自然の木の実からつくる「アランブラッキア油」を朝食のパンに
和訳協力:影山 聡明、校正協力:長井 美有紀(Myuty-Chic)
2017年3月17日 IUCNニュース
IUCN Red List of Threatened Species(絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト)で絶滅危惧II類とされるアランブラッキアの木の実は、西のギニアから東のタンザニアにかけて、アフリカの熱帯降雨地帯で収穫される。
その種から作られる油は、数世代にわたって抽出されており、料理や石鹸の製造に使われている。
しかし、この油の新しい商業的な応用が、アランブラッキアの未来を保証する鍵となるかもしれない。
2000年頃、世界的な消費財企業であるUnilever(ユニリーバ)は、自社製品に使用可能な油の新しい原料として、アランブラッキアの種に大いなる可能性を見出した。
ユニリーバは、社会的かつ環境保全に意識的なやり方で種を購入することを試みた。
小規模農地の所有者達によって栽培される種から抽出した油を購入するために具体的な公約を提示し、健全なバリューチェーンを形作るようにした。
2002年、油の持続可能な製造を保証するために、アランブラッキア商社(それ以前は"Novella"という名称だった)が設立された。
ユニリーバからなる官民パートナーシップやWorld Agroforestry Centre (ICRAF:国際アグロフォレストリー研究センター)、Union for Ethical Bio Trade(UEBT:倫理的バイオトレード連合)、FORM International、Novel Development((仮)ノーベル開発)、RSSSDA、IUCN(国際自然保護連合)は、10年以上にわたりこのプロジェクトに一体となって取り組んできた。
アランブラッキア商社の全提携企業は、以下の重要な指針に基づき、この新しい作物の開発を成功させるために、契約を交わした。
・アフリカの地域社会における、社会的利益の供給と世帯ごとの生計の向上
・森林に自生している樹木の保護や、森林伐採跡地や森林が劣化した地域への植樹(森林景観の復元)を通じた、生物多様性の保全。
アランブラッキアの種は、これまで野生のものが収穫され、その地域で消費されてきたため、輸出するためのサプライチェーンを創出しなければならなかった。
ユニリーバの契約と財政投資を支援するため、その他のアランブラッキア事業の提携企業は、アランブラッキアの栽培に関する具体的な研究や、野生のアランブラッキアの収穫の仕方の訓練、収集場所の設置などを通じて貢献した。
スイスの経済省経済事務局からの資金提供により、IUCNとUEBTは、持続可能性の基準と持続可能なサプライチェーンを保証するための検証制度を開発しました。
IUCNは、農民の経営技術を向上させ、市場における彼らの活発な参加を促すことにも取り組んだ。
さらにIUCNは、景観の復元のために選ばれた一つの種として、ココアの間作にアランブラッキアを用いる小規模農家のビジネスモデルもサポートしている。
10年の研究後、アランブラッキアは滑らかなマーガリンとして、ようやくヨーロッパ(特にスイス)の小売店の棚で見かけられるようになった。
これはまさに第一歩だといえる。
アランブラッキアの消費は、アランブラッキアの生育する地域の地域コミュニティにおける、長期的な発展と貧困の軽減をもたらす機会となり得る。
アランブラッキア油は、地域コミュニティにとって新しく、また持続可能な副収入源になり得る、価値のある農産物となる可能性を秘めている。
これらの地域コミュニティが持続可能な方法でその生産量を増やすことができれば、地域住民と環境の多方面に利益をもたらすことができる。
朝食のパンに塗るマーガリンと同じくらいに一見シンプルなものからもたらされる、これらのあらゆる利益を想像して欲しい。
ニュースソース
https://www.iucn.org/news/forests/201703/allanblackia-oil-wild-harvested-seed-your-morning-toast
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