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2021年7月20日 (火)

国際的規制当局の世界最大のマグロの売り尽くし方

和訳協力:伊川 次郎、校正協力:木田 直子

2020年6月16日 Yale Environment 360 news

地中海と東大西洋におけるマグロ類の乱獲が世界中で何年にも渡って報道された後、2010年になって、絶滅の危機にさらされているこの魚を管理している国際的な規制当局が屈服した。
当局が、年間の総漁獲可能量を、記録上最低レベルである12,900tに削減したのだ。
この世でもっともジューシーな寿司ネタとして珍重される、世界中で一番価値のある魚の資源量回復が有望視された。

しかしながら10年後、タイセイヨウクロマグロの状況は再び厳しいものになってきている。
個体数回復のかすかな兆候をつかみ、条約によりこのすばらしい生き物の保護を命じられた組織であるInternational Commission for the Conservation of Atlantic Tunas (ICCAT:大西洋マグロ類保存国際委員会)は、方針を転換した。
2017年末に、マグロ類の資源量回復のための6年間の漁獲量削減圧力は十分なものであったと結論づけたICCATは、東大西洋と地中海における総漁獲量を2010年の最低水準から3倍に増やし、2020年の漁獲量割り当てを過去最高の36,000tに設定したのである。
闇市場が急増している中、総t数の計算に用いられるデータには前々から違法あるいは無報告な漁獲量が含まれていないという事実があるにもかかわらず、である。
2018年の欧州刑事警察機構の報告が明らかにしたところによれば、国際的な合意や密漁を防止するための追跡技術があるにもかかわらず、東大西洋のマグロ類の闇市場の規模は合法市場の2倍に上るという。

というわけで、半世紀にわたり、マグロ類やサメ類、カジキ類、カメ類を含む公海上の生き物を管理―およびその保護―を行う責任を負っていた組織そのものに扇動されて、地球上でもっともすばらしい生き物の1種が殺戮され続けているのである。

カリスマ的な陸上動物が同規模で虐殺されれば、世界中で抗議の声が湧き起こるだろう

大西洋クロマグロが絶滅の危機にあることや、その魚肉が驚くほどの高値で売れることは多くの人が知っている。
太平洋に生息する近縁種で重さ613ポンド(約278kg)のクロマグロが、昨年東京の魚市場で記録的な310万ドル(約3億3千万円、2020年9月9日付換算レート:1USドル=105.97円)で売れたが、これは1ポンド当たり5,000ドル(1kg当たり約120万円)に相当する。
しかし、クロマグロの驚くべき特性を知っている寿司愛好者はほとんどいない。
その特性というのは、クロマグロが馬と同程度の大きさにまで成長すること、同じ大きさの仲間と大きな群れを組んで泳ぐこと、温血動物であること、地球上のすべての魚の中で最長距離を回遊する魚の1種であること、である。
また、クロマグロは巨大な心臓を推進力にして、北アメリカの海岸から大西洋の対岸まで40日間で渡り切り、どうにかしてジブラルタル海峡の狭い隙間を見つけて地中海まで入っていくこと、である。

沿岸諸国が危機感を覚えるほど漁業の規模が拡大した1960年代に創設されたICCATは、大西洋海盆のタイセイヨウクロマグロを上手く保護できなかった。
1970年代以来のマグロの個体数減少は、51%から驚異の90%とまで見積もられている。
かつては1,000ポンド(約454kg)以上もの重さがあったタイセイヨウクロマグロは、次第に体長が短くなり、年齢も若くなった。
ライオンやゾウのようなカリスマ的な陸上動物が同じ規模で虐殺されれば、世界中で抗議の声が沸き起こることだろうが、海洋生物の驚異から切り離されている大衆は、タイセイヨウクロマグロの破滅を瞬時に受け入れようとしているように思われる。

漁業資源管理の専門家たちは、海洋保護地域の大幅な拡大から生態系に基づくアプローチの採用まで、長い間改革を議論してきた。
しかしこれらの対策は幅広く実施されているとは言えない。
ICCATの内部関係者にとっては、政府が商業活動規制のために採用するルールの下で漁業が行われる区域を作ることで、その目的を果たしていると言える。
3年前にICCATのメンバー諸国は、彼らの言葉によれば2010年代初期の漁獲撤退の時期に「犠牲を強いられた」漁師に報いるために、漁獲割り当てを引き上げた。
優勢な価値観の下では、大きなクロマグロが豊富な海は経済的に有利ではない。
ICCATに課せられた仕事は生態系の完全性を保護することではなく、取引量(漁業の専門用語では「バイオマス」)を確保し、分配することなのだ。

