムの責任者であるPeter Paul van Dijk氏は言います。
「カメ類の需要が世界中の国々や大陸において次から次に発生し、個体群や種を次々に根こそぎにして彼らの生残に悲惨な結果をもたらしていることは、あまり知られていないのです」。

野生生物の取引は、ウミガメと陸域のカメのほかにも多くの種を絶滅の危機にさらし、さらには人間の健康被害をも引き起こしている。
SARS-CoV-2(SARSコロナウイルス2)は人間がCOVID-19に罹る原因となるが、その発生源はキクガシラコウモリ類であり、そこから別の種を経てヒトに感染すると見られている。
論文の著者2名が所属するグローバル・ワイルドライフ・コンサベーションと、WildAid(ワイルドエイド)、そしてWildlife Conservation Society(野生生物保護協会)は、人獣共通感染症の発生によって起こり得る将来のパンデミックを予防し、絶滅危惧種を保護するためにCoalition to End the Tradeを結成した。

ウミガメと陸域のカメを保護するためにできることは、野生生物の取引をやめることばかりではない。
野生のカメの生息地の多くは、商業的農業、大規模な牧畜、環境汚染、砂漠化、水力発電プロジェクト、生息地の分断のなどにより破壊されることがおおく、危機的状況にある。
とはいえ、それでもまだウミガメと陸域のカメが集団で十分健康的に暮らせる生息地も残されている。
科学者らは、多様な種が生息する場所を世界で16か所ホットスポットと認定した。
そうした自然が残る地域を保護することで、未来は大きく変わるだろう。

論文の著者らは、ウミガメと陸域のカメ、またその生息地を守る上で、地域社会がパートナーとなって参加することが必須だと主張する。
エコツーリズムは、人間にとってもその周辺に生息する他の生物にとっても有益なモデルとなり得る。

「カメの保全を促すには、カメをメインとしたエコツーリズムを奨励するなど、他にいくつか方法があります。 バード・ウォッチングに倣い、タートル・ウォッチングやタートル・ライフリスティングと呼ばれているものもあります」と、グローバル・ワイルドライフ・コンサベーションの保全プログラムのリーダーであるRuss Mittermeier氏は言う。
「さらには、重要な生態系サービスにおいてカメが果たしている役割をもっとわかりやすく強調する必要があります。 例えば、陸上、淡水、海洋の生態系の中でカメが関わるエネルギーの流れ、栄養循環、廃棄物の処理、土壌形成、種の散布などの役割が上げられますが、そのいずれもが見過ごされがちなのです」。

保全生物学者がカメの生息地や個体数を観測する上で、科学技術も貢献している。
サイドスキャンソナー(海底面状況探査用)とe-DNA(環境DNA)の技術により、研究者はカメの邪魔にならずに生息地を特定できる。
ほかにもGPSやラジオテレメトリーなどの追跡技術は、ウミガメと陸域のカメの行動と生息域の利用状況を知るのに役立つ。

飼育下で繁殖させることが難しい種もいるにはいるが、保護飼育と繁殖支援プログラムは、ある種のウミガメと陸域のカメにとっては救いとなった。
だが、それで成果を上げるには、カメを放す場所に自然を残しておかなければならない。
エスパニョーラ島のガラパゴスゾウガメとオーストラリアのクビカシゲガメは、どちらも飼育下での繁殖努力により絶滅の危機を免れた。

Turtle Survival Alliance(カメ類保存同盟) Rick Hudson会長

「我々は地球上で最も危機にさらされている脊椎動物の中の1グループであるウミガメと陸域のカメをよく気に留めてはいますが、この研究論文は我々にそうなっている原因と、今現在カメ目が直面している脅威を余すところなく伝えてくれます。 楽しい話ではありませんが、この研究論文にある成功事例を励みとして、種を救う取り組み強化のきっかけにしたいと思っています。 カメの寿命は長いので、時間が味方してくれます。 カメの保全に関わる組織には創意工夫と強調の精神がありますし、援助も増えていますので、これ以上種を絶やすようなことにはならないと私は確信しています」。

野生生物保護協会、淡水ガメおよびウミガメコーディネーター Brian Horne氏

「カメは生態系サービスを豊かにする役目も果たしており、希少種のカメにとって絶滅の脅威となっている第一の原因は、生息地の消失や劣化ではなく捕獲だとこの論文は解説しています。 ウミガメと陸域のカメの違法取引に対処し、地元の人々と協力することで種の減少を防ぎ、最終的にはこれ以上の絶滅を防ぐことができるでしょう。 こうした希少種のカメを野生に返すには数十年かかります。 カメの多くは成長が遅いですし、多くの子ガメを孵化させることのできない種も多いからです。 私たちには機能的は絶滅しているとされるカメの種を回復させることができる手段、知識、能力があります。 飼育下繁殖されたビルマホシガメの野生復帰の成功事例がそれを示唆しています」。

ニュースソース:
https://turtlesurvival.org/turtles-and-tortoises-are-in-trouble/

 

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