ソーシャルマーケティングキャンペーンが絶滅危惧種の回復を支援する
和訳協力:熊倉 健司、校正協力:木田 直子
2018年12月4日 PHYS ORG news
ソーシャルマーケティングキャンペーンを通じて人々の行動の変化を促進することにより、絶滅危惧種の個体数の回復を後押しすることができる。
新たな研究によると、ソーシャルマーケティングキャンペーンは野生生物種の個体数の回復に重要な役割を果たしており、自然保護活動家が今後より費用対効果の高いキャンペーンを計画するにあたり有益な証拠も見つかっている。
ソーシャルマーケティングは従来のマーケティングからアイデアを取り入れたものだが、商品の販売促進ではなく人々の行動の変化を促すことを目的とするものである。
ソーシャルマーケティングは、リサイクルや禁煙といった活動の促進に成功しており、特定の種の保護を目的とした保護活動家がこの手法を導入している。
しかし、種の個体数が回復するには時間がかかるため、これまでは保護活動家がキャンペーンの長期的な成果を評価するのは困難であった。
今回、インペリアルカレッジロンドンのチームは、個体数変化を引き起こす可能性のあるすべての要因を調べることにより、ソーシャルマーケティングが絶滅危惧種の回復における重要な一因であることを証明できた。
本日、Conservation Biology誌に結果を発表した研究チームは、カリブ海ボネール島原産の鳥であるキボウシインコ、別名ローラの救済のためのキャンペーンを調査した。
対象とした「Rare Pride」キャンペーンでは、ローラが脅威にさらされている状況や、ローラの所有、捕獲および取引関連の法律に対する意識を高めるために、ポスターや歌、ファクトシート、教会での説教など、複数のマーケティング手法が組み合わせで使用された。
インペリアルカレッジの生物学科に所属する共同研究者であるMorena Mills博士は次のように話す。
「20年前に保全キャンペーンが開始される前は、ボネール島では野生のキボウシインコより飼育されているキボウシインコの方が多かったのです」。
「年次個体数調査によれば、キボウシインコの個体数はそれ以降回復が見られ、1998年の294羽から2018年の1,023羽にまで増加しています。我々はこの変化をもたらしたイニシアチブが何だったのかを知りたかったのです」。
研究チームは、ローラの個体数回復の潜在的要因(密猟の減少など)や、潜在的要因がローラの個体数に影響を与え得るための必要条件(ローラを保護する既存の環境法など)を特定し、最後に、各要因についてそれらの必要条件が存在したかどうか(ローラを保護する既存の環境法が定期的に施行されているなど)を調べた。
最終段階では、ボネール島の獣医、観光業者、教育者、政府関係者、地域住民などを含む、8つの当事者グループの代表者に、チームがインタビューを行った。
その結果、ローラの個体数回復に関して主に3つの説明が考えられることがわかった。
そこには行動変容のためのソーシャルマーケティングキャンペーンも含まれている。
インペリアルカレッジで修士論文の一環としてこの論文を主導したGabby Salazar氏は次のように話した。
「我々は定性評価手法を用いて、ローラ個体数の増加は、行動変容キャンペーンと環境教育プログラム、および法執行機関による取り組みの組み合わせによって生じた可能性が高いことを発見しました」。
オックスフォード大学マーティンスクールの特別研究員で、保全マーケティング研究の国際的リーダーである共著者のDiogo Verissimo博士は、「野生生物の個体数は、回復の兆候を認めるまでに多くの場合長い年月を必要とするため、保全プログラムの影響を評価するのは困難です。本研究は、行動変容キャンペーンの長期的な影響を調べた初めての研究であり、行動変容キャンペーンが野生動物の個体数回復に重要な役割を果たし得るという証拠を示しています」と話した。
Salazar氏は次のように付け加えた。
「我々が、人間の行動に影響を与えようとするマーケティングキャンペーンを含めた、保全イニシアチブの影響を理解するためには、より時間効率が良く、費用対効果の高い方法を必要とします。この研究で我々の使用した一般的な消去法は、これらすべての基準を満たしものだったのです」。
ニュースソース
https://phys.org/news/2018-12-social-campaigns-threatened-wildlife-species.html
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