タイセイヨウクロマグロが今も軽視され続けているということは、野生生物、特に海洋生物を我々がどのように捉えるかを新たに考え直す時期が来たことを示している。
突き詰めれば、ICCATが魚を絶滅させるような管理を進めるということが、人間以外の動物を商品として扱うことの限界を我々に再評価させるに違いない。
動物を商品として扱うこと自体、人間例外主義に対する固い信念の表れである。

近海であれ公海であれ、経営者は漁業の利益がコストを確実に上回るように計らう。
規制当局は市民が食べていけるようにすることを望むが、この目的は金銭的な目的にも繋がっている。
国の経済を成長させる資源として魚を捕らえ、世界貿易の中で受け継いできたシェアを確保することで制海権さえをも競うというものだ。
漁業に関わる企業全体が、市場の支配と富の蓄積のためにのみ存在する物質に魚を貶めることにすがっている。
この作業を続けるには、専門家たちは、短期的に「収穫」―利益―を最大化するべく、魚を目録に記入された生物学的資産の数字に変える必要がある。
漁業の業界用語では、「資源」は「単位」ごとに分割可能な「製品」であり、「加工」し「積み替えられる」ものだ。
目的地である先進経済圏には強固なインフラ設備が整っていて、ほんの数時間で、寿司ネタのトロのような冷蔵された珍味を地球の裏側にまで届けることができるのである。

海洋生物からの離隔は、根深く浸透し一般化している。
魚を単なる商品として扱うことへの同意は種差別の際立った実例であり、人間―中でも最上位の特権階級の人間―が万物の中心に位置すると考えることだ。
人間以外の生き物であることから切り離した状態においてのみ、世界中での野生の魚類の殺戮が正当化され得る。
それはしばしば奴隷や低賃金労働者を酷使しての行いである。
現代の生態系危機の核心には、我々が仲間である生き物の価値を認め尊敬する能力を持たない、あるいはそうすることを不本意に感じるという事実がある。
このことが、大洋のように広大で変化に富んだ世界を、魚を軽視し服従させることによって、人間に利益のためにのみ従属させ利用することができ得るし、またすべきであるという傲慢さに基づく、制度上の取り決めや政策決定を生み出し、正当化しているのである。

この略奪的な論理は、海洋統治の基礎に焼き込められている。
第2次世界大戦後の喪失感によろめき、ヨーロッパや日本で食料不足が深刻だったころ、一握りの工業国は商業王国を築こうと漁業への取り組みを拡張すべく多大な投資を行った。
彼らは、人口爆発による食料需要に応じるだけでなく、表面上はただで利用できるように見えた自然から利益を得ようと力を注いだ。
戦後の楽観主義は「発展」を約束し、大きな工船や音波探知機、そして特に長年漁業と深い関わりのあった水産学によって洗練された一揃いのモデルや指標の急増につながった。
これらの道具や手段は、人間以外の生き物はこの地球上では代替可能な資源―よそ者―であるという仮定をさらに強化した。

この永続的な動向のよい例が、漁業規制の指針であるmaximum sustainable yield(MSY:持続可能最大収量)である。
MSYは、アメリカの政府職員が主導し、1958年の海洋法条約で成文化され、今では世界中の漁業管理の基本的法則となるまでに普及した。
MSYは、字が表すとおり、全滅の寸前まで魚を乱獲する。
基準漁獲量が下方修正され、絶え間なく捕獲されてきたために捕れる魚が時とともに一層小さくなっていく現状においてさえである。
こうした状況の中で、専門家たちは国際法の下で彼らに要求される仕事をこなすだけである。
それは、「食糧その他の海産物の最大限の供給を確保する... 第一に...人間の消費のため 」ことだ。

このような人間中心の世界観の法制化の結果は甚大だ。
1950年代に現代的な海洋管理の枠組みが確立されて以来、野生の魚類の捕獲は過去に経験したことがない規模と速度で急上昇してきた。
そのため、今日は需要を満たすために釣りあげられる魚は、全世界の海産物の供給量の半分近くは野生ではなく養殖された魚である。
このような展開を最も深刻に感じているのが、南半球の発展途上国に住む世界でも貧しい人々だ。
今や漁船団が海洋を略奪してしまったので、彼らはかつてのような沿岸漁業では生計を立てられなくなってきているのだ。

養魚場は画期的な解決策ではない。
私が昨年訪れたノルウェーの養魚場の見学施設では、白衣に身を包んだ専門家が病気の予防のためにサケの腹部に注射器を刺している様子を動画で見せていた。
何千匹というサケがケージの中に閉じ込められているので、感染は常に脅威だ。
エサ代は高価なので、これらの肉食性の魚には植物由来のエサが与えられていた。
70%が遺伝子組み換えの大豆で、野生のサケのような特徴的なピンク色を養殖のサケの肉にも付けるために、廃棄されたエビ殻が混ぜてあった。
マーケティングにも消すことができない事実がある。
それは、通常より早く成長するよう人工的に操作されているために、養殖されたサケの一部は身体が曲がっていたり、世界中で全体の半分が部分的な聴覚障害を持っていることである。

