欧州最大の不法なカメの養殖場、閉鎖へ
和訳協力:青木 恵子、校正協力:木田 直子
2018年8月23日 Europole Press Release
・スペインの治安警察が約1,100匹のカメと卵750個の救出作戦を敢行
・逮捕者は3名、その他3名が拘留される
・欧州刑事警察機構は、スペインとヨーロッパ諸国(オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア)間における情報交換を調整することにより救出活動をサポートした
世界で最も絶滅が危惧される50種のうち14種
コアウイラ作戦は、欧州刑事警察機構のNaultinus作戦注1)の一環として実施され、2017年2月に始まった。
この時、積荷のカメの数や種類が申告書にある詳細と一致しなかったため、スペインの治安警察の職員がマヨルカ空港でカメの積み荷を押収したのである。
警察は後日、商業目的で水生のカメおよびリクガメ数種を商用に繁殖させている養殖場をバレアレス諸島で発見した。
そこでは、1,100匹以上の成体および幼体と、750個以上の卵が押収された。
雌200匹が産卵間近だったため、この数は増加する方向で修正される可能性がある。
養殖場では世界で最も絶滅が危惧されるカメ類50種のうち14種が発見され、その中には、カナダ、メキシコおよびアメリカ原産の種で、各国の法律で保護の対象とされているものも含まれていた。
また、スペインでは絶滅危惧II類に指定されているクロウミガメのような、高いリスクで絶滅の危機にさらされていると考えられている南アジア産のカメも見つかった。
これらの爬虫類および卵の総額は約600,000ユーロ(約800万円)に該当し、カメ1匹あたりで10,000ユーロ(約132万円)に相当する種もあった。
バルセロナのペットショップを合法的な見せかけに利用
犯罪者らは、密猟した絶滅危惧種のカメを入手し、カメや卵は自分たちの養殖場に帰属するものだという内容の付随文書を偽造していた。
カメは、爬虫類や両生類の輸送に特化した動物輸送業者によって出荷されていた。
養殖場の所有者はバルセロナのあるペットショップと密接に協力していたが、このペットショップはエキゾチックアニマルを専門としており、マヨルカで繁殖させたカメを密輸するために利用されていた。
救出作戦により、最終的にマヨルカで2名、バルセロナで1名が逮捕され、この2地域でさらに3名が拘留された。
彼らは、野生動植物の違法取引、保護種の密輸、およびマネーロンダリングの罪で告発されている。
スペインの治安警察は、CITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の専門家と欧州刑事警察機構の専門家のサポートを受け、当作戦を主導した。
欧州刑事警察機構の専門家らは、オーストリア、フランス、ドイツおよびイタリア等のEU諸国の情報を分析・調整し、モバイルオフィスとUFED注2)を装備した専門家1名をスペインに派遣することで、当初から活動に協力していた。
これにより、活動中に収集されたデータを欧州刑事警察機構のデータベースとクロスチェックしたり、押収したモバイル機器やコンピュータからデータを抽出して事後分析することが可能となった。
注1:Naultinusは、爬虫類であるイシヤモリ科ミドリヤモリ属を表すラテン語
注2:UFEDとは、各国の警察、軍、法執行機関、諜報機関等で携帯電話、スマートフォン、PDA等のデータ抽出の際に使用されている製品のこと
ニュースソース:
https://www.europol.europa.eu/newsroom/news/europe%E2%80%99s-biggest-illegal-turtle-farm-dismantled
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