危機にさらされるキリンのために今こそ立ち上がろう
和訳協力:ジョンソン 雅子、校正協力:木田 直子
2016年12月14日 African Conservation Foundation News
キリンのために首を突っ込め!
おっと、ダジャレで失礼。
我々は愚かにも、サイ、ゾウ、大型類人猿などの愛すべき動物たちばかりを心配してきて、世界で最も背の高い哺乳類を当たり前の存在と考え、これまで気にもとめてこなかった。
ところが、キリンが絶滅の危機にあるかもしれないという報告が彼らの生息地から届いている。
どうやらキリンたちも大丈夫ではないようなのだ。
なぜだろう?
まず、現代の分子遺伝学のおかげで、これまで1種だと考えられたキリンが実は4種で、さらに7から9の異なる亜種に分類できることがつい最近判明した。
ということは、気にしなければならない生物の多様性は、これまでよりも多いということだ。
もっと心配なのは、キリンの個体数が激減しているという事実だ。
かつてキリンが広く歩き回っていたアフリカのサバンナや森林地帯で、今、キリンの生息地は1世紀前の半分以下にまで減少しているのだ。
まだキリンが生息している場所でも、分布が年々まばらになり、個体群が分断化されつつある。
総個体数はこの20年の間に40%も減少し、アフリカの7カ国からは完全に姿を消してしまった。
中でも最も危機的なのが、ニジェールにしか生息しない亜種のWest African giraffe(ナイジェリアキリン)だ。
1990年代には50頭にまで減ってしまい、自然保護運動家やニジェール政府の必死の努力により、土壇場でなんとか絶滅を免れた。
この急激な減少を受けて、International Union for the Conservation of Nature(国際自然保護連合)は、最近キリン全体の保護状況を軽度懸念から絶滅危惧II類に引き上げた。
生物学的状況で言えば、船の見張りが突然「前方に氷山!」と叫んだようなものだ。
見上げるほどの課題の山
それでは、なぜ突然減少したのだろう?
その理由の一つとして、キリンの繁殖に時間がかかることがゆっくりであることが挙げられる。
大型動物であるがゆえに、これまではライオンやハイエナ、原住民族のハンターによる攻撃がたまにあっただけなので、厳しい現代世界にうまく適応できずにいるのだ。
現在、キリンは従来より多くの敵からの攻撃にさらされている。
国連によると、11億のアフリカの人口は急速に増加しており、今世紀には4倍にまで達する可能性がある。
人口の増加によって、農地や家畜、そして急成長する都市のために多くの土地が必要となる。
それ以上に、近年アフリカは外国企業、特に中国やオーストラリア、その他の国の鉱業関係の大企業の進出先として人気が高い。
鉄、銅、アルミニウム鉱石などを大量に輸出するために、特に中国が、道路、鉄道、港湾ビルの建設に躍起になっているのだ。
外国通貨が大量に流入することで、アフリカのインフラも急拡大している。
大がかりな高速道路や鉄道網を中心に、全部で33の「開発地帯(コリドー)」が提案され、もしくはすでに工事が進んでいる。
我々の調査で、これらの計画が全長53,000km以上に達することがわかった。
大陸を縦横無尽に横切って計画されており、生物学的に豊かな生態系を擁する辺境の広大な土地にも、新たな開発の手が伸ばされることになる。
同時に、キリンたちは、槍などの従来の武器ではなく強力な自動ライフルで武装した密猟者から、必死に逃れようとしている。
キリンたちは尻尾だけを目的に殺されることがよくある。
それは、キリンの尻尾にステータスシンボルや結婚のための贈り物としての価値を置くアフリカ文化があるからだ。
実行に移す時
我々が勝手に大丈夫と決めつけていた種群であるキリンがの状況が絶滅危惧II類へ突然変わったことは、我々に向かってすぐに行動せよと赤い旗が振られていることを意味する。
キリンの全体的な減少は、より多くの野生動物達の減少傾向を反映したものだ。
最近のWWFの報告では、2020年までに地球上の鳥類、哺乳類、両生類、魚類の全個体数の2/3を失うことになるだろうと推測している。
熱帯諸国の種は特にひどい状況にある。
我々にできることは何だろう?
まず最初にすべき重要なことは、アフリカ諸国が自然破壊をせずに自然資源と経済を開発できるように支援することだ。
この緊急を要する課題の成否は、自然保護区と危機的状況にある野生生物に関わる土地利用計画、管理と保護の対策の改善にかかっている。
最新のテクノロジーを利用することも考えられる。
例えば、違法な森林伐採、道路整備、その他の違法な活動を、人工衛星やドローン、コンピュータ処理、クラウドソーシングのすばらしい進歩のおかげで、ほぼリアルタイムで監視することができる。
また、手頃な値段で手に入る自動監視カメラが、野生生物の個体群を監視するのに広く使用されている。
これらは、特に人間の指紋のように斑紋が個体ごとに異なるキリンの場合にはとても有効だ。
しかし、世界中のすべてのテクノロジーを持ってしても、アフリカが立つ苦境の根本的な原因に対処しなければ野生生物を救うことはできない。
その原因とは、人口爆発と、公平な社会と持続可能な発展の切迫した必要性である。
密猟や違法な道路整備に対処しながら、これらの根本的な必要性をないがしろにすることは、今にも決壊しそうなダムを尻目にダムに空いた穴をふさぐことに似ている。
我々の努力を倍増し、環境保護とより持続可能な社会を両立させるべくもうひと踏ん張りしなければならない。
ダムの穴をふさぎながら、ダム自体をもっと高くするのだ。
威風凛々と立つキリンやアフリカの減少する野生生物のために、いま立ち上がろう。
でなければ、手を振ってサヨナラと言うしかない。
ニュースソース
https://www.africanconservation.org/wildlife-news/it-s-time-to-stand-tall-for-imperilled-giraffes
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