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« ウナギ属の保全と取引について(CITES CoP17の決議案) | トップページ | 象牙取引プロセスに関する意思決定メカニズム-ナミビア等提案(CITES CoP17の決議案) »

2016年10月21日 (金)

象牙取引プロセスに関する意思決定メカニズム-ベニン等提案(CITES CoP17の決議案)

和訳協力:山本 由紀子、校正:JWCS

1.本文書はベニン、ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、チャド、エチオピア、ケニア、ニジェ-ル、セネガルにより提出された。

要約

2.象牙の違法取引の結果、アフリカのゾウは重大な危機に直面している。MIKE(ゾウ密猟監視システム)およびETIS(ゾウ取引情報システム)のプログラムで収集したデ-タによると、密猟や違法取引によってゾウの個体群の減少が続いている。更に経済的分析が示すところでは、合法的取引を再開すれば、象牙取引はどんどん拡大してゆき、潜在的にゾウに壊滅的な影響を及ぼすことになるだろう。Conference of the Parties(CoP:締約国会議)で密猟者や取引業者、消費者に対して、CITESは象牙取引に懸念がある限り「取引を行わない」という、可能な限り明確な警告を送ることが不可欠だ。そうすればCITESは、象牙の合法取引に対する更なる利用を論議することよりむしろ、違法取引を阻止し、象牙の国際的な需要と国内需要を抑制し、アフリカゾウ行動計画を実行し、生息域内のゾウを保護することに全力を注ぐことができる。Decision Making Mechanism for a Process of Trade in Ivory(DMM:象牙取引プロセスに関する意思決定メカニズム)の作業部会は、過去3年間に渡り結論を出すことができず、付託を拡大すべきか否かについてCoPからの助言を求めた。2016年1月、66th meeting of the CITES Standing Committee(SC66:第66回CITES常設委員会)はこの結果を了承することにより、中間的で受け入れやすい対策を取った。この提案ではCoPが決議16.55(以前の決議14.77に相当)に基づきDMMの付託を拡大しないことを提唱している。

背景

3.2007年にCoPで決議14.77が採択され、それはCITESの常設委員会が象牙取引プロセスに関する意思決定メカニズム(以下「DMM」とする)を、CoPの主導のもとで提唱するよう指示するものだった。それ以来、DMMに関する交渉はCITESの常設委員会とCoPのもとで進められている。究極的にはこのDMM(事務局により最近の文書では、"Decision-making mechanism for authorizing ivory trade((仮)象牙取引を許可する意思決定のメカニズム)"とされている)で、国際的に認可されている象牙取引を更に認めることを目的とした規則が出来上がるだろう。そのプロセスは2013年のCoP16で完了するはずであったが、2016年のCoP17に持ち越された。DMMの作業部会が創設されたのはCoP16直後の第64回常設委員会の会合においてであった。しかし、2011年から2012にコンサルタントが行った「Decision-making mechanisms and necessary conditions for a future trade in African elephant ivory((仮)意思決定のメカニズムとアフリカゾウの象牙の将来の取引に必要な条件)」という研究や、UNEP(国連環境計画)とCITES事務局がSC66のためにまとめた背景報告書などを含む、ほぼ8年におよぶ議論にも関わらず、DMM作業部会や常設委員会、締約国会合のいずれも、どのDMMも合意に至らなかった。こうなると2013年のCoPで合意された会期間の作業の予定には間に合わないだろう。というのもゾウの違法な殺戮と象牙の密売が段階的に増加したため、締約国間で合意をみることは不可能だったからだ。

4.DMMに関する2件の報告書は締約国と会議参加者から大々的に批判された。2012年にコンサルタントが作成した報告書を批判する者の中に、1999年と2008年に備蓄品の取引に携わったゾウの生息国や消費国が一部存在した。2012年のコンサルタントによるCentral Ivory Selling Organisation(CISO:(仮)象牙販売中央機構)のための提案は、最初に提案された時に否決され、そして再度支持を得ることに失敗したにもかかわらず、UNEPとCITES事務局がSC66で提出した背景報告書において復活した。SC65でUNEPと事務局から要請された背景報告書は、作成が10か月遅れ、2016年1月に開催されたSC66において締約国により大々的に批判された。委員会の会合に出席した締約国や会議参加者が大きく介入し、DMMの討議を延期し、付託はCoPが第17回会合で終わらせるという勧告が支持された。常設委員会の結論は以下のものとなる。

常設委員会は作業部会が決議16.55の下、その作業を完了できなかったことに留意し、CoP7で決議16.55(以前の決議14.77)の下の付託が拡大されるか否かのいずれの結果になろうとも、CoPからの助言を得ることに同意した。

5.2007年のCoP14でその意見が提出されてから、DMMはCITES締約国や会議出席者、また科学者や経済学者の間でかなりの論争を呼んできた。主な問題の一つは、アジアの象牙市場からの合法的かつ持続可能な需要についての現実的な推定および、高まる需要が合法的に調達される供給量を簡単に超えることがあるという大きなリスクに触れることだ。アフリカゾウの密猟の比率が高くなったため、この需要の推定という問題は、経済界や環境保全関係者の間で主要な問題となった。IUCNのアフリカゾウ専門家グル-プの議長は、2012年5月にCITESの事務局宛てに、DMMに関するコンサルタントの報告書へのコメントをした手紙の中で、そのジレンマを概括した。

