生物多様性の持続可能な利用:ブッシュミート及び持続可能な野生生物の管理
和訳協力:小山 史子、校正協力:伊川 次郎
締約国会議は、
自然生息地の広範囲に及ぶ破壊や劣化、景観的なつながりの分断及び損失ならびに、違法な開発や違法な野生生物取引、野生生物製品や資源の持続不可能な利用、気候変動、(違法な)土地利用の転換、汚染、及び侵入外来種といった、野生生物種の存続や再生、および持続可能な開発や人間の福祉に悪影響を及ぼすものが原因で、一部の野生生物種が継続的に減少していることを懸念し、
野生生物の損失は、生物多様性を支える生態学的プロセスに必然的に影響を及ぼし、また社会経済、食料安全保障、人々の栄養や健康等に関する深刻な影響を与え、先住民族及び地域社会の持続可能な慣習的利用、文化、精神性並びにアイデンティティに影響を与えることを意識し、
国の法令に沿った野生生物を利用する先住民族や地域社会の行う野生生物の管理と歴史的な権利を含む、人間のニーズと利益共有の観点からだけでなく、野生生物の保全及び持続可能な利用のためのインセンティブの創出や共有の観点からも、人間側面の重要性を認めながら、生物学的また生態学的な要因と、効果的で公平なプログラムの理解に基づいた健全な野生生物管理プログラムの必要性に留意し、
また、国連総会決議69/314の持続可能な開発のための 2030 アジェンダ、とりわけに目標15の下位目標である15.7及び15.c、並びに生物多様性戦略計画2011-2020の実施に貢献する、野生生物の保全、持続可能な利用及び取引に関して強化された政策協調の可能性に留意し、
ブッシュミートの狩猟を含め、野生生物の持続可能性を改善する方法について、条約の下で多くの活動が行われてきたことを認識し、また、野生生物の持続可能な利用の問題は他分野とも関連し、これらの問題に対処するには戦略的かつ広範囲なアプローチが必要とされることに留意し、
生物多様性の持続可能な利用に関して協調的な活動を促進し、メンバー間の相乗効果を高める上での、野生生物の持続可能な管理に関する共同パートナーシップの役割を再認識し、
1.締約国及び締約国以外の政府、並びに関連機関に対し、2015年9月に南アフリカ共和国のダーバンで開催された第14回世界林業会議で提起された、ブッシュミート産業をより持続可能とするためのより良いガバナンスをもたらすロードマップを、必要に応じて考慮及び実施するように奨励するとともに、締約国に対し、各自の生物多様性国家戦略及び行動計画を策定・実施する際、同ロードマップを活用するよう奨励する。
2.締約国及び締約国以外の政府に対し、関連セクターにおける生物多様性の保全及び持続可能な利用の主流化を強化するために、野生生物の持続可能な利用に関する本条約の既存の指針や勧告を、開発協力機関の計画や戦略に統合するよう奨励する。
3.締約国に対し、生物多様性条約の第6回国別報告書の中に、持続可能な野生生物管理に関して、権利に基づいた管理システムの利用及び、これらの権利と関連する管理の先住民族や地域社会への移譲についての情報を含めるよう依頼する。
4.また、締約国に対し、多様なレベルでの情報交換と技能の交流を含む、持続可能な野生生物の管理に関する訓練と能力開発を行うために、先住民族及び地域社会と連携するよう依頼する。
5.事務局長に対し、野生生物の持続可能な管理に関する共同パートナーシップの他のメンバーと連携し、資源が利用可能なことを条件に、以下のことを求める。
(a)生物多様性戦略計画2011-2020の締約国の実施を支援するという観点から、食料安全保障及び栄養面におけるブッシュミートの役割に関するロードマップ、及び2015年2月に南アフリカ共和国で開催された「Beyond enforcement:Communities, governance, incentives and sustainable use in combating wildlife crime(執行を越えて:違法野生生物取引への対処におけるコミュニティ、ガバナンス、インセンティブ、及び持続可能な利用)」に関するシンポジウム、並びに2015年10月にコロンビアのレティカで開催された「Sustainable use and bushmeat trade in Colombia:operationalizing the legal framework in Colombia(コロンビアにおける持続可能な利用とブッシュミート取引:コロンビアにおける法的枠組みの運用開始)」のワークショップの結果に基づき、生物多様性の持続可能な慣習的利用における先住民族と地域社会の視点や知識を考慮に入れつつ、ブッシュミート産業をより持続可能とするためのより良いガバナンスに向けての技術指導をなお一層改良すること。
(b)生物多様性の持続可能な利用に関するアディスアベバ原則及びガイドラインを含む、本件に関するこれまでの作業を考慮に入れつつ、野生生物の持続可能な利用及び管理に関する活動における優先事項について検討し、定義するために、締約国及び締約国以外の政府並びに、先住民族及び地域コミュニティを含む利害関係者の関与を促進しつつ、野生生物フォーラムの行事を共に検討し、組織すること。
(c)生物多様性の持続可能な利用に関する評価の検討範囲を再度絞り込むにあたり、IPBESS (生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学―政策プラットフォーム) との相乗効果を高めること。
(d)2015年7月に採択された国連総会決議69/314に従い、違法な野生生物の不正取引に対抗するため、並びに野生生物犯罪と闘う国際コンソーシアムのメンバーのような関連法執行機関とともに、野生生物の保全及び法執行に関する組織の能力を強化するための、締約国による取り組みへの支援を継続すること。
(e)第14回締約国会議に先立ち開催される会合において、SBSTTA (科学上および技術上の助言に関する補助機関)、及び条約第8条(j)項及び関連条項に関する作業部会に対し、進捗状況を報告すること。
原文:
https://www.cbd.int/doc/decisions/cop-13/cop-13-dec-08-en.pdf
注:2018年3月13日に上記サイトに掲載されていた文書を訳したものです。
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