絶滅の危機に瀕するカエルのための保護区
和訳協力:湊 紗矢可、校正協力:蛯名 郁矢
2018年12月4日 PHYS ORG news
ガーナにおいて、コミュニティベースの保護区という新たな形での大きな後押しを受け、世界で最も絶滅の危機にさらされており、また進化の観点において特徴的な両生類の存続に見通しがついた。
2018年9月に政府官報に記載された、この極めて重要な保護区の創設に対する科学的正当性は、主にガーナの生物学者チームの調査結果に基づくものである。
想起的な種名であるTogo Slippery Frog(学名:Conraua deroo、ゴライアスガエル科ゴライアスガエル属の1種)についてのこのチームの研究は、Conservation Leadership Programme(CLP:自然保護リーダーシップ・プログラム)によって支援されたものだ。
保護区創設のために土地を寄付した2つのコミュニティに敬意を表して名付けられた、350haのOnepone(「oh-nay-poh-nay」と発音) Endangered Species Refuge(絶滅危惧種保護区)は、ダホメ・ギャップと呼ばれる地域に、最後に残された森林地帯の1つを保護することになる。
ダホメ・ギャップは、森林を上部ギニア森林と下部ギニア森林とに分離する、回廊状のサバンナのことである。
この2つの広大な西アフリカの熱帯雨林地帯は、アフリカ大陸に生息している哺乳類の1/4分以上とその他の無数の動植物が生育・生息する、世界で最も貴重な、そして最も危険にさらされている、生物多様性が高い地域の1つだ。
この帯状のサバンナに点在している残された森林地帯には、絶滅の危機に瀕しているTogo slippery frogを含む、地球上で他のどこにも見られない種が生息している。
よりよく知られており、世界最大のカエルとされるgoliath frog(ゴライアスガエル)の近縁種であるTogo slippery frogは、現在、ガーナとトーゴの国境にまたがる森林に覆われた丘である、トーゴ・ボルタ高地にのみ生息すると考えられる。
2013年にまさにこの地で、Caleb Ofori-Boateng博士と、CLPが資金提供した博士のプロジェクトチームが、おざなりにされていた非常に珍しい両生類を絶滅の危機から救うために、多面的な保全の取り組みに着手した。
この時、Caleb博士と彼の仲間の両生類愛好家たちは、Herp-Ghana(ガーナの両生爬虫類)の旗印の下で活動していた。
この組織は、2006年にクワメエンクルマ科学技術大学の小さな保護団体として活動を開始したが、その後、西アフリカ全体で両生類と爬虫類の保護を主導するガーナの主要なNGOへと変容した。
2010年のFuture Conservationist Awardにより資金提供を受けた、当研究チームの初期のCLPプロジェクトは、ガーナのアテワ山地にある、当時Togo slippery frogの唯一の存続可能だとされる個体群に焦点を当てていた。
この個体群はボーキサイト採掘により生息地の破壊の脅威にさらされていたが、近年の研究により、ほぼ確実に完全に異なる種であることが明らかになった。
3年後、CLPのFollow-up Awardの助力により、Caleb博士と共同研究者たちは、トーゴ・ボルタ高地に注意を向けた。
そこでは、人間の居住地の急速な拡大、広範囲にわたる伐採、焼き畑農業、野生動物の肉の活発な取引が相まって、Togo slippery frogの生息数が坂をすべり落ちるかのように減少していた。
CLPの支援を得て、この受賞チームは、種の状況の包括的な評価、対象としていた生息地の復元、現地の保全活動家の育成、生計を立てる手段の代替案の提供、および以前はタンパク源として認識されていた両生類に対する現地住民の意識を変えることを目的とした意識向上キャンペーンを含む、一連の保全対策を考案し、実施した。
何よりも、Caleb博士と共同研究者たちは、様々な利害関係者、特に地域コミュニティとの連携により、新しい保護区の創設に対する広範な支援を構築する上で、極めて重要な役割を果たした。
Togo slippery frogは新たに指定された保護区による保護の強化の恩恵を受ける、数多くの絶滅危惧種の1つにすぎない。
減少する森林生息地に共存する種としては、非常に絶滅の危険性が高いHooded vulture(ズキンハゲワシ)、絶滅危惧種のUkami reed frog(クサガエル科クサガエル属の1種)、漢方薬としての鱗の需要急増の犠牲となっている絶滅危惧種であるblack-bellied and white-bellied pangolins(オナガセンザンコウおよびキノボリセンザンコウ)、そして蝶の固有種が無数に含まれている。
「この新しい保護区のおかげで、slippery frog(ゴライアスガエル属のカエル類)と共に非常に多くの種が保護されるだろうことは、喜ばしいことです」とCaleb博士は述べた。
「この新しい保護区の設立は、CLPの支援を受けて数年前に始まった対話キャンペーンがようやく成果を上げている証拠です」。
2010年より、このチームの進展に大きな関心を持って見守ってきたCLPの執行役員であるStuart Paterson氏は、このニュースに喜びを表明した。
「8年の歳月をかけたこのチームの尽力により、Togo slippery frogの保護のために地域コミュニティより寄付された土地が拡大し、公認のものとなったことは大変すばらしいことです。弛まぬ努力と、何よりもまず地元の人々を含む様々な利害関係者からの支援を得ることにより、チームはこの絶滅寸前の状況にあるカエルの生存の可能性の拡大に多大な貢献をしました」。
ニュースソース:
https://phys.org/news/2018-12-sanctuary-frog-slippery-slope-extinction.html
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