消費者は無意識のうちに、商品が無限に存在する世界で魚はいつでも買えると思っている

海の生き物の暮らしから隔たった大衆は、水産養殖は、乱獲の害から我々を救ってくれるという印象を受けている。
いつでも自由に使える収入のある消費者は無意識のうちに、商品が無限に存在する世界で魚はいつでも買えると思っているのだ。

世界の漁業危機に対する信頼できる解決法は、しばらく前から知られている。
中国やEU、アメリカ、韓国、それに日本のような貿易圏において交付されてきた、資本集約型事業を保証するような漁業補助金は止め、海洋保護区か禁漁区を設ける必要がある。
このような救済策は有効だという証拠がある。
だが、このような提案はいわば最低限のものであり、最高のものではない。
このような救済策は、公益のために政府の強制力を利用し、構造的な変化の可能性を生じさせる。
対照的に、Marine Stewardship Council(海洋管理協議会)が最近提案し、物議をかもしている、東大西洋のタイセイヨウクロマグロを捕獲する船に対する、漁獲物にエコラベルをつけられる漁船団の認定のような小細工は逆効果だ。
それは、それがブルーウォッシュ(見せかけだけの人道支援)であるからだけではない。
それらは、個人の購買力が惨禍を未然に防ぐのに十分である、という誤信を広めるものだからだ。

野生の海洋生物を守るために作られた制度そのものが、それらの衰退に寄与してきたという事実を、我々は直視せねばならない。
この制度をほかのものに置き換える必要がある。
魚を管理しながら大きな魚を絶滅させたことは、自らが手を貸して作り出した生態学的な絶滅の阻止に必要な骨の折れる手段を取るのに乗り気でなかったリーダーたちが率いる、制御されていない官僚政治の論理的な破綻を表している。
問題をこのように捉えることで、ようやく出口が見え始めるのである。

現時点での課題は、これからの対策において誰が重要な役割を果たすかを忘れないようにすることだ。
魚やその他の人間以外の動物の立場も尊重されねばならない。
これを達成する方法として、例えば、意思決定のテーブルへの参加者の範囲を広げ、地域のリーダーや小規模漁業者、歴史家、社会科学者、神学者も含めるようにしたり、法律を作って、市場の尊厳と同様に生命の相互依存性を守るよう政府に要求したりすることが考えられる。
これから前進していくには、そうした取り組みが唯一現実的な方法である。
現実的というのは、現在差し迫っている大量絶滅の危機の巨大さを認め、将来の世代のために海洋生命を繁栄させることに失敗した結果生じた難局に対応する方法だからである。

海洋生物に、認識や感情、社会的な能力があるという証拠が増大している。
それは我々の好奇心を刺激し、政策決定の際の参考になるに違いない。
地味なイカでも、水中で光を当てるショーで仲間に挨拶をする。
心臓が3つあるタコは、7/10秒で色や模様、肌触りを変化させ、目を引くことで内面の感情を表現する。
マッコウクジラは、広大な大洋上で子育てをする。
明らかに、これらは尊敬され尊ばれるべき生き物である。

ノルウェー出身の同僚が、次のような話をしてくれた。
それは2018年のこと、場所はフィヨルドの景色が印象的なところで、養殖場から海へ放出された生ごみや化学汚染物質が絵はがきに写ることはない。
作業員が、サケでいっぱいの囲いの中に珍しい客がいるのを見つけた。
それは1匹のタイセイヨウクロマグロで、海水温が上昇したのでスカンジナビアまでやって来たのだった。
タイセイヨウクロマグロの力は非常に強く、突進して金属ネットに穴を開け、鼻先や顔面に傷を負った。
ダイバーたちがタイセイヨウクロマグロを捕獲し、ケージの中で殺処分した。

最終的に、研究機関がこのタイセイヨウクロマグロの標本を調べて、胃袋が空っぽであることを発見した。
罠にかかってほぼ1週間、おとなしいサケと共に囲われていたにも関わらず、この崇高な生き物は自らを取り巻いていた異国の捕らわれた獲物をただの1匹も食べなかったのだ。

このかつての海の巨人は―小さくなり、衰弱し、やせ細って今やひとりぼっちで死にかけている―、人間と海との関係を再考するよう我々に迫る。
我々に課せられた務めは、人間が破壊し続けているものの喪失を嘆き続けないですむように、我々人間の親族以外の生き物にも耳を傾けることである。

ニュースソース:
https://e360.yale.edu/features/how-global-regulators-are-selling-out-the-worlds-largest-tuna

 

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