鳥類と豆類:研究で鳥類多様性に最適なコーヒー豆が明らかに
和訳協力:會田 真弘、校正協力:佐々木 美穂子
2018年2月16日 Wildlife Conservation Society
甘みとやわらかい味のアラビカ豆と、香りが深く力強い味わいのロブスタ豆のどちらを選ぶべきかは、コーヒー愛好家によく知られた議論である。
科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されている、WCS(野生生物保護協会)、プリンストン大学、ウィスコンシン大学マディソン校が行った新たな調査では、コーヒーの愛好家ではないであろう生き物の好みを取り上げた。
その生き物とは、鳥である。
WCSの保全科学者であるKrithi Karanth博士をはじめとする研究者たちは、インドの西ガーツ山脈地域におけるコーヒーの混農林地での鳥類の多様性について調査した。
以前の調査では、木陰で栽培されたコーヒー(主にアラビカ種)は相当な種類数の生物多様性をもたらし得ることが判明した。
しかし、コーヒー生産は、国際的にはロブスタ種へと移行しつつある。
ロブスタ種は、太陽光をより集中的に利用する農法を使用するものであり、この手法は森林の野生生物に有害な影響を与える可能性があるとされている。
研究者たちの調査結果は驚くべきものだった。
アラビカ種農園の鳥類集団はより種類数が豊富となっていたが、ロブスタ種農園でもかなりの生物多様性への良い影響が認められ、果実食の鳥類のような、環境の変化に敏感な鳥類の高密度の群れの存在を支えていた。
さらに、病原耐性の高いロブスタ種の農場では、農家の殺虫剤の使用量が少ないことがわかっている。
著者らは、調査対象のコーヒー農園において、オオホンセイインコ(学名:Psittacula eupatria)、ハイガシラヒヨドリ(学名:Pycnonotus priocephalus)、カノコモリバト(学名:Columba elphinstonii)などのIUCNレッドリスト掲載種3種を含む、合計79種の森林依存種が生息していることを発見した。
また、コーヒー農園では哺乳類、両生類や樹木の多様性がもたらされる場合もあるという。
本調査は、コーヒー生産が景観変化のますます重要な促進要因となることや、栽培するコーヒー豆の品種が、混農林栽培の傾向を大きく変える要因となることを示す、重要な結果をもたらした。
著者らは、コーヒー認定の取り組みにおいては、生物多様性に利益をもたらし続けるコーヒー農園の景観を確保するために、天然の林冠樹を維持することを優先すべきだと述べている。
Krithi Karanth博士は、「コーヒー農園は、インドのような公的に保護されている土地の割合が4%以下の国において、すでに保護地域を補完する役割を果たしています。そのため、大規模農家であれ企業であれ、土地の所有者と協力関係を結べば、鳥類やそのほかの生物にとって必要となる生息地や安全な移動ルートをさらに提供することになるでしょう」と述べている。
インドのロブスタ種は、コーヒーの専門家から、比較的高い「カップスコア」(例えば香りの評価)を与えられており、病原耐性も高く、価格も高く設定されている。
筆頭著者で、プリンストン大学院生時代に本データを分析し、現在、数理生物学総合研究所(テネシー大学、ノックスビル)にてポスドク研究員を務めているCharlotte Chang氏は以下のように述べている。
「本調査によって、国際的な生物多様性ホットスポットであるインドの西ガーツ山脈地域において、コーヒー生産は鳥類と農業経営者の両方に利益をもたらし得る、という励みとなる結果を得ることができました」。
詳細は以下の論文参照:
Charlotte
H. Chang et al, Birds and beans: Comparing avian richness and endemism
in arabica and robusta agroforests in India's Western Ghats, Scientific
Reports (2018). DOI: 10.1038/s41598-018-21401-1
ニュースソース:
https://phys.org/news/2018-02-birds-beans-coffee-bird-diversity.html
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