絶滅危惧リストに掲載するよう新たに100種類以上のユーカリの木本種を提言
和訳協力:片山 亜衣子、校正協力: 榛木 久実
2020年2月20日 PHYS ORG news
Threatened Species Recovery Hub注1)は、オーストラリアのすべてのユーカリの木本種の保全状況の評価を行い、190種以上が絶滅危惧リストに掲載されるものとして国際的に認識されている基準に合致していると判定したが、そのほとんどは現在までのところ絶滅危惧リストに掲載されていない。
クイーンズランド大学のRod Fensham准教授は、研究チームはオーストラリアの822種すべてのユーカリを、International Union for the Conservation of Nature(国際自然保護連合)のRed List of Threatened SpeciesTM(絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト)の基準に照らして評価したという。
その結果が、今般科学雑誌「Biological Conservation」で発表された。
「私たちの評価によって、オーストラリアのユーカリのほぼ1/4分(23%)に相当する193種のユーカリが、絶滅危惧Ⅱ類や絶滅危惧IB類、絶滅危惧種IA類の基準に合致することが分かったのです」と、Fensham准教授は述べた。
「ユーカリは間違いなくオーストラリアで最も重要な植物群であり、他の多くの種の動植物の生存に不可欠な生育・生息環境を供給しているため、これはとても懸念すべき事象です」。
「私たちが特定した種のうち、現在オーストラリアの環境法の下で絶滅危惧リストに掲載されて1/3弱(62種)で、また州法や準州法の下で絶滅危惧リストに掲載されているのは半分弱(87種)です」。
「この評価は、オーストラリアの環境の保全管理を行う人々がこれらの種が危険な状態にあることをより深く理解するのに役立つものであり、そのことが保全活動をあるべき方向に導くために重要です」。
「私たちの調査チームは、現在、この評価を法定の絶滅危惧種リスト掲載プロセスにどうやって反映させることが可能かを検討するために、連邦政府、州政府、および地方政府とともに働いています」。
この評価は、Botanic Gardens Conservation International(植物園自然保護国際機構)によって主導されたGlobal Tree Assessment(世界樹木評価)の一部であり、オーストラリアではBotanic Gardens Australia and New Zealand(オーストラリア・ニュージーランド植物園連合)によるサポートの下で実施された。
世界樹木評価は、2020年までに地球上の既知のすべての木本種の保全状況を評価することを目指している。
Fensham准教授は、ユーカリが絶滅危惧種となった最大の共通原因は、ヨーロッパによる植民地化以来の農業用地の開墾や牧畜であると述べている。
「例えば、ユーカリの1種であるgrey boxは、グレートディヴァイディング山脈の内陸側斜面に見られましたが、その生育地のほとんどはなくなってしまっています。grey boxは、今では主に保護区の路上に牧場の境界木のよう、わずかに再生しているのみです。grey boxは、絶滅危惧種の評価基準では絶滅危惧IB類となりました」。
「ユーカリの絶滅危惧種のオーストラリアにおけるホットスポットは、西オーストラリア州です。絶滅の恐れがあると評価されたユーカリの約半数が西オーストラリア州に存在しており、それは主に南西部の小麦栽培地区の周辺です」。
「ビクトリア州のウィンメラ地区やその近くの南オーストラリア州もまた、絶滅の恐れがあると評価された種が数多く生育しています」
「熱帯性ユーカリはほとんどが絶滅危惧種とは評価されず、ノーザンテリトリーでは絶滅危惧種のユーカリはまったく生育していませんでした」。
「私たちは、主として採鉱や都市化を原因として、またはそれらを主な要因として、将来個体数が減少するリスクが高いものとして22種を特定しました」。
「例えば、Johnson's mallee(学名:Eucalyptus johnsoniana)はおよそ600本しか残っておらず、その約600本は選鉱の対象となっている西オーストラリア州の一地域に見られます」。
「木材として利用するための伐採によって絶滅の恐れに瀕しているユーカリはないのです」。
「この評価で特定された数種のユーカリの生育地が今夏の火災によって大きな影響を受けているとはいえ、頻発する火災がユーカリの種の保存を脅かすことは稀でした」。
「多くのユーカリは、火災の影響を受けた景観の中でも存続するために、自らその特性を進化させてきたのです。いくつかの種は、lignotubers(リグノチューバ注2))や外皮芽から再び芽吹いています」。
「他のユーカリは火災に頼って芽吹くため、昨今の山火事は、それらの種子が発芽するための稀有な機会を提供したのかもしれません」。
注1:Threatened Species Recovery Hubは、オーストラリア政府の国家事業National Environmental Science Programを進める6つの研究グループのうちの一つで、絶滅危惧種の回復に関わるグループのこと。
注2:リグノチューバとは、栄養をため込み、火災後に芽吹く肥大化した根のことをいう。
ニュースソース:
https://phys.org/news/2020-02-eucalypt-tree-species-newly-threatened.html
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