アフリカの主要地域でライオンの個体群が半減、新たな研究からの提唱
和訳協力:成田 昌子、校正協力:オダウド 陽子
2015年10月26日 Panthera Press Releases
新たな研究によって、アフリカほぼ全土においてライオンの個体数が急速に減少していることが明らかになった。
本日発行されたProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(略称PNAS:米国科学アカデミー紀要)に掲載された論文によれば、西アフリカおよび中部アフリカではライオンの個体数は急激に減少しており、大規模な保護活動が行わなければ、今後20年でさらに半減するだろうと予測している。
西アフリカおよび中部アフリカほどではないが、長い間ライオンの主要生息地と考えられていた東アフリカでも、ライオンの個体数減少が確認された。
またこの研究は、過去に少なくとも500頭以上の生息が確認されていた個体群のほぼすべてで、個体数減少が見られることを示している。
今回の研究では、世界的野生ネコ科動物保護団体であるPanthera(パンセラ)、 オックスフォード大学のWildCRU(野生生物保護調査ユニット)、Grimso Wildlife Research Station((仮)グリムソ野生生物研究所―スウェーデン農業科学大学の一部門)、IUCN(国際自然保護連合)のSpecies Survival Commission Cat Specialist Group(種の保存委員会ネコ専門家グループ)、そしてミネソタ大学のDepartment of Ecology, Evolution and Behavior(生態・進化・行動学部)の科学者からなるチームにより、アフリカ全土から47のライオンの個体群の地域個体群の動向データが収集・分析され、このデータをもとにライオンの個体数の動向が推定された。
分析結果によると、西アフリカ、中部アフリカ、東アフリカではほとんどの個体群で個体数が減少しているのに対し、アフリカ南部のボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエ4か国ではライオンの個体数が増加していることが分かった。
筆頭著者である、WildCRUのHans Bauer博士はこう言及する。
「この分析結果が示すように、ライオンの個体数減少を食い止めることは可能であり、アフリカ南部では実際に、個体数が増加しています。しかし残念ながら、ライオンの保護活動の規模は限られており、ライオンの個体数は全体としては危うい状況にあります。多くの国ではライオンの個体数減少は厳しい状況にあり、その影響は多大です」。
彼はさらに「もし増大する脅威に保全の努力が対応しきれなくなれば、ライオンというアフリカ大陸を代表する種は、多くの国で生存できなくなる恐れがあります」と付け加えた。
ライオンは世界的にはIUCNレッドリストで絶滅危惧II種に分類されているが、西アフリカでは絶滅危惧IA種の状況にあたると考えられる。
今回の研究をみると、西アフリカにおけるライオンの危機的状況が続いていること、そしてライオン個体数の分析は全体レベルで行うよりも地域レベルで行う方がより正確な実態が把握できることが分かる。
データに基づいて著者らは、アフリカ南部のライオン個体群は軽度懸念に相当する一方で、中部および東アフリカのライオンの地域個体群は絶滅危惧IB類に昇格させるよう勧告している。
パンセラの代表でありまた主任保護員で、さらに本著書の共著者でもあるLuke Hunter博士は以下のように強く主張する。
「アフリカ南部でライオンの個体数が増加したからといって、満足している場合ではありません。今のままでは、多くのライオン個体群は、今後20年から30年のうちに姿を消すことになると予測されています。ライオンはアフリカ大陸における肉食動物の頂点として重要な役割を担っています。しかし今日我々が目にしているライオンの個体数の急激な減少は、アフリカの生態系の状況を否応なく変えることになるでしょう」。
アフリカ南部での保護努力の成功には、人口密度が低いことや豊富な資源があることなど、幾つかの要因があり、中でも大きいのはフェンスで囲い、豊富な資金で徹底的に管理された小さな保護地区内にライオンを再導入したことだろう、と著者らは言及する。
パンセラのライオンプログラムのリーダーであるPaul Funston博士は次のように述べた。
「ライオンの個体数減少を食い止める措置を早急に、そして大規模に行わなければ、アフリカ南部の管理されたフェンス内を生きるライオンだけになってしまうでしょう。その存在感は、東アフリカの象徴であるサバンナを自由に歩き回るライオンとは比較になりません。この状況はなんとしてでも回避しなければならないのです」。
この研究は、これまでのライオンについてまとめられたもっとも包括的なデータセットを利用したものであり、この種の最新のレッドデータ評価をももたらした。
パンセラの科学委員会にも籍を置き、主著者の一人でもあるミネソタ大学のCraig Packer教授は次のように言った。
「個体数変動の推測には高度な予測技術が求められますが、我々は今回、このような広範囲にわたる、保全状況のもっとも包括的な統計分析を実施しました。その結果には、アフリカのほぼ全土で迅速な対応が必要とされていることがはっきりと表れています」。
ニュースソース
https://www.panthera.org/new-study-suggests-half-lion-populations-lost-key-regions-africa
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