北タンザニアにおけるキリンの研究と保護
和訳協力:グリーン、校正協力:ロペス 昌絵
2015年7月16日 IUCN Redlist News
スイスのIUCN(国際自然保護連合)本部は、Wild Nature Institute((仮)野生生物研究所)とIUCNのSSC(種の保存委員会)のGiraffe and Okapi Specialist Group(キリン・オカピ専門家グループ)に所属する、Derek Lee博士とMonica Bond氏の訪問を歓迎した。
両氏は、タンザニアにおけるキリンについての最新の研究成果を発表してくれた。
キリン(学名:Giraffa camelopardalis)は、世界的には、IUCN Red List of Thereatened SpeciesTM(絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト)でNT(軽度懸念)に指定されている注)にも関わらず、アフリカにおける生息地や総個体数が近年劇的に減少しているのは、生息環境の喪失や分断、密猟、そして病気が原因である。
個体数が安定し、増加している個体群がある一方で、不安定な状況に直面し、絶滅のおそれのある個体群もあるのだ。
現在キリンの総個体数は、アフリカ全体で8万頭未満と推定されている。
Lee博士とBond氏の研究は、北タンザニアのタランギレ地方の分断した生態系における野生のキリンのかつてない大規模な個体群統計学の分析(個体数調査)である。
両氏は、1,800頭を超える個々のキリンの一生を監視するために、各個体特有の毛の模様を写真で認識するコンピュータープログラムを使っている。
これには、成獣と幼獣のキリンの生存、繁殖、移動、そして個体数の増加率の情報収集も含まれているのだ。
この研究の趣旨は、キリン減少の原因をさらに詳しく把握することと、自然状態での被食率が高く、人間の影響を受ける環境で生息する、大型の熱帯哺乳類の事例研究として、キリンをとりあげることである。
というのも、アフリカでは残されたほとんどの生息地では、このような影響を受けているのが典型的だからである。
キリンは、サブサハラ‐アフリカ(アフリカ大陸のうち、エジプト・リビア・チュニジア・アルジェリア・モロッコ・西サハラを除く国々の総称)のアカシアが生育するサバンナ林の状態をはかる重要な指標であるが、特に分断された生態系における野生下のキリンの生態や個体群統計学についてはほとんど知られていない。
キリンに残された国立公園外の生息地のほとんどは、人間の利用によって急速に土地利用が変化しているため、こういったことを知ることは重要である。
そして地域社会が、キリンの個体群を保護するのには不可欠なのである。
例えばタンザニアやケニアのマサイ族のように、地域社会はしばしば、自由に移動するキリンの性質を支えるための生活様式を持っているためである。
そのため、Lee博士とBond氏は、地域社会と密接に協力して研究を行い、維持管理計画を作り、キリンの保全活動を行っている。
このようなことは、すでに分断化されたキリンの生息地を、コリドーやその他の土地の管理と、計画システムによってつなげるときに特に重要なのだ。
Lee博士とBond氏の研究によって、キリンの生息地をつなげることが、様々な亜個体群の回復力を維持するために重要であることが既にわかっている。
両氏はまた、密猟と戦うために、さらなる取り組みを行う必要があることも明らかにした。
さらに、ヌーとシマウマからなる大きな移動性の群れが、キリンの幼獣の生存率を高めることを明らかにしたのだ。
これは、これらの移動性の群れの個体数がキリンの個体数と関連を持つことを示している。
さらなる研究が続いている。
注:キリンがNTとされていたのはこのニュースの当時で、2016年のレッドリストの見直しで、2017年3月現在はVU(絶滅危惧II類)に指定されている。
ニュースソース
http://www.iucnredlist.org/news/giraffe-research-and-conservation-in-northern-tanzania
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