ロシアでは伐採業者がフクロウの最愛の友?
和訳協力:立田 智恵子、校正協力:石原 洋子
2015年9月29日 WCS News Release
フクロウと伐採業者は仲良くできるのだろうか?
ロシア極東の南部にある沿海地方で行われた最近の研究では、両者がうまく付き合うのが可能なだけでなく、絶滅の危機に瀕したBlakiston's fish owl(シマフクロウ)が沿海地方で生き延びるために必要であることが分かった。
この研究は、WCS(Wildlife Conservation Society:野生生物保護協会)、Russian Academy of Sciences(ロシア科学アカデミー)、そしてUniversity of Minnesota(ミネソタ大学)が実施したものである。
結果によれば、20,213㎢(7,804mile2)の調査区域のうち、シマフクロウに適している生息地の多く(43%)が伐採業者に貸し出されている土地にあった。
そのうち、自然保護地区として保護されているのは僅か19%(たった8組のフクロウのつがいにふさわしい広さ)しかない。
この研究の報告である論文「Blakiston's fish owl Bubo blakistoni and logging:applying resource selection information to endangered species conservation in Russia((仮)シマフクロウと伐採:ロシアにおける絶滅危惧種の保全への資源選択情報の応用)」は、査読付きの学術雑誌『Bird Conservation International』で、一定期間無料で閲覧できる。
これは「Spotted Owl vs Loggers II: Russia Edition((仮):Spotted Owl(ニシアメリカフクロウ)対伐採者II:ロシア版)」と同様の筋書きのように聞こえるかもしれないが、シマフクロウの擁護者とロシアの伐採業者の関係は、1990年代に米国太平洋岸北西部で起こったニシアメリカフクロウと伐採者との激しい論争ほど険悪ではない。
事実、沿海地方の北東部で最大の伐採業者のひとつであるOAO Amgu社は、すでに生物学者と協力して、彼らの土地にあるシマフクソウの生存に欠かせない渓畔林の区画選定を行っている。
つまり巣作りに適した大きな樹木や、沿川地域におけるフクロウが好きな餌である鮭を獲る場所などだ。
「伐採業者によるシマフクロウの生息地保護へのこの取組みは大きな意味があります」と、ロシア科学アカデミーの鳥類学者で論文の共著者であるSergei Surmach氏は言う。
「もしOAO Amgu社とその親会社のTerneyLes社が、彼らの権限のもとにすべてのシマフクロウの生息地を保護すれば、現在この地域でにあるシマフクロウの保護地域の数は3倍になり、その結果、私たちの調査地における潜在的なシマフクロウのすべての行動圏の約半分が守られることになります」と、もう一人の共著者であり、WCSのロシアプロジェクトのマネージャーであるJonathan Slaght氏は付け加えた。
この研究ではさらに、伐採業者が使用していない伐採道路を通行止めにして、シマフクロウやほかの野生生物の行動の阻害を軽減することを提案している。
今年の初めに報告されたとおり、TerneyLes社はWCSと協力し、同地域の主な橋を壊し、泥土の防壁を築くことで、伐採道路に車が入れないようにしている。
この道路の封鎖により、違法伐採が最低限に抑えられ、人為による森林火災のリスクが減少しただけでなく、密猟者が野生生物に近づけないようになった。
「わたしたちは常に、経済にとって必要なこととシマフクロウのような絶滅危惧種とのバランスを取る方法を探っています」とSurmach氏は言う。
「そしてこのような場合は八方丸く収まるのです」。
本研究は、Columbus Zoo and Aquarium(コロンバス動物園水族館)、Disney Conservation Fund((仮)ディズニー保護基金)、Amur-Ussuri Centre for Avian Biodiversity((仮)アムール・ウスリー鳥類生物多様性センター)、National Birds of Prey Trust、Bell Museum of Natural History(ベル自然史博物館)、Denver Zoo(デンバー動物園)、Minnesota Zoo Foundation((仮)ミネソタ動物園基金)、そしてNational Aviary((仮)国立鳥類園)から資金提供を受けた。
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