地球規模の生物多様の新たな研究が、陸と海の生命の統一マップを利用可能に
和訳協力:多田 薫 校正協力:長井美有紀(Myuty-Chic)
2020年2月5日 PHYS ORG News
モントレーベイ水族館と協力団体が率いる新たな研究は、陸と海の両方における生命の分布を表した、初めての包括的な地球規模の生物多様性マップを作成した。
PLOS ONE(プロス ワン:オープンアクセスの科学雑誌)で本日公開された研究によれば、地球上のどこに生命が分布するのか、またなぜその特定の場所に分布するのかを決定づける最も重要な環境要因について、可能な限りの全体像を提供している。
著者らは、地球全体の生態系を気候変動が崩壊させつつある中、生態系管理の方策に適応できる情報の提供を想定している。
「マップは通常、自分たちがどこにいるかを示してくれるものですが、この調査は今後我々がどこに向かうかも示してくれます」と、モントレーベイ水族館の主任科学者であり、主著者であるKyle Van Houtan博士は述べている。
「以前の生物多様性マップは、陸または海のどちらかを示すもので、対象としない方はグレーアウトされていました。この2つの領域およびこれら2つの科学的領域を組み合わせて、あらゆる動物が複雑な全体像の不可欠な部分であることを示しています」。
種が最も豊富な場所を特定し、その動きのパターンを図にすることは、生態学の柱の1つである。
しかし長い間、そのような研究はほとんど地上領域を対象とするものばかりだった。
陸上はサンプルの採取がしやすく、採取コストも安くすむためである。
「私たちは陸上動物なので、自然と陸を好んでしまう傾向があります」と、ブラジル・サンパウロのIPE(Institute for Ecological Research)の教授であるClinton Jenkins博士は述べた。
「しかしながら、世界の生物多様性の多くは水生生物であり、海や湖、川などの地球表面の70%にあたる部分に生息しているのです。私たちの目標は、最も身近な部分だけでなく、地球全体の生命をよりよく理解することです」。
科学者らはこの研究を通じて、陸や海で種が現在どこに分布しているのか、最終的にどこへ移動するのか、また変化する世界で我々がそれらの種を保護できる最善の方法はどんなものなのか、をより正確に理解できるようになった。
「海域と陸域の二つの領域に関する情報を集めることにより、2つの科学コミュニティを同じ目的をもって調和させています。これにより、何世紀にもわたり人類を支えてきた地球上の生命の統一的で客観的なポートレートが得られるのです」とブリティッシュコロンビア大学およびイェール大学の研究員であるGabriel Reygondeau博士は述べた。
米国、カナダおよびブラジルのNGO、大学、ならびに政府の科学者を含む学際的な研究チームは、67,000種を超える海洋種および陸上種のデータを収集することから始めた。
次にチームは、人工知能または機械学習分野に含まれる人工ニューラルネットワークを使用し、観察パターンの補足説明を行った。
このアプローチにより、チームは生物多様性の分布に対する24もの環境要因の影響を詳細に記録し、ランク付けすることができた。
この研究成果のマップは、陸および海における既知の種の分布を統一することに最も力を入れ、特に種が豊富な場所や少ない場所を明らかにすることができた。
例えば、海域のサンゴ礁や陸域の山地の森林は特に多様性が高く、環境変数で予測されるより多くの種が含まれている。
この研究はまた、将来、生命が繁栄するか衰退するかを左右する環境要因を特定するのにも役立つ。
「この研究は、気候変動のメカニズムが動物に最も影響を与える可能性のある場所を表し、我々が予測するよりも多様な、または貧弱な生物多様性をもたらす環境条件を特定するのに役立ちます」と、NOAA(米国海洋大気庁)のSouthwest Fisheries Science Center(南西水産科学研究所)の生態学研究者であり、共著者でもあるElliott Hazen博士は述べた。
「我々は、環境条件の変化によって生態系内を移動する種を保存するために、また、それらの種を保護するためのより動的なアプローチをとれるようにするために、生物多様性の変化を促す要因を理解しなければならないのです」。
現在、地球の変化が加速している中で重要な生息地や種を保護する資源管理に携わる人々は、将来につながる保護活動の道しるべとするために、本研究で明らかになった環境要因とそのランク付けを利用することができる。
「国立公園と海洋保護区は、安定した環境の中で生態群衆を保護するために作り出されましたが、もし保護種がこれらの境界を越えて移動してしまった場合、私たちはどうしたらよいのでしょうか?」と、Van Houtan博士は疑問を投げかける。
「私たちの研究により、そのような多様な生命が地球上で繁栄することを可能にする環境要因を特定したのです。そしてまた我々の研究により、かつては安定していた状況が予測しにくくなった場合に、地球全体の生物多様性を保護するための動的でデータに基づく対策をとることが可能になりました」。
ニュースソース:
https://phys.org/news/2020-02-global-biodiversity-life-ocean.html
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