専門家が野生植物の取引レベルと保全状況について評価
和訳協力:河村 美和、校正協力:木田 直子
2015年10月19日 CITES Press Releases
ジョージア(旧グルジア)のトビリシで、Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称「ワシントン条約」)の第22回植物委員会が2015年10月19日から23日まで開催され、世界中から第一線の専門家たちが集まっている。
CITESの締約国や政府間組織、NGO、民間企業などからのオブザーバーを含めて、160人以上の代表団が一堂に会するとみられている。
協議の最重要項目は、African teak(アフロルモシア)やシタン、コクタンのような高価値の木材や心材を利用する樹種、またアフリカンチェリー(古くから樹皮を薬用に供されている)、Agarwood(沈香)やビャクダン(どちらも香木として用いられる)のような、その他の経済価値の高いNon-timber forest products(非木材林産物)などの保全状況や利用の程度についてである。
また、木材の識別ガイドラインやアロエ類、サボテン類の取引や保全状況に関する評価も協議項目に含まれる。
さらに委員会は、人工的に繁殖させた植物の取引の報告に関する付加項目についても検討する。
付加項目は、樹木や多年生植物の存続に対する無害証明の認定の手引きや、その他の生物多様性関連の多国間環境協定等との連携などである。
委員会の重要性に関して、CITESの事務局長、John E. Scanlon氏は以下のように述べている。
「植物委員会で決定される勧告は科学的基礎の上に成り立っており、CITESの締約国に、野生植物の保全と持続可能な利用に関する意思決定の指針となる最善の科学的な情報を提供するものです」。
「私たちはこの重要な会議を主催してくれたジョージア国政府と国民に非常に感謝しています。私たちは現在、2016年9月に南アフリカのヨハネスブルクで開催を予定している17th meeting of the Conference of the Parties(CoP17:第17回締結国会議)の準備を進めています。ジョージアは、野生生物の保全並びに持続可能な利用と取引におけるCITESの重要性について、素晴らしい事例を提供してくれました。ジョージアはCITESの附属書に掲載されている野生のスノードロップの球根を毎年約1500万個輸出しています。ジョージアのCITES管理当局によるCITESの厳密な履行により、この取引が合法かつ持続可能であることが保証され、現地の人々に多大な収入をもたらし、球根が生育する山の脆弱な生態系を保護する動機を提供しているのです」と、Scanlon氏は付け加えた。
第22回植物委員会に関して
植物委員会は植物に関する条約の履行に技術的、科学的基盤を提供し、植物の取引に関するCITESの意思決定が盤石な科学的基盤に基づいて行われることを保証するものである。
植物委員会では、木材、楽器、薬、ゴム、化粧品、球根、装飾品、香料や香水、その他として、国際市場で取引されている広範囲の植物に関する問題が取り上げられる。
会議では、主に樹種の国際取引の持続可能性に関して議論することは間違いない。
世界には、わかっているだけで約100,000種の樹木が存在する。
今では600種以上がCITES附属書に掲載されているが、そのうち約400種が木材として取引されている。
61項目ある協議内容のうちの20項目は樹種に関するもので、アフロルモシアと沈香が中心となる。
協議された内容を基に、これらの樹種の持続可能な利用と管理をより進めるための方策と数多くの勧告と基準がもたらされる。
アフロルモシアと沈香はこの会議において特に重要な議題である。
アフロルモシアとしても知られるAfrican teak(学名:Pericopsis elata)は、中央アフリカおよび西アフリカの半落葉樹林の中でもより乾燥した地域に生育している。
近年、アフロルモシアの木材の取引量が急増し、利用の度合いが持続不可能な域に達する一方で、種の生育場所は減少している。
植物委員会ではコンゴ民主共和国が提案した新しい管理システムについて協議し、評価を行い、この価値ある種を今後も野生で長期間にわたり存続させながら、取引を続けるための最適な方法を助言する予定である。
沈香は、中央、東南アジアに広く分布するさまざまな樹種から採取できる樹脂である。
沈香は、木が菌に感染し反応した結果生成される。
沈香をベースにした香料や香水は、アラブやアジアの国々で宗教的な目的や芳香剤または装飾品として使われる。
最高品質の沈香は、国際市場で1kgにつき200万USドル(約2億4,330万円、2015年12月15日付換算レート:1USドル=約121.65円)にもなる。
天然林では、菌に感染しているのは20本に1本で、部分的なものである。
通常、沈香は見つけるのが難しい。
そのため、この高価な樹脂がありそうな部分を見つけるためだけに、多くの木が切り倒され、こまかく切断される。
これが無差別な伐採を引き起こし、樹木にとって深刻な脅威となっている。
植物委員会では、沈香を産する樹種の生育する諸国による、この資源の持続可能な管理の進展についての報告があり、今後の進め方に関する提案が検討される。
その内容はCoP17で発表されることになるだろう。
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