人間の活動によって世界の霊長類が絶滅の危機に-流れを逆転させるには世界規模の注目が必要
和訳協力:三尾 美里、校正協力:花嶋 みのり
2017年1月19日 African Conservation Foundation News
生物学上、私たちに一番近い親族である非ヒト霊長類は、多くの社会において、暮らし、文化、信仰に重要な役割を果たし、人類の進化や生物学、行動、新興感染症の脅威について独自の識見を提供している。
非ヒト霊長類は熱帯の生物多様性に不可欠な要素であり、森林再生と生態系の健全性に貢献している。
最新の情報によると、新熱帯区、アフリカ本土、マダガスカル、アジアに分布している79属504種の存在が明らかになっている。
驚くべきことに、霊長類の種の約60%が現在、絶滅の危機に瀕しており、約75%が個体数を減少させている。
このような状況は、霊長類自体とその生息環境に対して、主には世界的、地域的な市場の需要などといった、人間活動に起因する圧力が高まった結果である。
また、霊長類の生息する地域での産業型農業の拡大、大規模な牛の放牧、樹木の伐採、石油やガスの掘削、採鉱、ダムや新しい道路網の建設を通じて、広範囲におよぶ生息環境の喪失を招いている。
その他の重大な要因となっているのは、気候変動やヒト媒介性の疾患といった新たな脅威と併せて、ブッシュミートの狩猟の増加、霊長類のペットとしての違法取引や身体部分の違法取引である。
ほとんどの場合、こうした圧力が相乗効果的に働き、霊長類の個体数の減少に拍車をかけている。
極度の貧困によって特徴づけられ、急速に人口が増えている人間の集団と、霊長類生息地域が広範囲に重なることを考えれば、迫りくる霊長類絶滅の危機を覆すために、また持続可能な方法で地域の人々のニーズに応えるためには、直ちに世界中が注視することが必要である。
地域的には、そこに暮らす人々と政府がこうした取り組みの中で利害関係者となる必要がある。
また、自分たちの基本的ニーズを満たしつつ、霊長類の個体群と彼らの暮らす森林を保護することで恩恵を受けられることを理解しなければならない。
これには、政府、非政府組織(NGO)、民間部門による教育、再考、投資が必要となる。
この世界的な問題には唯一の解決法というものはない。
霊長類のエコツーリズムは一部の地域では効果的な方法かもしれない(例えば、ルワンダ、コンゴ民主共和国、ウガンダでのゴリラエコツーリズムなど)。
世界の霊長類の多くが差し迫った絶滅の危機に直面しているものの、研究論文の著者たちは依然として、霊長類保護はまだ見込みのないものではないとして譲らない。
そして、個体数の減少につながる環境面での圧力と人間の活動に起因する圧力はまだ覆しうる、と楽観的である。
しかしながら、これは科学面、政治面、管理面での効果的な意思決定を直ちに実行することを条件としている。
行動を起こさなければ、霊長類の生息する地域で人間が引き起こした環境面での脅威は、霊長類の生物多様性の継続的かつ加速的減少につながっていく。
生息環境の喪失と劣化、分断された生息地域での個体群の孤立、狩猟や捕獲による個体群の絶滅、人間や家畜の媒介する病気による急速な個体数の減少、増加する人間の侵攻、気候変動などの要因が組み合わさり、霊長類は失われていくだろう。
この報告が最もはっきりと示しているのは恐らく、研究者、教育者、管理者、政策決定者など、私たちが全体として霊長類の種や生息環境の保護に失敗しているということなのだろう。
私たちは解決すべき非常に困難な課題に直面している。
というのは、成功のためには、霊長類保護を基礎とした社会的、文化的、経済的、生態学的相互依存性に対応する、継続的な解決策が求められるためである。
世界の霊長類の窮状に対して、また、霊長類を喪失した場合の生態系の健全性と人間社会への代償に対して、世界レベルでの科学的、社会的認識の向上が必要不可欠である。
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