南アフリカのライオンの骨の輸出量割当量の提案と野生ライオンの個体数への影響に関するパンセラの声明
和訳協力:矢仲 裕紀子、校正協力:浅原 裕美子
2017年3月1日 Panthera Press Releases
南アフリカのDepartment of Environment Affairs(DEA:水資源・環境省)が、人工繁殖したライオンの骨を正式に合法な取引とする計画を最近発表し、大いに物議を醸した。
ここでは、輸出許可の対象として年間800頭を割り当てることが提案された。
南アフリカから合法に輸出される人工繁殖したライオンの死体の数は、2007年以降急激に増加している。
これは主に、上昇志向のアジア人の間で成長中の、虎骨酒のような贅沢品の市場に供給されており、ますます不足するトラの骨に対する需要をライオンの骨で補うようになったためである。
世界的な野生のネコ科動物の保護団体であるPanthera(パンセラ)は、この割当制度は独断的で、野生のライオンと絶滅寸前のトラの個体数に打撃を与えかねないと非難している。
さらに、DEAに対して直ちにライオンの骨の輸出の一時停止措置を講じるよう求めている。
パンセラのライオンプログラムのシニアディレクターであるPaul Funston博士は次のように述べている。
「ライオンの骨の合法的な輸出規定数に800頭という数を割り当てる政府の提案は、まったく科学的根拠に基づいたものではありません。今以上に野生ライオンを危険にさらすような方針を制定するのは無責任です。すでに、野生ライオンはアフリカの大半の地域で激減しているため、南アフリカでのライオンの人工繁殖産業はライオンの保全にまったく貢献しておらず、さらに危険にさらしているという事実は明らかだと言えます」。
さらに、Funston博士は以下のように続けている。
「国民の誇りの源として野生のライオンを象徴とする国が、世界的に強く非難されてしかるべき行為であり、観光収入はさておき、生産性の低い飼育繁殖産業を続けるというリスクを取ろうとすることは、理解を超えています。観光客に哺乳瓶でミルクを与えさせる、ペットにする、挙句には狭い敷地に入れて狩りをするためのライオンの飼育を合法としていることは、アフリカに住む野生動物の管理者としての南アフリカの評判に傷をつけています」。
飼育したライオンの取引支持者らは、この産業が野生のライオンの部位の需要を減少させ、さらには野生のライオンの保護に役立っているのだと主張する。
しかしながら、南アフリカにおける人工繁殖したライオンのハンティングトロフィーの合法取引は、近隣諸国での野生ライオンの部位を狙った虐殺を加速させ、実際にアジアにおける野生ライオンの部位の需要を上昇させているという確たる証拠がある。
アジアのライオン部位の市場は、2007年に南アフリカがライオンの骨の輸出を始める前には存在していなかった。
近隣諸国からの近年の事例データと報道では、骨や部位を狙ったライオンの殺害が増加していることを示している。
・2016年、モザンビーク共和国のリンポポ国立公園で出たライオンの死骸の90%が、頭部、歯、爪をはぎ取られていた。
・モザンビーク共和国のニアッサ国立保護区では、特に身体部位を狙ったライオンの毒殺率が劇的に増加している。
・2016年、マプト(モザンビーク共和国の首都)で押収した違法な犀角の中から、ライオンの爪と歯が入った積荷6kgが発見された。
・2016年、ナミビア北部のザンベジ州で殺害されたライオン(総数17個体のうち)の42%が、その頭部、足、尾、皮、爪をはぎ取られていた。2014年に同地区でライオンの殺害が相次いだ際には、殺されたライオン20頭から身体部位がはぎ取られることはなかった。
パンセラの代表兼保護官のリーダーであるLuke Hunter博士は、次のように付け加えている。
「キャンド・ハンティングや合法的なライオンの骨の輸出が、密猟による野生ライオンの個体数への抑圧を軽減させることを示す科学的な証拠は何一つありません。実際のところ、そのような行為は野生のライオン、ヒョウ、トラの体の部位に対する世界中の需要を促していることがますます明らかになっています。CITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称「ワシントン条約」)による、人工繁殖のライオンの骨を南アフリカから輸出することを制限する命令は、正しい方向への一歩となりました。キャンド・ハンティングを禁止するよう、政府に対して世界規模で圧力をかければ、この非難に値する産業の終焉を見るのもそう遠い未来ではないかもしれません」。
背景
野生のライオンの個体数の減少は急激で、ちょうど20年前の3万頭から、今日では2万頭を残すのみとなるほどに減少している。
この種は、自然状況下で致命的な数々の脅威に直面している。
その脅威とは、人間との対立や食肉を得るための密猟、生息環境の喪失、持続的でないハンティングトロフィー狙いの狩猟などであり、また違法な野生生物取引のための密猟という新たな脅威もある。
パンセラの「プロジェクトレオナルド」は、アフリカの15カ国が15年以内にライオンの個体数を最低でも3万頭に戻すという取り組みを先導し、支援するものだ。
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