ゾウの空間利用は作物被害の指標に適さず
和訳協力:下島 深雪、校正協力:鈴木 洋子
2018月12月 Biological Conservation掲載論文要約部分抜粋
ゾウによる作物被害は、人間と、人々の暮らしや生物多様性保全への取り組みに影響を与えるゾウとの間の相互作用の結果もたらされるものである。
人間とゾウとの衝突は通常、ゾウと人間の空間利用に重なりが生じ、資源の争奪に発展した時に起こる。
従って、ゾウによる空間利用パターンを理解することが、人間とゾウの負の相互作用を緩和する鍵となる。
ボツワナの東部オカバンゴ地区では、16,000人を超える人々が18,000頭のゾウと資源を共有している。
我々は、GPS付きの首輪を装着した20頭のゾウのデータを使用し、1年中昼夜を通して、また乾季、雨季および作物被害のある時期を通して、景観の変化とゾウの空間利用との関係を調査した。
2014年から2016年にかけて作物被害のあった時期に、ゾウの空間利用と作物被害の発生を比較した。
その結果、ゾウの空間利用は主に、水場や農地から離れた地域までの距離によって決まることが分かった。
しかし、ゾウの空間利用を大規模に予測することは困難を極めた。
作物被害の事象とゾウの分布とが比例しなかった作物被害の起こる時期は、とりわけ難しかった。
このことから分かるのは、ゾウの頻繁な利用は、作物被害の発生確率の指標には適さない可能性があることであった。
調査結果に基づき、我々はゾウの作物への影響を減らすための最適な方策として、景観規模の介入策と並行して、地域規模でゾウを人間の農作物から遠ざけることを提案する。
我々は、今後の研究で時空間的手法を組み合わせて利用することを推奨するのと同時に、専門家が地域規模での取り組みに焦点を置き、ゾウの回廊を保護し、ゾウによる作物損失を減らすための農家の協働による取り組みを支援することを推奨する。
ニュースソース:
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006320718304385
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