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2019年10月29日 (火)

野生生物取引により絶滅の危機にある種が保護対象となるには10年の歳月が必要

和訳協力:神前 珠生、校正協力:木田 直子

2019年2月14日 Science magagine news by AAAS

わずか10年の間に、インドネシアに生息するblack-winged myna(学名:Acridotheres melanopterus、ソデグロムクドリ)の個体数は80%以上も減少している。
大きな原因は野鳥類の商業取引である。
ソデグロムクドリは、人々を魅了する黒と白の羽をまとった姿と明るく多彩な鳴き声で、蒐集家たちにとって垂涎の的となっているからだ。
今日、残存する野生の個体数は50羽にも満たない。

ソデグロムクドリが絶滅の危機に瀕しているにもかかわらず、国際的な保護政策は何ら進展を見せていない。
さらに、新たな調査によれば、このソデグロムクドリの状況は決して特異なことではないことが判明した。
野生生物取引によって脅かされていることが既にわかっている種に関して、各国で保護が合意に達するには、平均して10年の期間を要するというのである。

ワシントンD.C.のWorld Wildlife Fund(WWF:世界自然保護基金)の野生生物の保全部門を担当するGinette Hemley副会長は、調査は「野生生物取引によって脅かされている種を保護するための、早急な活動の必要性を強調するものです」、と述べている。
同氏は本調査には関与していない。
「この乖離を認識することが、今後さらに多くの保護活動が進ための重要な出発点なのです」 。

ゾウ、サイ、トラが、商業取引により危機に瀕する野生生物の筆頭に挙げられてはいるが、あまり知られていないそれら以外の何千もの野生生物種も、利益のために狩猟され、捕獲され、傷つけられている。
科学者が危機に瀕しているとみなしている種が、同時に世界の政策決定者らの関心も集めているかを調べるために、研究者らは2つのリストを比較した。
ひとつはスイスのグランに本部を置くInternational Union for Conservation of Nature(国際自然保護連合:IUCN)による、国際的な野生生物取引により影響を受ける種を科学的に集計した、958種の絶滅危惧種リストである。
もうひとつは、野生生物の取引抑止を目的とする最初の国際条約であるConvention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称「ワシントン条約」)により保護されている種のリストである。

IUCNとCITESのリストについて、「我々は近似したものとなるだろうと考えていました」と、シカゴ大学の経済学者であり、論文の共同執筆者であるEyal Frank氏は述べている。
しかし研究者らは、IUCNのリストの絶滅危惧種の4分の1以上、28%もの種がCITESの保護対象種には入っていないことを発見し、本日のサイエンス誌で発表する。
さらに研究者らは、IUCNの絶滅危惧種リストに掲載されてからCITESの保護対象種となるまでに、平均10年の期間を要することも見出した。
24年前にIUCNのリストに掲載されて以来、いまだに保護対象になっていない種もある。

本調査は、「野生生物取引の動きが極めて活発なため、…それを評価し政策的に対処するというプロセスはしばしば後れを取りことがあり…野生生物取引による生物種の絶滅は、我々がそれを認識しないうちに起こり得る」ことを示していると、ラトガース大学(ニュージャージ州ニューブランズウィック)の生態学者であるJulie Lockwood氏は述べる。
同氏も本調査には関与していない。

これらの調査結果のすべてが悪いものではない、とHemley氏は述べている。
IUCNが野生生物取引により最も絶滅が危惧されるとした生物種の95%が、CITESで保護対象種とされていることも研究者らの調査により判明した。

英国オックスフォードの、IUCNの科学者であるDan Challender氏は、CITES事務局の幹部らと、どうしたらより効率的に保全のデータを条約加盟国に提供できるかについて、建設的な協議を行ってきている、と述べている。
「我々は、この論文により判明した乖離を埋めるべくCITES事務局側と協働していますが、2つのリストは保護に関して非常に異なる手段を取るものであり、CITESのリストはまったく別の基準で作成されています」とChallender氏は言う。

CITESにより保護対象種とされるためには、条約締約国のいずれかによる保護リストへの追加の提案が必要であり、また締約国の2/3の賛成が必要とされる。
しかし、政治的、経済的観点から、掲載に反対する国々もある。
例えばタイセイヨウクロマグロ(学名:Thunnus thynnus)の商取引禁止の提案は、この大型魚類の捕獲・消費の継続を望む国々により阻止されてきた。

CITES締約国は、IUCNのリストに掲載された種を、自動的にCITESの保護対象種として提案できるルートを創設することにより、絶滅の危機にあるが保護されていない種の未処理のものを明確にしておくべきである、とFrank氏と共同執筆者であるプリンストン大学の生態学者であるDavid Wilcove氏は論じている。
著者らはまた、各国がIUCNの情報を、自国内において絶滅危惧種を独自に保護するために利用する方向に向かうべきである、とも示唆している。

CITES締約国および国際的な自然保護関連団体は、新たな提案について協議および投票を行うため、5月にスリランカで締約国会議(注)を開催する予定である。
CITESのIvonne Higuero事務局長は、本調査において確認された多くの種は、次の会議で協議・投票予定の57の議案に含まれている、と述べている。
調査結果は、「検討する上で非常に有益です」、と同事務局長は付け加える。

「CITESおよびIUCNは、最重要な自然保護組織の中に数えられます」とFrank氏は述べる。
「我々はただ単に、今日および将来において、科学的知識がどのように政策に適用されているかに関する尺度を、両者に提供しようとしているだけなのです」。

ニュースソース:
https://www.sciencemag.org/news/2019/02/it-can-take-decade-species-endangered-wildlife-trade-get-protection

(注)CITESの第18回締約国会議は、2019年5月23日~6月3日にスリランカのコロンボで開催される予定であったが、テロの影響で延期となり、同年8月17日~28日にスイスのジュネーブで開催された。

 

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