IUCNレッドリストの更新版、サメの乱獲を反映
和訳協力:手塚 珠真子、校正協力:日高 穂香
専門家グループはさらに多くの種が絶滅危惧種IB類とみなされるとして保護活動を要請
2019年3月21日 SSG Press Releases
International Union for the Conservation of Nature(IUCN:国際自然保護連合)のShark Specialist Group(SSG:サメ専門家グループ)は本日、サメとエイ58種のレッドリスト評価の更新版を発表し、このうち17種が絶滅の危機にさらされているとした。
これは一連の専門家ワークショップを基に個体数動向を評価する世界的プロジェクトの一環だ。
最初のワークショップで力を入れたのは、世界中の海で見られる海洋種、そしてオーストラリアの種だった。
「結果は憂慮すべきものですが、驚くべきものではありません。というのは、サメの中でも特に成長が遅く、需要が高く、乱獲から保護されていない種が最も脅威にさらされる傾向にあると分かっているからです」と、SSGの共同議長を務めるサイモンフレーザー大学のNicholas Dulvy教授は言う。
「中でも特に心配なのは、泳ぐスピードが速いおなじみのサメ、アオザメです。世界中の海で個体数の減少が深刻で、絶滅危惧種IB類と評価しました。大西洋では約75年間に60%減少しています」。
近縁種であるバケアオザメも絶滅危惧種IB類に更新された。
アオザメ属のサメは長い距離を移動し、繁殖できるようになるまで15年以上を要し、多くの国々で肉やヒレの需要が高い。
しかし、国際的な漁獲割当のどれを見ても保護対象となっていない。
今回、レッドリスト評価で更新されたオーストラリアのサメとエイ41種は、漁業管理がいかに重要かを反映した結果となった。
オーストラリアはサメの保護活動において世界をリードしている国なのだ。
「評価対象となったオーストラリアの種の半数以上がLeast Concern(軽度懸念)に分類されました。漁獲量の制限を設けたことが大きく貢献したのです」と、SSGのレッドリスト評価を行う専門家のコーディネーターを務めるチャールズダーウィン大学のPeter Kyne博士は言う。
「今も深刻な危機に瀕しているオーストラリアの9種のサメは、ほとんどが極めて成長が遅く、適切な漁であっても生息数に影響が出る深海ザメです。特にGreeneye Spurdog(ツノザメ属の1種)は妊娠期間が3年弱と動物界で最も長く、絶滅危惧IB種と評価されました」。
海洋性のサメおよびエイで生息個体数が比較的健全な状態(レッドリストランクが軽度懸念に分類される)と判明した種は、主にカラスエイのように食用に適さないものや、メガマウスのように漁具が届くべくもない、極めて深い海に生息するものだった。
「サメとエイの危機的状況は高まり続けていますが、世界各国が、特に漁獲制限をはじめとする保全の責任を果たすまでにはまだまだ遠く及びません」と、Ocean Foundation(オーシャン財団)のプロジェクトのひとつである、Shark Advocates International(シャーク・アドボケーツ・インターナショナル)に籍をおくSSGのSonja Fordhamは副議長は言う。
「この流れを変え、サメとエイの個体数を回復させるため、SSGは絶滅危惧IB種や絶滅危惧IA類と評価された種の水揚げの全面禁止も含め、国の、また国際的な漁獲制限を一刻も早く設けるよう要請しています。緊急の対策が必要です」。
ニュースソース:
https://www.iucnssg.org/press.html
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