記載されたシステムの採択、あるいは勧告されたメカニズムの修正よりも前に、満たす必要のある需要が意義のある方法で推定されなければならないということはとても重要に思えます。中国一国だけで、毎年ごくわずかな人々が中流階級の仲間入りをし、象牙の消費者になると、需要規模は潜在的に大きくなり過ぎて、合法的に供給できる量を凌駕してしまいます。私はこのことを提起します。なぜなら、世界で最良の意思決定をしたとしても、需要が激増すれば合法的な供給量を急速に超えてしまい、アフリカの法執行の現場では、この種の課題に直面すれば、打ちのめされることになる公算がとても大きいからです。この重要な文書がこの可能性に現実的に対処していないことは、大きな欠点だと考えていいでしょう。実際に、厳しく管理されている合法的な供給量が、その範囲内で優に需要を満たせるという前提(しかしおそらく彼らは明確にしていないかもしれないが)は、現在の需要だけを根拠にすれば崩れてしまうのは当然です。

6.DMMのプロセスが実施されてから、国際的な密猟と密輸のネットワ-クに資金供与をするアジアの消費国で象牙の需要が増加した結果、ゾウはサハラ砂漠以南の多くのアフリカゾウの生息国で加速度的に姿を消している。CITESのプログラムであるゾウ密猟監視システム(MIKE)や象取引情報システム(ETIS)は、高いレベルで持続する違法な捕殺や象牙の違法取引について、直近の2014年6月と2016年1月に開催された常設委員会で報告してきた。現在のゾウの密猟レベルはゾウの成長率より高く、アフリカゾウの個体数はまだ減少段階にある。この危機に効果的に対処するためのCITESの対策に必須なのは、合法的な象牙取引の論議はもうDMMを使って行わないという明確で明快な警告を送ることだ。我々は、そのような警告を行わないままでは、アフリカの一部でゾウの個体群が絶滅に瀕するリスクが大きくなるのは必然であると考える。

分析と論議

7.DMMプロセスが存続すれば、プロセスの進捗がどんなに緩慢でまた遅延しても、どのような経路から入手した象牙であれ、過度で潜在的に違法な象牙の消費者需要にインセンティブを与えることになる可能性がある。それは非現実的でますます危険となる前提、つまりは密猟や象牙の違法取引を援護したり、奨励したりせずに、合法的で持続可能な象牙の取引がCITESの下で成立することが可能になる、という考えを正当化するものだ。ゾウの個体群の固有の成長率よりも高いレベルの需要を抱える市場主導の取引システムがある限り、この高いレベルの需要を潤す違法な捕獲をなくすことは、不可能ではないが困難である。

8.合法的な象牙取引を支持するために一部の人が用いる経済的論拠には、市場は安定しており、価格の形成力学が極度に単純化した仮説に対応することを前提としている傾向がある。恐らくこれらの仮説の中で最も重要なことは、あらゆる市場構造は完全に競争的なものであるということだ。それらの論拠はまた、相互依存する市場がもたらす効果をすべて無視し、市場参加者が単一商品しか取引しないという部分的な均衡モデルを基盤としている。この最終的な仮説は、国際象牙市場に関するあらゆる既存の証拠に矛盾する。実際にETISのデ-タでは、市場参加者が同時に数品目の商品を扱い、「多様な商品を扱う会社」の顔を持つ犯罪組織であることが多いという事実を裏付けている。違法取引業者は単一製品を扱う会社という思い込みは、価格戦争に耐え得る彼等の能力を著しく過小評価している。

9.このような論拠を支持しないその他の経済学者が、これらの仮説に4つのレベルで挑んだ。まず第1に、完全に競争的である場合、合法的な供給が一度許可されると価格は下がる、という前提となる。しかし、一部の均衡モデルで、完全な競争が成立していた場合でさえ、供給の順応性が需要のそれより小さければ、調整過程は必ずしも望ましい方向へ行くとは限らない。多くの研究で象牙の需要はかなり非順応的であると認めているため、供給の順応性が需要のそれより大きいかという可能性については深刻に検討する必要がある。その場合、象牙の合法取引は際限のない取引の拡大プロセスを招き、極端な負の結果につながるだろう。更には、市場構造によって、価格力学の点で結果に差が生じる。そしていくつかのもっともらしいケースでは、象牙が合法的に供給されても、象牙価格は下がる必要がない。第2に会社レベルや市場レベルでのコスト構造、採算性に関する情報不足が、違法取引業者の長期に亘る価格戦争をしかける能力を著しく過小評価することにつながることがある。第3に、世界レベルでの供給を管理することがほぼ不可能なため、取引賛成派の支持する極度に単純化されたモデルの予測する動きに、価格の動きや採算性を確実に一致させるのはとても難しいということだ。最後に、需要がどのように価格の下落(実際に起こればの話だが)に効果的に反応するかに関しての情報に大きな格差がみられる。まとめると、象牙の合法取引に関するDMMを基盤とするシステムの核心にある重大な欠陥は、もし本当に価格が下げられれば、象牙の消費者需要は現状より更に持続不可能なレベルにまで拡大する可能性があるということだ。しかし、価格が下落しないと、象牙を狙った象の密猟の誘因は高止まりする。

