欧州の海外領域の保全プロジェクトの企画を募集
和訳協力:K.O、校正協力:池田 磯香
2015年9月14日 IUCN Article
極地・亜極、南大西洋、カリブ地方、インド洋、太平洋地域内の欧州のOverseas Countries and Territories(OCTs:海外領域)における持続可能な開発ならびに生物多様性の保全に関する重要なプロジェクトは、今回助成金を要請することができる。
現在、BEST(Biodiversity and Ecosystem Services in European Overseas Territories:(仮)欧州海外領土における生物多様性および生態系サービス) 2.0プログラムでは、このプロジェクトを支援する企画提案を募集している。
プロジェクトは、EU(欧州連合)の海外領域における持続可能な発展の土台となり、生物多様性の保全を促進し、保全によって生み出される生態系サービスを増進させるものだ。
この初回の公募では、少額枠でインド洋、極地・亜極、および南大西洋地域対象の企画を、中規模額の枠組みではカリブ地方および太平洋地域の対象の企画を広く募集している。
EUの生物多様性を構成する生物の大部分は欧州の海外領土に生育・生息しており、この中に、今回資金援助の対象地域となっている25の海外領域が含まれる。
いくつか例を挙げると、フランス領ポリネシア、グリーンランド、ニューカレドニア、オランダ王国領カリブ地方、そしてアセンション島などである。
これらの領域が含まれるため、欧州の海域面積は世界最大である。
また欧州海外領域では、合計580万人もの市民が生活を営んでおり、地域の健全な生態系は、彼らの生活や経済活動の拡大、そして気候変動への適応に、欠かせないものである。
サンゴ礁やマングローブといった自然生態系は、嵐や海面上昇から海岸線を守る役割を果たしている。
健全な海は、漁業を支えるだけでなく、観光客を魅了するユニークな生物とその生育・生息環境をも守るため、しばしば地域経済の原動力となりうる観光産業にとって、重要である。
こういったいわゆる自然資本を保つための持続可能な開発こそが、このような海外領域では極めて重要である。
BEST 2.0プログラムは、EUのBiodiversity for Life(B4Life)の取り組みの一環として、European
Commission(EC:欧州委員会)のDirectorate General International Cooperation and
Development(DG DEVCO:国際協力・開発総局)より支援を受け、IUCN(国際自然保護連合)が調整役を担っている。
このプログラムは、現地での保護活動と持続可能な開発に対して、目的を絞った必要額のをすぐに利用できるように、資金を提供している。
興味を持った団体は、BEST 2.0プログラムの公式ウェブサイトのトップページから、少額および中規模の額の助成金申請に関するガイドラインや申請要件、よくある問い合わせに対する回答等を見ることができ、条件を満たしていれば、企画を提出することが可能である。
より詳しい内容については、ECのBESTのウェブサイト上に記載されており、BEST創設の経緯や、過去に投資されたプロジェクトの概況報告書、地域ごとの協力団体等の活動の最新情報などを閲覧できる。
これまでに18ものプロジェクトが、欧州委員会と最初のパートナーであったFrench Development Aid Agency(フランス開発庁)の賛同のもと、BESTから助成金を受けている。
これらのプロジェクトは、実に様々な課題に取り組んでいる。
例としては、プロジェクトTefraでは、気候変動がフォークランド諸島の陸生生物の生態系に影響を与えるという評価を出した。
プロジェクトCoca-Locaでは、インド洋海域内でのウミガメの救護と研究に、地元の漁業者が参加している。
また、カリブ地方で行われたプロジェクトでは、侵略的外来種を管理することにより、本来の生態系を取り戻すことに成功した。
そして、プロジェクトMangでは湿地に焦点をあて、湿地環境が生み出す重要な生態系サービスの維持を目指している。
これらのプロジェクトの最新情報については、BESTニュースレター1を参照されたい。
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