伝統の名の下で滅びゆく野生生物
和訳協力:蛯名 郁矢
2018年11月5日 FactWire記事より一部抜粋
中国では、25年間禁止されてきた虎骨(トラの骨)と犀角(サイの角)の取引が2018年10月に解禁となり、インターネット利用のいかんを問わず、絶滅が危惧される野生生物の体の一部の販売が後を絶たない。
本報告は、「Reporting the Online Trade in Illegal Wildlife((仮)野生生物の違法なオンライントレードの報告)」プログラムの一部である。
これは、トムソン・ロイター財団およびノルウェー政府が出資する国際組織犯罪対策グローバル・イニシアチブの共同プロジェクトとなっている。
虎骨、熊胆、麝香(ジャコウ)にサンザンコウの鱗は、どれも漢方の重要視される材料である。
同時に、地球上で最も絶滅の危惧にある動物種由来のものであり、その国際取引はワシントン条約によって制限されている。
しかし、中国のソーシャルメディアやeコマース市場を通じて、未だ取引が横行している。
麝香を例にとると、雄のジャコウジカから摂れる香りの強い成分は、薬用効果が高いと中国人に信じられている。
過去50年にわたり、中国ではジャコウジカが激しく密猟され、個体数が90%以上減少した。
中国政府は、2003年にジャコウジカを国家一級重点保護野生動物に指定したが、依然として10社以上の製薬会社の20種近くの製品において、在庫からであれ、飼育下個体から採ったものであれ、合法的な天然麝香の使用を認めている。
インターネットでも違法な天然麝香を容易に購入できる。
アリババの1688.comやタオバオでは、少なくても数十もの天然麝香の香のうや粉末などの商品を販売している。
これらは表向きでは青海省やチベット産ということになっているが、合法な製品の包装に表示が求められている専用ラベルなどの適正な証書が、どの商品にも付されていない。
売り手の大部分は、「中国四大薬都」の一つと呼ばれる安徽省亳州市を拠点としている。
こうした品々は、「体に良くて栄養満点」と宣伝されており、購入者レビューの数からすると、少なくとも5千人に販売されている。
こうしたオンライン取引は違法であり、ある出品者によればこれは完全に「帳簿外」の売上であると明言している。
「適正な証書が付いている製品は、倍の値段にもなるんです」とも語った。
また別の業者に、ジャコウジカが国家一級重点保護野生動物であることに関する質問をすると、乱暴に電話を切る前に、「そうしたものはただの生薬だ。農作物を販売するのに許可なんて必要ない」と言い放った。
中国国家林業局や安徽省林政局、亳州林業局の職員によれば、認証を受けていない天然麝香を取引したり、個人消費者に販売したりすることは違法であり、麝香を成分として含む合法的な薬品には、政府発行の専用ラベルが貼付されていなくてはならないとのこと。
現在では、アリババは商品説明で天然麝香の記載がある登録商品は1688.comから削除している。
タオバオもFactWireからの質問に、広報担当者が次のように答えている。
「弊社でも、法律や利用規約に違反する出品者への措置を継続していきます」。
ニュースソース:
https://www.factwire.org/single-post/2018/11/05/Endangering-wildlife-in-the-name-of-traditions
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