CITESとIUCNが密猟と違法な野生生物取引への取り組みで連携を強化
和訳協力:大喜多 由行、校正協力:日原 直子
2015年8月28日 International news release
Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称「ワシントン条約」)とIUCN(International Union for Conservation of Nature:国際自然保護連合)の事務局が、サハラ砂漠以南のアフリカ地域やカリブ海、太平洋地域における、ゾウおよびその他のCITES附属書に掲載されている象徴種の密猟やそれに関連する違法取引を最小限にするに当たり、両団体間の協力を強化するため、今週、協定に調印した。
この協定が調印された背景には、European Union(EU:欧州連合)が資金提供する、Minimizing the Illegal Killing of Elephants and other Endangered Species(MIKES:(仮)ゾウおよびその他の絶滅危惧種の密猟最小化プログラム)として知られるプロジェクトがある。
調印式の後、CITESのJohn E. Scanlon事務局長は次のように述べた。
「今回、IUCNとCITES事務局の間で連携が強化されたことで、2団体双方の強みがかなり生かされることになります。ゾウはもちろんのこと、サイや大型類人猿やウミガメといったその他のCITES附属書掲載の象徴種に対する、密猟の増大や違法取引の拡大を最小限にするための、我々の協働での取り組みはかなり進展するでしょう。今回の連携強化を通じて、CITESは、こうした象徴種の密猟を最小限にすることに一層の努力を傾けるに当たり、カリブ海や太平洋諸国と同様に、アフリカゾウが生息する国々の現場で、IUCNの存在の恩恵を受けるでしょう」。
この意見に同調して、IUCNのInger Andersen事務局長が次のように述べた。
「密猟や違法な野生生物取引は近年、これまでにない水準に達しており、最も象徴的な種の多くが絶滅の縁に追いやられ、長年にわたる保全活動に支障を来しています。これは地球規模の課題で、国際的な協調行動を通じて取り組むしかないのです」。
「世界最大の自然保護団体として、IUCNは、この差し迫った問題に対して実現可能な解決策を打ち出すため、効果的な協力関係を築くことに尽力すると約束しています。我々は、CITESのMIKESプログラムやその他の保全戦略を実施するに当たり、CITES事務局との緊密な協力関係をとても大切にしています。今回新たに結ばれた協定により、双方の連携が強化され、お互いに力をつける新たな機会が提供されます。またこの新しい協定が、IUCNの一員として世界中で違法な野生生物取引に取り組んでいる会員の活動を勇気づけ、違法な野生生物取引に取り組んだり、ゾウやアフリカおよびカリブ海、太平洋諸国におけるその他の絶滅危惧種の保全を促進することになるでしょう」。
近年、野生生物の違法取引が急増しており、中でも、ゾウやサイやセンザンコウ、何種類かの貴重な樹種は最も大きな影響を受けている。
こうした種の違法取引は事実上全世界に拡大しており、産業規模で起きている。
2011年から2013年にかけて、アフリカ全土で100,000頭を超えるゾウがその象牙を目的に密猟されていると推定される。
2014年には、南アフリカだけで1,215頭のサイがその角を目的に殺された。
その数は、わずか13頭のサイが密猟された2007年以来、驚異的に増えている。
違法な野生生物取引と闘う中で、各国とも、国際的な組織犯罪者に加え、時には反政府的な民兵集団や軍の腐敗分子との対立が深まっている。
彼らは、これまでずっと密猟や闇市場に向けた違法取引を先導してきたのだ。
違法な野生生物取引で用いられるものと同じ違法な社会的生産基盤が、麻薬や武器の密売や人身売買に利用されている。
野生生物犯罪と闘うための共同での取り組みがますます強化されているにもかかわらず、この犯罪は依然として世界的に重大な問題である。
ある調査によれば、その対策には1年に最大で200億USドル(約2兆4,600億円、2015年12月7日付換算レート:1USドル=123.2円)の費用がかかると推定されている。
この数字は、人身売買や武器の密売を含む、最も重大な国際犯罪の幾つかに匹敵するものである。
今回新たに締結されたCITESとIUCNとの協定により、ゾウが生息する国々は、過去15年間にわたり実施されてきたCITESのMonitoring the Illegal Killing of Elephants(MIKE:ゾウ密猟監視システム)プログラムへの積極的な参加を増やすであろう。
ただし、違法取引の脅威にさらされたその他のCITES附属書に掲載される象徴種を加えたいというさらなる目標もあり、カリブ海や太平洋地域への活動の拡大が期待される。
CITESの新しいMIKESプロジェクトには、MIKEの調査対象地域内レベルおよび国内レベルの双方において密猟と闘うため、野生生物の管理や法執行機関の能力を強化することを目的とした取り組みも含まれる。
2016年9月1日から10日にかけてアメリカ合衆国のハワイで開催されるIUCNのWorld Conservation Congress(WCC:世界自然保護会議)や2016年9月24日から10月5日にかけて南アフリカのヨハネスブルグで行われる17th meeting of the Conference of the Parties to CITES(CITES COP17:第17回ワシントン条約締約国会議)では、密猟と違法な野生生物取引が議題に含まれる予定である。
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