IUCN世界保護地域委員会が気候変動に直面する保護地域の管理ガイドラインを発表
和訳協力:駒井 素子、校正協力:佐々木 美穂子
2017年3月31日 IUCN News
保護地域の管理に携わる人々は極めて大きな課題に直面している。
ここに、ごく控えめに幾つか例を挙げるならば、資源の枯渇、侵略的外来種、密猟、開発問題等が挙げられる。
目下、従来のあらゆる脅威をしのぐ脅威が出現しており、それが従来の大部分の脅威と互いに影響しあっている。
保護地域の役割が人類にとって重要な環境保全ツールであると認識している我々にとって、気候変動は現実の問題であり、極めて大きな課題である。
保護地域と通じた環境緩和と適応
IUCN(国際自然保護連合)のWorld Commission on Protected Areas(WCPA:世界保護地域委員会)は、時宜を得て、保護地域の管理者や立案者に向けて管理ガイドラインをリリースした。
その見解は楽観的なものだ。
すなわち、我々が気候変動を緩和するにしても適応していくにしても、打つ手は多数あり得ると述べているのである。
「私たちは、保護地域の管理に関して未知の海域にさしかかっていますが、私たちの大切な保護地域の管理方法に関しては、既にかなりのことを学んでいます」と、WCPAのKathy Mackinnon議長は述べている。
「これら過去に学んできた事柄は重要であり、これからも私たちが前進する際に関わってくるものです。私たちみなの未来のために、この知識を基盤とする立場をとり、将来の変化に適応するために新しい事柄に挑戦していくことが必要となるでしょう」。
コロンビア
今年に入って、IUCNのWCPAはコロンビアで運営委員会を開催した。
コロンビアは、世界で最も生物多様性の高い国の一つであるが、同時に気候変動がもたらす様々な課題に直面している国でもある。
「保護地域は、自然保護における最も効果的で戦略であるとともに、気候変動に取り組むために非常に重要な存在でもあります。アマゾン地域において保護地域を成功例に導くためには、地域社会や先住民コミュニティとより緊密に協働していかなければなりません」と、コロンビア国立自然公園の代表者であるJulia Miranda Londono氏は述べている。
REDPARQUES宣言
保護地域にとって気候変動は極めて大きな問題である。
しかしその一方で、気候変動に対する社会的な対応において保護地域が貢献する、新たな機会をもたらすことにもなっているのである。
ラテンアメリカ18カ国は、保護地域と気候変動に関するRedparques宣言を採択した。
その宣言では、以下の内容を提案している。
「気候変動に基づく基準に照らした保護地域の設置、管理および企画について増強、改善し、国連の気候変動レジームが行う議論や公約において、気候変動に対処するための効果的戦略として保護地域を認知するよう求める」(UNFCCC-COP21, Paris, 2015)。
このRedparques宣言において、アマゾン地域は必要不可欠な生態系サービスを提供するための、重要な生物群衆の一つであると認識されている。
アマゾン地域がもたらす生態系サービスは、社会全体の、特に先住民族および様々な地域コミュニティの社会的、文化的、経済的利益を守るものである。
またこの宣言は、保護地域の統合が、地球規模の気候変動に対する計画において、また自然に基づいた戦略としても重要であると認識している。
「Adapting to Climate Change Best Practice Guidelines((仮)気候変動適応ベストプラクティスガイドライン)」は9つの章から構成されており、その中核に適応的学習戦略という項目が置かれている。
各種の概念を説明するための様々なケーススタディと、一定の範囲内の状況に応用可能なベストプラクティスのシリーズが紹介されている。
これは、IUCNにより編纂された、より大規模なガイドラインシリーズであるBest Practice Protected Area Guidelines Series(保護地域ベストプラクティスガイドラインシリーズ)の一部を構成するものである。
本ガイドラインのダウンロード先はこちら
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