象牙取引の幕引きに米中が合意
和訳協力:蛯名 郁矢、校正協力:石塚 信子
2015年9月25日 WILDAID News
野放図になっている密猟からアフリカの象を救おうという歴史的合意において、オバマ大統領と習近平国家主席は、金曜日にアメリカと中国での象牙の商取引を終わりにするとの合意に至った。
この声明は、習主席が、世界最大の象牙市場である中国での象牙売買に終止符を打つ、との考えを初めて公に示したものであり、5月に中国高官が国内の象牙取引を段階的に排除していくと誓約したことに続くものである。
この声明は、商用象牙取引の世界的な中心地となっている香港に対しても強い圧力を与え、合法的な象牙取引を禁ずることになる。
香港はまた、近年密猟されたアフリカゾウの象牙の密輸や非合法取引の隠れみのの一つになっている。
近頃の調査により、香港で売買されている象牙の90%以上が中国本土に密輸されているものであることが明らかとなった。
金曜日にホワイトハウスから刊行された概況報告書では、上記の合意を承認している。以下に全文を示す。
野生生物の違法売買について
米中両国は、野生生物の違法売買と闘う重要性および緊急性を認識し、この世界的な課題に対して積極的な方策を打ち出すことを約束した。
両国は、狩猟の記念品としての象牙の輸入への重要かつ時宜を得た規制を含む、象牙の商業取引をほぼ完全に禁じる法律を制定すると約束した。
また、国内の象牙の商業取引を禁止する重要かつ時宜を得た対策を講じるとも約束した。
双方とも、野生生物の違法売買との戦いに関し、合同訓練や技術の交流、情報共有、公教育について一層の協力をすること、またこの分野に関して、国際的な法の執行での協力を強化することを決定した。
さらに、野生生物の違法売買を撲滅するための包括的な取り組みで、他国とも協力することを決定した。
WildAid(ワイルドエイド)のCEOであるPeter Knights氏は次のように述べた。
「本日の声明は、象の密猟を減少させる取り組みでの最も大きな一歩です。象牙の合法的な取引は、常に密猟された象牙を合法的だと偽装させることに用いられてきました。2009年に、中国の前政権が許可を出してから、アフリカでの密猟はうなぎ上りとなりました」。
また、「中国政府は、Yao Ming選手やLi Bingbing氏が主導した、ワイルドエイドの象牙の需要削減のキャンペーン、およびタンザニアや他のアフリカ諸国での保全活動を支援してきてくれました。オバマ大統領と習国家主席が共に個人的に象の保全を支援し、香港に象牙取引への幕引きに加わるよう呼びかけていただいたことに感謝を示します」と付け加えた。
1979年から1980年代後半までの10年間で、130万頭いたアフリカゾウの多くが殺され、推定で60万9千頭にまで減少した。
この後、1989年に象牙の国際的な商業取引が禁止された。
その結果、密猟が激減し象牙の価格が急騰した。
しかし、2000年代後半の象牙の「一回限りの」販売や、香港、中国、タイ、ベトナムそして米国といった国々の現行する合法の国内取引により、近年密猟された象からの非合法に輸出入された象牙の売買が横行している。
吉報
象牙売買の禁止は中国国内で広く支持を受けている。
2014年11月に、ワイルドエイドとAfrican Wildlife Foundation(アフリカ野生動物保護財団)、Save The Elephants(セーブ・ザ・エレファント)とが北京と上海、広州で行った調査では、回答者の95%が中国政府は象牙売買を禁止すべきとしており、象牙の密猟の認識度は、2012年に比べて50%も上昇した。
こういった動きは、ワイルドエイドの運動や習近平国家主席が国主催の晩餐でフカヒレ使用を禁止したことにより、フカヒレの消費量が50~70%減少したことに続くものである。
フカヒレ禁止の運動では、国営放送や民放から数億ドルに相当する放映時間を提供していただいた。
ワイルドエイドの象牙禁止運動は、アフリカ野生動物保護財団やセーブ・ザ・エレファンツ、さらには、Yao Ming選手や女優のLi Bingbing氏、実力派ピアニストLang Lang氏、ウィリアム王子、デビッド・ベッカム氏、Lupita Nyong'o氏、AMC制作の『ウォーキング・デッド』の出演者たちといった著名人たちが支援してくださった。
ニュースソース
http://www.wildaid.org/news/us-and-china-agree-ban-ivory-trade
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