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2020年11月17日 (火)

4億5000万年生き抜いてきたカブトガニが中国で絶滅のおそれ

和訳協力:岩城 小百合、校正協力:榛木 久実

2019年9月30日 Chinadialogue Ocean News

製薬業界でカブトガニの青い血液への需要が高まり、数が激減

中国のカブトガニの数が過去30年間で急激に減少している。
銅を含むカブトガニの血液への需要が高まったことが、その主な原因である。
カブトガニの血液は、これまで開発された中で最も敏感な細菌汚染の検出薬として用いられている。

カブトガニは、恐竜よりも前の4億5000万年前から生き抜いてきた生物である。
今年の3月、International Union for Conservation of Nature(IUCN:国際自然保護連合)が、カブトガニ(Chinese horseshoe crab、tri-spine horseshoeとして知られる)を絶滅危惧種としてレッドリストに加えた。
しかし、中国ではその危機的な状況を気にかける人が少なく、専門家たちはカブトガニを守るためのより強固な保護策を講じるよう警鐘を鳴らしている。

貴重な青い血液

カブトガニは東南アジア全域で見られるが、その数の95%が中国の水域に生息し、特に広西チワン族自治区南部の海岸沿いに集中している。
現生するカブトガニ類4種のうち、マルオカブトガニとミナミカブトガニの2種もアジアに生息しており、中国でも観察される。
4種目のアメリカカブトガニは、メキシコ湾や北米の大西洋岸に生息する。
いずれも似た外見をしており、体の大部分を覆う固い甲羅と、長い剣のような尾を持つ。
名前はカニだが、分類上はカニよりもクモやサソリに近い種である。

1950年代、米国の科学者たちはカブトガニの血液が細菌のエンドトキシン注1)に接触すると凝固することを発見した。
これが、LALの開発につながった。
LALはカブトガニの血液から抽出した物質であり、手術用機器から予防接種まで、人体に入る可能性がある様々な製品の製造中に細菌汚染を検出する、エンドトキシン試験に用いられる。

LALへの需要の高まりと、より優れた代替法がないことから、LALは世界で最も高価な液体の1つとなり、その価格は1ガロン(4.55ℓ)あたり6万USドル(約670万円、2020年2月19日付換算レート:1USドル=111円)とも言われる。

中国での需要の高まり

中国では、改革開放政策がとられていた1980年代、生物医学産業の発展に伴い在来種を利用した独自のLALの開発が行われるようになった。
4種の中で最も大きいカブトガニは、アメリカカブトガニよりも取り扱いやすく、多くの血液を採取することができる。

生物医学産業での需要の高まりに伴い、カブトガニの個体数が減少した。
2015年の報告によると、1990年代以前には、広西チワン族自治区の海岸に60~70万組のつがいがいたとされている。
それが2010年までに、わずか30万組に減少した。

Guangxi Ocean Institute(広西海洋研究所)のChen Ruifang氏は、現在の個体数は更に大幅に減少している可能性が高いと述べる。
調査に基づき、この研究所では、現在広西チワン族自治区のカブトガニのつがいの数が4万組に留まると推定している。

中国では現在、国家レベルでのカブトガニの保護策は講じられていないが、地方レベルでの保護策はいくつか実施されている。
広西チワン族自治区では、1991年にカブトガニ類の捕獲、繁殖、販売または利用に免許を要する制度を導入した。

広西チワン族自治区水産当局のHuang Nie氏は、この制度により自治区内での野生のカブトガニの捕獲数が年間20,000組に制限されるという。
また、血液の採取についても規制されており、採血には直径0.7㎜未満の細い針のみを使用し、採血量は全身の血液量の20%未満に止めなければならない、とされる。
一度採血したカブトガニは、回復するまで飼育してから海に戻される。

これらの措置は中国の他のどの地域よりも厳しいものである。
「企業がこの規制に忠実に従えば、カブトガニの個体群への影響は少ないはずです」と、Huang氏は主張する。
しかし、その施行には問題がある。

South China Sea Fisheries Research Institute(南海水産研究所)のJie Xiaoyong氏によると、生物医学業者の中には、免許を持たない漁師からカブトガニを購入し、利益を最大化するために血液は絞り出して乾燥させ、肉はレストランへ、甲羅は工場や農場へ販売する企業があるという。
「行政がカブトガニの使用を厳しく制限していますが、それでもグレーゾーンは存在するのです」とJie氏は指摘する。

中国の生物医学産業がカブトガニの個体群に特定の影響を与えていることを示すデータはまだないが、過去30年間でこの種の分布域が有意に縮小していることにJie氏は注目している。
かつて、カブトガニは揚子江の河口から広西チワン族自治区の海岸までの範囲で頻繁に観察された。
しかし、すでに10年以上にわたり浙江省の海岸では全く確認されなくなり、現在では、福建省、広東省および広西チワン族自治区で時折目撃されるだけである。

