世界規模で増加する侵略的外来種
和訳協力:松尾 亜由美、校正:長井 美有紀(Myuty-Chic)
2017年2月17日 IUCN News
IUCN(国際自然保護連合)のSpecies Survival Commission(SSC:種の保存委員会)、 Invasive Species Specialist Group(侵入種専門家グループ)のメンバーらを含む国際的チームが、雑誌Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)で発表した研究によると、世界中で侵略的外来種が増加しており、その課題に取り組もうと世界的な努力がなされているにも関わらず、その数は留まるところを知らないという。
その研究により、過去200年の間、世界規模で新たな外来種の移入はとどまることなく増加を続けており、初期移入の1/3以上が1970年から2014年の間に記録されていたことが明らかになった。
さらに、哺乳類と魚類を除き、すべてのグループ種の新たな移入がより増加すると見込まれていることがわかった。
「この研究結果は憂慮すべきものなのです。というのは、すべての分類学上のグループで、世界のすべての地域において、新たな移入の個体数が継続的に増加していることが分かるからです」と、IUCN-SSCの侵入種専門家グループ代表で、この研究著者の一人でもあるPiero Genovesi氏は語る。
「このような侵入によって生態系は悪影響を受け、生物多様性の損失や在来の植物や動物の絶滅が引き起こされる可能性があります。これにより、食糧や薬、清潔な水、その他の自然がもたらす利益に、潜在的に破滅的な結果をもたらす可能性を秘めており、国連のSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)を達成することが地球規模でより困難になりってしまうのです」。
IUCNのGlobal Invasive Species Database(侵入種データベース)やGlobal Register of Introduced and Invasive Species(グローバル侵入種登録簿)などの新しいデータに基づき、その著者たちは、約17,000種の外来種として認定された種についての、45,000件以上の初期移入記録を分析した。
その結果によると、おそらく園芸ブームによるものと考えられるが、19世紀に初期移入が記録された維管束植物は著しく増加している。
藻類や軟体動物、昆虫類などのその他の生物の新たな移入率は1950年以降に急激に高まっており、国際貿易の成長によるものと思われる。
著者らによれば、この問題に取り組むべく国際協定や規制は増えているにも関わらず、世界規模で侵略的外来種の移入数が増加しているため、より効果的な保全策の制定が急務であることが明確になったという。
侵略的外来種は、偶然または故意に人間によって元々その種が生育・生息する地域の外から持ち込まれた種であり、本来そこにある生物多様性、生態系サービス、または人間の福利にも悪影響を及ぼす。
それらは、生物多様性の損失の主たる原因となり、両生類や爬虫類、哺乳類を最も絶滅の危機へと追いやる原因にもなる。
ハワイで開催されたIUCNの世界自然保護会議(World Conservation Congress)では、32の団体と機関が集結し、Honolulu Challenge on Invasive Alien Species(侵略的外来種に関するホノルル・チャレンジ)が発表された。
この国際的なイニシアティブは、侵略的外来種による影響を減らすための緊急措置を求めている。
このチャレンジには、2016年末までにニュージーランドやイギリスなどの2つの政府を含む34の支援団体が参加し、7つの誓約がなされた。
ニュースソース
https://www.iucn.org/news/secretariat/201702/invasive-alien-species-rise-worldwide
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