ナイジェリア政府、高速幹線道路計画のバッファーゾーン撤回も、コミュニティや野生生物保護に向けた更なる対応が必須
WCSと支援者らは、中央アフリカの180の先住民コミュニティと、最も生物多様性に富んだ森林を保護するために、全長162マイルの高速道路計画のルート変更を求め、依然としてロビー活動を継続中。
和訳協力:蛯名 郁矢、校正協力:花嶋 みのり
2017年2月16日 WCS News Releases
クロスリバー州政府は昨日、提示済みだった高速幹線道路の周囲12マイルのバッファの設置を取り下げると発表。
しかし、WCS(Wildlife Conservation Society:野生生物保護協会)と道路の全面的な迂回を求めるその取り組みによれば、道路の建設が進めば、コミュニティの重要な森林の消失や地域の野生生物への重大な影響を防ぐには、ナイジェリア最後の熱帯雨林の1つが保護されただけでは、まったく十分ではないという。
高速道路建設についてこうした議論が持ち上がったことで、計画の差し止めを求めて2016年10月にWCSが着手し、これまで105,840名の嘆願署名を集めている世界的な運動が勢いづいた。
WCSと支援者たちは、高速道路のバッファーゾーンの撤回だけでなく、もう一歩踏み込んで、先住民コミュニティと熱帯雨林の野生生物を迂回する形での高速道路建設計画をナイジェリアの政策決定者に要求し続けている。
「バッファーゾーンの撤回が発表されたのは好ましいことですが、ナイジェリア政府は、この計画によりコミュニティやクロスリバーゴリラのような絶滅危惧種が危険にさらされないように徹底しなければなりません」と、WCS広報部門の副代表で、96 Elephants campaign((仮)96頭のゾウキャンペーン)など、保全のための広報活動事業の指揮をとるJohn Calvelli氏は述べている。
「我々は政府に対して、この場所が「故郷」であるEkuriの人々とその他の多くのコミュニティ、そして野生生物の未来のために、道路によりつぶされる村や熱帯雨林を避けるよう、高速道路のルート変更を求めます」。
原案では、全長162マイルの高速幹線道路計画において、6車線の高速道路の両脇に、森林を伐採して作る幅6マイルのバッファーゾーンが設定されていた。
専門家によれば、バッファーゾーンを抜きにしても、この計画が多くの先住民コミュニティの生活に及ぼす影響は甚大であるという。
Ekuri Initiativeや、その他のコミュニティは、開発を食い止めるために独自の取り組みに着手した。
この草の根運動により25万3,000名の署名が集まり、森林に覆われた故郷の保護を目指して、2016年9月にBuhari大統領に届けた。
また、この高速幹線道路は地域固有の野生動物への脅威にもなる。
幅12マイルのバッファを抜きにしても、この計画はクロスリバー国立公園やその他の保護区域に依然として大きな影響を与えるだろう。
こうした場所は、ゴリラの亜種で生息数が300頭に満たない、絶滅危惧IA類のクロスリバーゴリラの「最後の砦」のようなものである。
高速道路とその建設作業は、そのほかの絶滅の危機にある動物、マルミミゾウ、ナイジェリアカメルーンチンパンジー、Preuss’s red colobus monkey(オナガザル科アカコロブス属の1種)、ドリル、アフリカクチナガワニなどの個体群にも、相当大きな影響を与えるだろう。
「野生生物が多く生息する森林を貫く大規模な高速道路を建設すれば、多くの種に甚大な影響を与えることになるでしょう」と、WCSのナイジェリア国内の代表を務めるAndrew Dunn氏は述べる。
「また、そうした開発により、森林の中でこれまでは立ち入り不可能だった場所に人が入っていくことができるようになり、間違いなくその地域の野生動物の密猟が増加するでしょう。地域コミュニティや野生生物のために政府ができる最善の判断は、今回の高速幹線道路の建設を、ナイジェリアで最も生物が多様な森林ではないところへ移すことでしょう」。
詳細についてはwww.wcs.orgを参照のこと。
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