最新報告:フカヒレへの食欲が絶滅危惧種のサメの個体数を減少させる
和訳協力:長谷川 祐子、校正協力:久保 直子
2018年9月13日 Wildaid News
雑誌『Marine Policy』に掲載された最新の論文によると、世界のサメ漁獲量は1960年以降2倍以上に増え、シュモクザメやヨゴレなどの絶滅の恐れのある種の個体数はこの数年間で90%以上減少したという。
University of Hong Kong(HKU:香港大学)、University of British Columbia(UBC:ブリティッシュコロンビア大学)に事務局を置くSea Around Us((仮)我らを取り巻く海)運動およびWildAid(ワイルドエイド)に所属する研究者らが行った調査では、絶滅が危惧されるサメ個体群に対する漁獲の脅威は劇的に増加しており、今現在、消費者がフカヒレ製品を食べないようにすることが、かつてないほど喫緊であることが明らかになっている。
Sea Around Usのデータは、世界のサメ漁獲量が過去60年間で140万tと2倍以上増加したことを示している。
乱獲によって「サメ類の60%近くが脅かされているのです。これは脊椎動物分類群の中では最も高い割合になります」と、筆頭著者で香港大学のSwire Institute of Marine Science(SWIMS:太古海洋科学研究所)に所属するYvonne Sadovy教授は述べた。
香港は、世界で取引きされるすべての乾燥フカヒレのうち約半数が運ばれる通関港で、乾燥フカヒレはそこから中国本土へ再輸出されることが多い、とSadovy教授は付け加えた。
2017年の調査では、香港の魚介類の乾物を扱う店で販売されているのが見つかったフカヒレの33%が、International Union for Conservation of Nature(IUCN:国際自然保護連合)により絶滅危惧種(絶滅危惧IA類、絶滅危惧IB類、絶滅危惧Ⅱ類のいずれか)に指定されている種のものだったことが明らかになった。
一方報告書によれば、軟骨魚類(サメやエイ、ギンザメ)の潜在的に持続可能な形で漁獲できる量は「推定で軟骨魚類の漁獲総量の12%」であるという。
あるいは、潜在的に持続可能な形で漁獲されているのは、現存するサメ類の「537種のうち33種」であるともいう。
ここ数年で数十か国がサメの漁獲の禁止令を採択した。
しかし、違法・無規制・無報告漁業が蔓延し、実際には、ほとんどの国が今もなおサメのフィニングを禁止できず、その行為は世界中で続いている。
法執行の脆弱さや混獲、不十分な法律、犯罪行為といった課題に直面し、研究者たちは予防原則の採用とサメ全種のヒレの消費と取引きの停止を求めている。
「世界のフカヒレ産業では犯罪行為がはびこり、事実上警察は頼ることができません」と、論文の共著者であり、香港のワイルドエイドで野生動物の保護活動に従事しているAlex Hofford氏は語った。
「本当に持続可能なサメ漁業やフカヒレ取引きを実現することはいまだ遠い夢物語です。簡単に言えば、全サメ類のおよそ1/4が猛スピードで絶滅に向かっています。我々の論文が示すように、サメを守る唯一の現実的な方法は、予防原則を採用してすべてのフカヒレの消費と取引きを停止することです。さらには、Maxim's
Catering
Limited(香港マキシムグループ)を含む、香港の無責任なレストラン業界は、サメ類を絶滅の危機にさらす直接の一因となるフカヒレの販売、提供を至急止めるべきです」。
サメやエイは、中国や海外に住む中国人の間で結婚披露宴や旧正月のお祝い、高級レストランで食べる高級料理である、フカヒレスープの主な食材だ。
台湾やベトナム、インドネシア等の国々の中流階級で拡大する需要が、漁業が管理されておらず経済的に発展途上の国々における、持続可能でない漁業を促進させている。
「サメのフィニングや漁獲物を混ぜ合わせる行為は、ほとんど監視されていない公海や人里離れた港で起こりやすいのです」と、論文の共著者であり、ブリティッシュコロンビア大学のSea Around Us運動の研究責任者であるDaniel Pauly博士は語った。
「さらに、管理当局がサメのヒレを含む違法な野生動物取引を取り締まることに関心が薄く、たとえ取り締まったとしても、取り締まりの範囲はとても限られてしまいます。というのも、サメが捕獲された場所を割り出すため、または種を特定するためにでさえ、税関に持ち込まれるすべてのフカヒレについて、調査をしたりDNA検査をしたりすることができないためなのです」。
ニュースソース:
https://wildaid.org/appetite-for-shark-fin-drives-threatened/#.W6B02xIRwaA.twitter
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