国際連合の報告:機会を逃さず、e-wasteの課題に取り組む時
和訳協力:鳥居 佳子、校正協力:花嶋 みのり
2019年1月24日 UN environment Press Release
・世界で年間5千万tもの電気電子機器廃棄物(e-waste)が生み出されており、この量はこれまでに製造された民間航空機の全重量を超える。正規にリサイクルされているのは、このうちわずか20%である。
・1年で生み出されるe-wasteには、多くの国のGDPを超える625億USドル(約6.8兆円、2019年10月20日付換算レート:1USドル=108.4円)以上の価値がある。e-waste1t中の金含有量は、金鉱石1tに含まれる金の100倍である。
・国連の諸機関は世界経済フォーラム、地球環境ファシリティ、World Business Council for Sustainable Development(BCSD:持続可能な開発のための世界経済人会議)と協力し、現行の電子機器システムの見直しを要求した。
・ナイジェリア政府、地球環境ファシリティ、国連環境計画は、ナイジェリアでe-wasteの循環システムを立ち上げるため、1500万USドル(約16.2億円)のイニシアチブを発表した。
Platform for Accelerating the Circular Economy(PACE:循環経済加速化プラットフォーム)とUN E-Waste Coalition((仮)国連e-waste連合)が本日ダボスで発表した報告によると、世界で生み出されるe-wasteの量は、もし現在の傾向が継続されれば、2050年までに年間1億2千万tに到達する勢いである。
また、世界のe-wasteの年間評価額は625億USドル(約6.8兆円)を超え、多くの国のGDPを上回っていることが報告されている。
2017年には世界で4400万t以上、すなわち地球上の人口1人あたり6kg以上の電子電気機器廃棄物が生み出された。
この量は、これまでに製造された民間航空機の全重量に匹敵する。
e-wasteのうち正規にリサイクルされているのは20%未満で、80%は最終的に埋め立てられるか非正規にリサイクルされている。
こうした非正規のリサイクルの大半は発展途上国で手作業で行われており、労働者は水銀、鉛、カドミウムなどの有毒物質や発がん性物質にさらされている。
埋め立て地のe-wasteは土壌や地下水を汚染し、食糧供給システムや水源を危険にさらす。
この報告によると、健康や汚染への影響に加え、e-wasteの不適切な管理によって、金、白金、コバルト、レアアース元素などの希少で価値の高い原材料が著しく失われている。
現在、世界の金の7%がe-wasteに含まれている可能性があり、1tのe-wasteの金含有量は金鉱石1t中の同含有量の100倍である。
報告書において、PACEと、国連環境計画、地球環境ファシリティ、世界経済フォーラム、持続可能な開発のための世界経済人会議を含むUN E-Waste Coalitionのメンバーは、現行の電子機器システムの見直しを要求し、資源の搾取、使用、廃棄が行われることなく、環境への影響を最小限に抑えながら一定の水準で持続可能な労働を創出する方法によって、資源の評価と再利用が行われる循環型経済の必要性を強調している。
製品の再利用やリサイクルの機会を最大化するための解決策として、耐久性の高い製品設計、使用済み電子機器の買取および返却システム、e-wasteから金属や鉱物を抽出する「都市鉱山」、機器の所有権をレンタルおよびリース・モデルで代替することによる電子機器の「非物質化」などが挙げられる。
e-wasteの課題に対処し、循環型経済の機会を逃さないようにするため、ナイジェリア政府、地球環境ファシリティ、国連環境計画は本日、ナイジェリアで正規のe-wasteリサイクル産業を立ち上げるための200万USドル(約2.1億円)の投資を発表した。
この新規投資では、民間部門から1300万USドル(約14億円)を超える追加の協同融資が期待されている。
国際労働機関によれば、ナイジェリアの非公式なe-waste業界では最大10万人が働いている。
今回の投資によって、ナイジェリアで処理される年間50万tのe-wasteの潜在的価値を確保するとともに、こうした労働者を正規に採用し、安全で一定の水準の雇用を提供するシステムを創出することができる。
国連環境計画のJoyce Msuya事務局長代理は「循環型経済は環境面、経済面で非常に大きな利益を私たちすべてにもたらします」と述べた。
さらに、「国連環境計画は、ナイジェリア政府、地球環境ファシリティとの革新的なパートナーシップと、電子機器の循環システムを立ち上げるためのナイジェリアの取り組みを支援できることを誇りに思います。私たちの惑星の存続は、製品寿命を延長することにより、このシステムの内部で製品の価値をいかに適切に維持していくかにかかっています」と続けた。
★ニュース翻訳を続けるためにご協力ください!
→JWCSのFacebookでページのイイネ!をして情報をGET
→JWCSの活動にクレジットカードで寄付
※日本ブログ村の環境ブログに登録しています。クリックしてランキングにご協力ください。
にほんブログ村
« アフリカゾウの密猟の脅威が続いていることが新しい報告書で浮き彫りに | トップページ | 絶滅の危機に瀕するカエルのための保護区 »
「40 保全対策」カテゴリの記事
- スリランカがゾウ保護のためプラスチック製品の輸入を禁止へ(2022.01.25)
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の先にある未来には地球の健康の再生が必要(2021.12.28)
- 陸棲脊椎動物の絶滅が加速していることが調査により判明(2021.12.14)
- クロマグロ産卵場における致命的な漁具に対するトランプ政権による許可の差し止めを求め複数の団体が提訴(2021.11.02)
- ディスコライトでパニック:ボツワナのチョベ地区におけるアフリカゾウの侵入を防ぐ太陽光発電ストロボライト(2021.10.19)
「43 その他」カテゴリの記事
- Covid-19によりコウモリと疾病論争が再燃(2022.03.22)
- 空輸による動物密輸と人獣共通感染症拡散の防止(2022.01.11)
- 自然との結びつきを強めるには、子供たちが1人で行う野外活動が必要(2022.01.04)
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の先にある未来には地球の健康の再生が必要(2021.12.28)
- 食料安全保障と大災害・パンデミックからの回復力を促進(2021.12.21)
« アフリカゾウの密猟の脅威が続いていることが新しい報告書で浮き彫りに | トップページ | 絶滅の危機に瀕するカエルのための保護区 »
コメント