10.象牙は持続不可能な消費者需要を満たすため、また武力紛争や反政府軍の活動資金の供給源として利用されており、国際的な象牙密猟組織からの前代未聞の圧力にさらされる多くの象の生息国にとり、DMMの真の考え方は、今では時代錯誤でありまた不適切で、危険に思えるものである。

11.CITESの希少な資源を象牙取引のメカニズムを考案するために利用し続けることは、世界に受け入れ難いメッセ-ジを送ることになるだろう。そのような手段を取ることは、国家レベル、地域レベル、国際的レベルでの全ての象牙取引に対して、民間組織も政府もが持つ、拡大しつつある反対の意思を無視することになるだろう。高官レベルのイニシアティブの中には(以前は象牙販売の支援国で利益を上げていた国によるものを含む)、少なくとも象牙取引を一時停止にし、象牙の需要を減らす必要性を認めたものもある。2011年以降、16か国が備蓄象牙を公の場で破壊し、自分達もその例に従うと公表した国も数カ国ある。中国や米国、EUの数か国とアフリカを含む多くの国において、みなで象牙取引を終わらせるために、首脳クラスでの政治的誓約によって象牙の廃棄が行われた。この中には、首脳クラスの誓約には、中国と米国の国家代表間の協定や、象牙の国際取引および国内取引の厳格な禁止を呼び掛けたアフリカの25か国の代表によるCotonou宣言、国内市場を閉鎖するという香港政府の発表、野生生物の違法取引に反対し、とりわけEU内市場(骨董市場は除外)をほぼ閉鎖し、75年の条約が成立する前に市場に出回った未加工の象牙の輸出を禁じることを目的とするEU行動計が含まれる。CITESはこの誓約に、適時、配慮深く、応える必要がある。

12.管理された象牙取引を確立しようとして、CITESは長く曲がりくねった道の終着点にたどり着いた。DMMの交渉以前に、CITESの下、管理された象牙取引を確立するための、明らかに不成功に終わった一連の試みがあった。試みとは、1980年代の自主割り当てと象牙に目印を付ける構想、1999年と2008年のアジアの国々への一度限りの象牙取引などである。管理取引の試みを30年間以上行った後も、ゾウの個体数は記録的な低レベルにあり、平均して年に2‐3%減少している。また野生動物レンジャーの死傷や、地方社会が密猟者により負わせられた多くの人的損失もある。近年では唯一、1990から1997まで法的に効力があった、あらゆる商業的象牙取引を禁止する付属書Iにすべてのゾウ個体群を掲載した結果、ゾウの個体総数が非常に安定し、著しく回復した。

CITESの予算上の意味合い

13.決議4.6(CoP16修正)に従い、CITES事務局のためにこの提案の予算および作業量の意味合いを考慮してきた。この文書の著者らはこの提案に多くの資金が必要だとは考えていない。実際にDMM付託を終わらせれば、事務局や締約国にとってかなりの資金の節約になるだろう。

結論と勧告

14.象牙取引プロセスに関する意思決定メカニズムを確立するための過程を付託することを延長する場合、信憑性のある方法はない。実際にそうすると、投資や、将来の合法的供給への導入のために、象牙が密猟され続け、保存し続けられるという、逆効果のメッセージを野生生物犯罪者や密輸業者、密猟者に送ることになってしまう。これとは対照的に付託を終わらせれば、各国政府がゾウを保護し、象牙の密猟の惨劇を終わらせるために結束して取り組むという明白な国際的なメッセ-ジを送ることになる。将来の利益のために、洗浄を通して密猟した象牙を獲得しようとする誘因は大幅に減らされるだろう。そうなればCITES締約国と法執行機関は野生のゾウを保全する対策に集中できるだろう。

15.それゆえ、大部分のゾウの生息国のゾウの総個体数が直面する危機に照らし合わせて、締約国の会合で以下の事柄を決定することが推奨される。

(i)締約国会議の主導の下での象牙取引プロセスに関する意思決定メカニズム(DMM)に関する決議16.5(以前の決議14.77)による付託を拡大しない。そして

(ii)事務局の支援を受けた締約国は、長期にわたるゾウ個体群の安全性を達成するために、特にアフリカゾウ行動計画の実施と、アフリカゾウ基金の支援を通じて、法執行、密猟率や象牙の需要、違法取引を大幅に減らすための教育・資金調達面における対策に傾注すべきだ。

ニュースソース
https://cites.org/sites/default/files/eng/cop/17/WorkingDocs/E-CoP17-84-02.pdf

 

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