保護区域周辺の人間と野生動物の対立を緩和するための地域密着型の戦略の実験的調査
和訳協力:福谷 早希子、校正協力:山田 寛
2019年10月16日 Conservation Letters掲載論文要約部分抜粋
要約
自然の生息環境は急速に耕作地に転換されており、野生動物による耕作被害は世界中で野生動物保全と人々の暮らしの両方を脅かしている。
耕作被害を減少させる地域主体型戦略を評価するために、モザンビークのゴロンゴーザ国立公園の外部において、BACIデザイン(注に基づき、GPS首輪を装着したゾウからの移動データと、カメラトラップデータおよびローカルレポートシステムを組み合わせた。
調査した全種類の実験用の柵(ミツバチの巣箱、トウガラシ、ミツバチの巣箱およびトウガラシの組み合わせを行ったもの、ならびに手順制御したもの)は、ゾウが公園から出て耕作地を荒らす回数を有意に減少させた。
なお、主要な交差点の一部にミツバチの巣箱をかけた柵を配置すると、柵のない交差点に比べゾウが公園を離れる確率が最大95%まで低下し、これが最も効果的な戦略であった。
ミツバチの巣箱をかけた柵は、蜂蜜の生産による所得創出の機会も作り出した。
本調査の結果は、動物の行動と人間の意識の両方を変えるために地域社会と協力することで、人間と野生動物が接する場所での対立を緩和できるという実験的証拠を提供している。
注:BACIデザインとは、ある実験の実施前(Before)と実施後(After)という時間評価軸と、実験の実施区(Impact)と対照区とも呼ばれる未実施区(Control)という空間評価軸によって、その影響を科学的に評しようとするものである。
ニュースソース:
https://conbio.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/conl.12679
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