海洋プラスチックごみ:サンゴ礁への新たな脅威が拡大中
和訳協力:松岡 真由美、校正協力:木田 直子
2018年3月5日 UN Environment News and Stories
人類のプラスチック製品への依存が、自然界の奇跡であるサンゴ礁を汚染していることを示す新たな証拠が見つかった。
サンゴ礁は美しいというだけでなく、サンゴは生きており、また生きた生態系でもあり、生命に満ち溢れている。
その広さは世界の海洋面の0.1%未満に過ぎないが、全海洋生物の25%の生息地となっている。
また、サイクロンや海面上昇などに対して自然のバリアの役割を果たすなど、沿岸のコミュニティを守るために極めて重要な役割を担っているほか、2億7500万人もの人々が食べ物を手に入れ、生活をしていく上でサンゴ礁に直接依存している。
それでいて、サンゴ礁は様々な方面からの攻撃にさらされている。
この30年間で、気候変動による水温上昇や乱獲、陸上のさまざまな活動の影響によって世界のサンゴ礁の最大50%が失われている。
だが、最近の大規模な研究によると、プラスチックによる包囲攻撃も受けていることが明らかになった。
毎年、800万t以上のプラスチックが海に行き着いていると推測されているが、これは毎分ごみ収集車1台分のプラスチックを海に放り出しているのに相当する。
今日では、1960年代に比べ20倍ものプラスチックが製造されている。
もし我々がプラスチックの使用をこのままの状態で続けていくと、2050年までに330億tものプラスチックを新たに作り出すことになり、そのうちかなりの量が最終的に海に流れ着き、そこに何世紀もとどまることになる。
今年科学雑誌サイエンス誌に掲載された、アジア太平洋地域における159箇所のサンゴ礁での調査によると、研究者は、111億個ものプラスチック製品がサンゴに絡まっていたと推測している。
この数字は、今後7年のうちにさらに40%も増加すると考えられている。
調査された124,000の造礁サンゴのうち、病気の脅威にさらされていたサンゴは、プラスチックにより厚く覆われていたサンゴが89%だったのに対し、プラスチックが積もっていないサンゴでは4%にとどまった。
プラスチックの残骸は、サンゴの生命活動に必要な酸素や光をサンゴから奪い、バクテリアやウィルスの侵入を助ける毒性物質を放出する。
2017年10月にMarine Pollution Bulletin誌に掲載された別の研究では、研究者は、海洋生物によるプラスチックの摂取についての懸念が大きくなっていることを報告している。
海洋生物がプラスチックの破片、特にマイクロプラスチックを致命的にも食物と間違えることがあるという無数の証拠が存在しているのだ。
しかし、研究者たちの観察によれば、サンゴは小さなプラスチックの破片を単純に食物と間違えて摂取しているのではないという。
サンゴは、プラスチックが近くにただよってくると、意図的な捕食反応を示したのだ。
言い換えると、プラスチックの化学成分の中には、何かサンゴにとって危険なほど美味に感じられるものがあるらしい。
研究者は、サンゴのこれ以上の汚染や疾患を防ぐために、この現状をよりよく理解する必要があると警告している。
International Coral Reef Initiative(ICRI:国際サンゴ礁イニシアチブ)は2018年を国際サンゴ礁年と宣言した。
UN Environment(国連環境計画)は提携組織と共に、サンゴ礁の価値や重要性、その存続に対する脅威の認識を高め、人々にサンゴ礁を守るための行動を促す活動に取り組んでいる。
#BeatPlasticPollutionが世界環境デー2018(2018年6月5日)のテーマだ。
使い捨てプラスチックの使用を見直す活動へぜひ参加を。
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