自然資本の評価が気候変動への取り組みのカギとなる
翻訳協力:工藤 英美、校正協力:矢仲 裕紀子
2015年11月23日 IUCN Article
イギリスのエディンバラで本日より始まった自然資本世界フォーラムの基調講演の中で、IUCN(国際自然保護連合)のInger Andersen事務局長は、気候変動問題に対処する上での自然資本の不可欠な役割を強調した。
この2日間にわたって開かれるフォーラムは、世界中の実業界のリーダー、政策立案者、環境問題の専門家や学者たちの関心を引いている。
その中には、Virgin Group(ヴァージン・グループ)創始者のRichard Branson氏や、Alliance Trust(アライアンス・トラスト)の最高経営責任者であるKatherine Garrett-Cox氏、そしてスコットランドのNicola Sturgeon首相がいる。
このフォーラムでは、自然環境の保護や回復と投資についての経済的な重要性を探求していくだろう。
「唯一にして最大の気候に関する国際協定が、来週パリで採択される可能性が非常に高い中、その直前の今こそ、私たちは何が危険なのかを自覚しなければなりません」と、このフォーラムの代表を務めるIUCNのInger Andersen事務局長は、彼女の基調講演の中で述べている。
「私たちはみな、この気温上昇2度未満という設定にプレッシャーを感じています。それを達成するのはとても困難でしょうが、もしそれができたとしても、そのたった2度の変化で、私たちの地球と生態系に深刻で重大な影響を与えるということを忘れないでいただきたいのです。ますます頻発する深刻な嵐や洪水、干ばつなどの猛威から、その危機に対して最も脆弱な地域を守っていこうとする時、自然資本はただ一つにして、最大の味方と言えます。私たちはこの自然の力を封じ込めてはいけないのです」。
自然資本とは、森林や河川の流域、湿地帯、サンゴ礁などを含むもので、人間の幸福、経済、持続可能な社会にとって重大な意味を持っている。
しかしながら今日の経済活動は、急激に衰退してきている自然環境に与える影響に関して、その責任を果たしていない。
自然資本世界フォーラムでは、経済システムが意思決定に際して自然資源のことを包含して方向性を定められるよう、自然資源をどのように測定し、価値を評価していくか、最良の方法を検討していくことになるだろう。
このフォーラムの参加者全員が、来週パリで開かれるUN Climate Conference(国連気候変動会議)に出席する世界のリーダーたちに宛てた公開書簡へ署名するよう推奨されている。
その公開書簡は、気候変動へしっかり取り組んでいく上で、世界の自然資本の減少に対処することが極めて重要だという認識を喚起させるものである。
フォーラム開催中に、IUCNが創設メンバーであるNatural Capital Coalition(自然資本連合)が、Natural Capital Protocol(自然資本プロトコル)の枠組み草案に関する世界的な協議を始めるだろう。
このプロトコルは、事業の自然資本への影響と依存度の計測方法を変更することを支援を目的とするものである。
現在50社を超える企業がこのプロトコルを試行しており、2016年7月には最終案が公表される予定である。
ニュースソース
http://www.iucn.org/news_homepage/?22185/Valuing-natural-capital-key-to-tackling-climate--says-IUCN
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