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2020年3月17日 (火)

50年以上にわたりタグ装着・再捕獲したサメから得られた最新のサメアトラス

和訳協力:鈴木 康子、校正協力:伊川 次郎

2020年2月3日 PHYS ORG News

52年間にわたり大西洋に生息する35種のサメの分布と移動を記録したデータベースによって、ほとんど知られていない種の新たな情報が明らかとなった。
さらに、サメがどの海域を移動し、どの程度の年数を生きているかも含めた驚くべき発見も得られた。

科学者らは、1962年から2013年の間、サメにタグを装着あるいは再捕獲、またはその両方を行って、データを収集した。
サメは大西洋と、メキシコ湾、カリブ海、地中海を含むその関連海域で発見された。
この期間中にタグが付けられたサメは合計35種229,810個体におよび、再捕獲されたのは31種13,419個体であった。
この結果得られたデータは、2019年12月に発行された科学雑誌『Marine Fisheries Review』に発表された。

この新しい追跡データにより1962年から1993年に収集されていたデータが更新され、さらに22種の情報が追加された。
オオメジロザメやイタチザメおよびイヌホシザメを含めた14種のサメについては、詳細データが提供されている。
データの更新により、サメの分布域や行動に関する既存の情報が大幅に拡充されることとなった。

長期共同研究プログラム

Cooperative Shark Tagging Programは、世界でも最も大規模かつ長期におよぶ調査研究である。
このプログラムは、趣味の釣り人、漁業関係者、生物学者、米国海洋大気庁(NOAA)海洋漁業局の協力のもと実施されている。
その目的は、大西洋に生息するサメの生活史の解明である。

このプログラムは1962年に、Northeast Fisheries Science Center(北東水産科学センター)に所属する生物学者であり、サメ研究者でもあるJohn "Jack" Casey氏によって開始され、1963年には初期ボランティアメンバーとして74名の趣味の釣り人が参画した。
以降プログラムは拡大していき、現在はメキシコ湾も含めた北アメリカおよびヨーロッパの大西洋岸の全域から数千名が参加するほどの規模となっている。

ロードアイランド州にある北東水産科学センターのナラガンセット研究所で実施されている、Apex Predators Program(頂点捕食者プログラム)のサメの研究者であるLisa Natanson氏は次のように述べた。
「このプログラムによって得られた長期的なデータは、サメの行動を解明するためには種ごとに多数のサメにタグを取り付け、情報を記録し、データベース化することが重要であることを示しています」。
一例としては、タグ追跡プログラムが34年続いて初めて、イタチザメが大西洋を横断しているという事実が判明したことが挙げられる。

国際的な取り組み

32カ国の趣味の釣り人がサメにタグを装着し、59カ国の協力者がタグ回収にかかわった。この調査では主に2種類のタグが使われており、ひとつは1965年から使用しているダートタグまたはMタグと呼ばれるもの、もうひとつは主に生物学者に利用されているフィンタグまたはロトタグ(Rototag)と呼ばれるものである。

タグ装着の大半は、多くが釣り竿とリールを使用する趣味の釣り人によるものであり、次にはえ縄と網漁具を使用する生物学者が続いた。
タグ回収では、はえ縄と網漁具を利用する商業漁業者が大多数を回収し、僅差で釣り竿とリールを使用する趣味の釣り人が続いた。

タグを装着したサメの種類としては、118,000個体近かったヨシキリザメが全体の51%と最も多く、次点は数が開けられたものの36,000個体弱のメジロザメだった。
8,200個体強のヨシキリザメと1,471個体のメジロザメが再捕獲された。
20個体のミズワニにもタグが装着されたが、再捕獲はできなかった。
ほとんどの種で、それぞれ100以上の個体にタグが装着された。

最も長い距離を移動していたのはヨシキリザメで、その移動距離は3,997海里(約7,400km)に及んだ。
その個体はアメリカ、ニューヨーク州のロングアイランド沖でタグ付けされ、8年以上を経て、アフリカ沖の南大西洋で再捕獲された。
一方、再捕獲までに要した時間が最も長かったのはメジロザメで、27.8年を要していた。

何千人ものボランティア市民科学者が参加

サメアトラスの立案者であるNancy Kohler氏とPatricia Turner氏は、北東水産科学センターのナラガンセット研究所の頂点捕食者プログラムに従事していたが、現在は両名ともNOAA海洋漁業局から退局している。
彼女らは、このプログラムのデータは多くの市民科学者によって収集されたものであり、一個人、単一機関あるいは組織だけでは成し遂げられなかったと言及した。

立案者らによれば、「知識豊富な何千人もの趣味の釣り人や漁師がボランティアで調査に貢献してくれたので、費用はタグのコスト程度しかかからず、このプログラムでは非常に費用対効果を高くすることができました」という。
さらに、「Cooperative Shark Tagging Programは、サメの種の分布と移動パターンを理解するための膨大な科学的データを生み出しているのです」と続けた。

多くのサメの種の地理的分布と行動-特に広域かつ長い時間スケールにおけるもの-には未知の部分が多く残されているが、このプログラムで得られたデータがそれらの穴を埋めつつある。
このような情報は、適切な管理戦略を策定し、保全対策の有用性を判定するために不可欠である。

「持続可能な管理とは、利用可能な最高の科学を必要とする動的プロセスなのです」と述べているのは、NOAA海洋漁業局のOffice of Sustainable Fisheriesに属する漁業管理の専門家であるKaryl Brewster-Geisz氏で、次のように続けた。
「Cooperative Shark Tagging Programで得られたデータは、サメのデータセットとしては最も古くからあるものの一つであり、乱獲を防ぎつつレクリエーションとしての釣りや商業漁業を続けられるようにするための管理手法を構築する上で重要な役割を担っています」。

立案者らは、「サメ類は成長が遅く、寿命が長く、移動性が高い上に、タグ付けされたサメの採捕獲率が比較的低いという事実を踏まえれば、このサメの生活史と個体群動態に関する必要な情報を入手するためには、タグ付けの取り組みを継続することが不可欠なのです」と述べている。

ニュースソース:
https://phys.org/news/2020-02-shark-tagging-atlas-years-recapture.html

 

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