「広西チワン族自治区の海岸に生息する個体群が肉の需要を満たせなくなれば、ベトナムやその他の東南アジアの国々から仕入れるようになるかもしれません」とJie氏は警告する。

生きた化石が食卓に

カブトガニが減少している原因は、その血液への需要の高まりだけではない。
カブトガニは中国において目新しい料理を好む人々の間でも人気がある食材だ。
しかし、2013年に行われた消費抑制キャンペーンは一定の効果を示した。

Guangxi Biodiversity Research and Conservation Associationの科学部長であるLin Wuying氏は、人気が出たのは、カブトガニの希少性が増した結果の一部とみている。
しかし、その肉の特性も誇張されており、多くの消費者がカブトガニの肉が発熱を抑えたり、母乳分泌を促すことができると信じている。

「カブトガニに特定の栄養価があるという科学的証拠はありません」と、Chen Ruifang氏は述べる。
それどころか、絶対に食べてはならない種さえいる。
マルオカブトガニは、主に熱帯海域に生息するが中国でも見られる種で、強力な神経毒であるテトロドトキシンを持つ。
その肉や卵を食べたことに関連した食中毒が複数例報告されており、死亡例もある。

食材としての流行はあるものの、ほとんどの専門家は、カブトガニ乱獲の背景として最大の推進力となっているのは生物医学産業であるとみている。

カブトガニを保護する方法

カブトガニは一年のほとんどの時期を水深の深いところで過ごし、産卵のためだけに海岸近くに来る。
広西チワン族自治区では、6月が繁殖期である。
以前はおびただしい数の成熟したカブトガニが広西チワン族自治区の砂浜に集まり産卵する姿が見られたが、もうその光景はない。

広西海洋研究所は、カブトガニを復活させるためにできることを実施している。
行政の支援を受け、研究所は野生の個体群を増やすための飼育下繁殖プログラムを策定した。
2013年以降、毎年数万匹もの幼生を海に放流している。

ただ、このプログラムが何らかの効果をあげているかは未だ明らかにされていない。
Chen Ruifang氏によると、放流された幼生は追跡されておらず、どのくらい生き残るのか、またそれが個体群維持のために充分な数であるかも判断できない。

Chen氏はまた、カブトガニは成長が遅いため、繁殖できる年齢に達する個体が限られると指摘する(カブトガニが産卵できるようになるまでには約20年かかる)。
広西チワン族自治区の海岸は幼生が容易に生育できる環境ではない。
Guangxi Biodiversity Research and Conservation Associationの研究により、様々な脅威が指摘されている。
大規模なインフラ開発プロジェクトや都市の発展、観光産業の高まりや海運業の発展により、カブトガニとマルオカブトガニの生息地の大部分が破壊された。
水質汚染の影響もある。

今後の対策

この古来から生き抜いてきた生物を保護するためには、今以上に対策が必要なのは明らかである。
Chen氏は、研究所が繁殖プログラムの限界に取り組もうとしているという。
放流された幼生をDNAを用いて追跡する新しいプロジェクトが提案されているのだ。
また、研究所における飼育下での繁殖方法を商業的に実用可能にする取り組みも行っている。
カブトガニの養殖が実現すれば、野生の個体群への乱獲の圧力を弱めることができるだろう。

今年6月、広西チワン族自治区の北海で行われたFourth International Workshop on the Science and Conservation of Horseshoe Crabs((仮)第4回カブトガニ類の科学と保護のための国際ワークショップ)において、専門家はより強力な法的保護策も要請した。

この要請に対し中国当局は、現在中国で観察される3種のカブトガニ類をすべてWildlife Conservation Directory(国家重点保護野生動物目録)に追加することを検討している。
この目録は1989年に施行されて以来、小さな改訂が2か所行われただけであることを考えれば、今回の検討は大きな一歩と言える。

ただ現在のところ、カブトガニは地方レベルでの規制によってのみ保護されている。
広西チワン族自治区当局は、違法に捕獲されたカブトガニのつがいを毎年数百組も押収している。
しかし、そのうち罰を受けた例はまれである。

Huang Nie氏は、カブトガニが最近IUCNのレッドリストに追加されたことが保護措置の変化につながることを期待している。
法的な保護措置を強化する1つの方法として、Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称ワシントン条約)の下でカブトガニを附属書リストに加えることをHuang氏は提案する。
附属書リストに加えられれば、カブトガニ自体と、その血液から作られる製品の両者に対して国境を越える取引を禁止または制御できるようになるであろう。
しかし、CITESの下でカブトガニを保護する努力ができるようになるまでには、次の締約国会議で附属書に新しい項目を追加する議論が行われるまで、つまり少なくとも3年は待たなければならない。

注1:エンドトキシンとは、微生物の中に閉じ込められている毒素で、微生物が死んだときまたは分解されたときにのみ放出される毒素のことをいう。

ニュースソース:
https://chinadialogueocean.net/10410-chinese-horseshoe-crab-endangered/#.XZQwY0zZN70.twitter

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