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2020年6月16日 (火)

エルニーニョがアマゾンに生息する昆虫の急減の一因であることが最新の調査で明らかに

和訳協力:木村 敦子、校正協力:鈴木 洋子

2020年2月10日 PHY ORG News

暑さと乾燥を激化させるエルニーニョ現象はアマゾンの熱帯雨林の生物多様性に憂慮すべき影響を与え続けており、さらに不安を与えるような全世界の昆虫の急減に拍車をかけていることが科学者たちにより明らかにされている。

地味ではあるが生態学的に重要な糞虫類に重点をおいた最新の研究から、最近のエルニーニョ気候現象の間に起こった深刻な干ばつと山火事は、人間の干渉と組み合わさって糞虫類の個体数を半数以下に減少させ、この影響が少なくとも2年間以上続いていることが初めて明らかになった。

2015-2016年に起きたエルニーニョは、2019年の森林破壊火災よりも注目を集めなかったが、非常に著しい干ばつをもたらした。
また農業や森林破壊などの人間活動と相いまって、一つの地域だけでの100万haが焼けた火災を含め、アマゾンの森林の300万ha以上を焼いた巨大規模の山火事の一因となった。

アマゾン川流域の熱帯樹林での山火事と干ばつの影響は数十年間にわたって調査されてきたが、研究者達は、干ばつと山火事が動物相に及ぼす影響および生態系の機能におけるそれらの役割についてはあまり理解していなかった。

糞虫類は栄養分と種子を分散させる重要な役割を果たしており、また生態系の全体の健全性を評価するために用いられている重要な指標昆虫である。

英国、ブラジル、ニュージーランドの国際科学者チームが、2010年から2017年の間に行った数回の調査を通してアマゾン流域のブラジルのパラ―州において、30の森林区画で見つけた98種の糞虫類は14,000匹以上であった。
また科学者たちは糞虫類がどれほどの糞を除去し、また種子を分散したかも調査した。

研究者たちが2010年にそれらの区画地全体で見つけた糞虫類の総数は約8,000匹であった。
しかし2016年エルニーニョ後、その数は約3,700匹に急減し、2017年に研究者たちが見つけたのはわずか2,600匹であった。

森林破壊や略奪的な木材伐採のような活動による人間の攪乱によって森林の可燃性は著しく増大する。
森林火災はアマゾンでは自然に発生するものではないのだ。

干ばつのみを経験した地域より火災にあった森林の方が糞虫類の個体数が少なかったことが示されているが、調査した森林すべてにおいて糞虫類の数の減少が見られた。

「私たちの調査は、人間活動と気候の極端な状態がどのように同時に作用し、そしてそれらがどのように熱帯雨林の生物多様性と生態系機能に影響を与えるかついての重要な知見を提供しています」と、ランカスター大学のランカスター環境センター主任研究員で、ブラジルのEmbrapa Amazonia Orientalの準研究員でもあるFilipe Franca博士は述べた。

「働き者のこれらの甲虫類の減少は、森林に生息する多くの哺乳類もまた、干ばつと火災で死んできたかもしれないというさらに広範囲わたる問題を示唆している可能性があります。糞虫類は巣材と餌として哺乳類の糞に依存しています。したがって糞虫類の減少はおそらくエルニーニョの干ばつと火災による哺乳類の減少に関連していると思われます」とも述べた。

以前の調査では、哺乳類の存在が糞虫類に大きな影響を与えることが明らかになっている。

糞虫類の喪失は、ほかの動物が喪失したことを示している可能性もあるが、それはまた森林再生が極度の干ばつと火災が起きた後に悪影響を受けるであろうという懸念も高めるものである。

「私たちは、エルニーニョ現象が起きた後に糞虫類がかなり少なくなっていること、また生き残った糞虫類は干ばつのみに、もしくは干ばつと火災両方を経験し影響を受けた森林地帯で、栄養分と種子の分散が困難になっていることを発見しました」とブラジルの西パラー連邦大学のRodrigo Fadini教授は述べた。

まとめると、調査結果からは、人間活動がさまざまな方法によって極端な気候現象と互いに影響し合う可能性があり、またこれらの攪乱は互いの結びつきの有無にかかわらず、昆虫を含む熱帯林の動物相の繊細なバランスと、生態系プロセスに彼らが果たす重要な役割に対して脅威を与える可能性があることが示されているのだ。

ブラジルのラブラス連邦大学およびランカスター大学に所属するJos Barlow教授は次のように述べた。
「地球の周りを覆う熱帯林は、人間が引き起こした気候変動や地域の人間のよる攪乱、さらには頻繁に起こる非常に厳しい極端な気候現象によってますます脅かされています。もし森林の生物多様性とそれがもたらす未来の世代の人々への貢献を維持したいと思うなら、進行中の気候と生物多様性の危機を軽減するための行動が必要なのです」。

ニュースソース:
https://phys.org/news/2020-02-el-nino-contributes-insect-collapse.html

 

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