最終諮問報告:締約国による需要削減への取り組みの見直し
和訳協力:根岸 征由起、校正:JWCS
1.本文書は事務局が議題20に関して提出するものである。
2.TRAFFICによる最終諮問報告:締約国による需要削減への取り組みの見直しの主な所見と提言は以下に記す通りである。
主な所見
a)通達への回答およびそのほかの情報から、締約国は、Demand reduction strategies to combat illegal trade in CITES-listed species (CITES附属書掲載種の違法取引に対抗するための需要削減戦略) に関する決議Conf. 17.4を施行すべく、一連の取り組みを行っていることを示している。
b)締約国の報告によれば、関係者間の協力はみられるもののその大半は自然保護に携わるNGOとの連携である。政府機関同士の連携はごく僅かな事例しかない。
c)締約国の取り組みの多くは、決議Conf. 17.4の重要な提言の一つである、消費者の行動改革よりも普及啓発の方に重点を置いている。
d)締約国の消費者に関する理解が不足していることは明らかであり、これが特に「深く根付いた文化的信仰」が関わっている場合に、消費者の行動改革を妨げている。
e)需要削減への取り組みの効果の評価は締約国にとって深刻な課題のままである。取り組みの目的が単なる啓発ではなく「行動改革」であった場合、往々にして測定基準が欠如しており、結果として取り組みの実施のみが評価されて結果は評価されない事態を招いている。
f)財政面および人材面での資源の制約は、共に需要削減対策の実施に際して直面する重要な課題として頻繁に締約国が挙げている。
g)需要削減の取り組みの多くは大衆の心を捉えやすいほんの僅かの目立つ種のみを対象としており、違法取引の影響を受けているほかの種に関しては改善の余地が大いにある。
重要な提言
a)締約国の需要削減への取り組みを支えかつ締約国が具体的な成果を上げられるようにするためには、締約国の行動科学にかかわる能力開発を行うべきである。
b)入手可能な研究証拠、消費者団体に関する見識、そして需要削減の啓発対象の選び方についての認識を締約国の間で高めるために、より多くの情報を締約国に提供するべきである。
c)需要削減の実施に際して締約国が用いる手法の適応的管理、また啓発活動が必要に応じた消費者の行動改革をもたらしているかの理解のために、需要削減の効果を測定しかつ評価するための支援となる具体的な指導を締約国に提供すべきである。
d)政府による需要削減への取り組みの施行を支援するために更なる財政的援助を締約国に提供するべきである。需要削減や行動改革への取り組みの複雑さ、この様な取り組みが特に必要とするもの、そして需要削減に有効な介入を行った場合に期待できる効果、などが支援国や支援団体によってしっかり理解されるよう努力がなされるべきである。
e)関係者間の協力範囲は、より多くの民間団体と学術研究機関、そして政府間国際機関並びにその他の関連政府機関を含むよう拡張されるべきである。
f)一部の需要削減への取り組みの考案や創出において、先鞭をつけるのが得てして自然保護に携わるNGOであるのは当然かもしれないが、政府が取り組みを先導するか少なくともその実施に積極的に参加することは必要不可欠である。
g)行動改革を伴う的を絞った需要削減戦略と、絶滅危惧種の窮状や密猟および違法取引の様々な悪影響に関する一般向けの啓発活動の違いについて、締約国が理解することは極めて重要である。これは両方とも利点があるものの、前者の方がより緊急な対処を必要とする場合に重要である。
*本文書で使用されている地理的名称はいかなる国、領土、地域、あるいはその国境や境界線の法的地位に関してCITES事務局(もしくは国連環境計画)の見解をなんら示すものではない。本文書の内容に関する責任は著者のみに帰するものである。
原文:
https://cites.org/sites/default/files/eng/cop/18/inf/E-CoP18-Inf-004.pdf
注:2019年5月17日時に上記サイトに掲載されていた文書の1・2ページ部分を訳したものです。
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