コンゴ民主共和国におけるゾウの危機への緊急支援
和訳協力:松尾 亜由美、校正協力:石原 洋子
2015年11月16日 FFI News
Rapid Response Facility(RRF:(仮)緊急対応基金)の新たな助成金が、UNESCO(国際連合教育科学文化機関、通称「ユネスコ」)の世界遺産であるGaramba National Park(ガランバ国立公園)における密猟問題に取り組む関係当局の助けとなるだろう。
RRFは、横行するゾウの密猟問題へ取り組むために、コンゴ民主共和国のガランバ国立公園への緊急資金援助を行う。
この18か月で215頭以上のゾウが殺され、公園内のゾウの生息数は今では1,500頭を下回るほどに減少していると見られている。
現在のところ、公園の管理団体であるAfrican Parks Network((仮)アフリカ国立公園ネットワーク)による危機対応がないままにこの規模での密猟が行われれば、ガランバ国立公園は8~10年以内に、この公園の特徴といえるゾウたちを失うことになるだろう。
つまり、世界遺産の認定要件であるOutstanding Universal Value(顕著な普遍的価値)の大きな損失となるのだ。
ガランバ国立公園はコンゴ民主共和国の北東部と南スーダンの境界部に位置しており、密猟はこの極めて不安定な地域での政治的不安定さと戦闘に関係していると考えられている。
密猟者たちは最新の武器や大量の銃弾で重装備し、時にヘリコプターを使うことさえもある。
ゾウの死体からは、象牙だけではなくほかの部位が取られる場合もあり、子ゾウも含めて全てのゾウがターゲットになり得るということである。
ガランバ国立公園は、キタシロサイ(現在は絶滅したとみられる)の最後の生息区域であり、またゾウの生息地であるとして、顕著な普遍的価値があることが認められ、1980年に世界遺産に登録された。
しかし、あまりに多くの哺乳類に対する密猟圧により、1996年からWorld Heritage in Danger list(危機遺産リスト)に登録されている。
この前例のない密猟の急増は、ゾウだけでなく、人間へも破壊的な影響を与えている。
2015年の11月には、4人の男性(3人は国立公園のレンジャーで1人は陸軍大佐)が反密猟作戦中に殺されたのだ。
公園を守ろうとしている人々の犠牲者の数がさらに増えたことになる。
RRFから(コンゴの当局を代表してガランバを管理している)African Parks Networkへの助成金は、公園に接近してくるヘリコプターの早期発見や航空機の識別に役立つ、遠距離対応の双眼鏡、カメラそして暗視装置の購入のために使われる予定で、密猟者の追跡に役立つだろう。
UNESCOとFauna & Flora International(ファウナ・フローラ・インターナショナル)の協働によるRRFは、世界自然遺産が危機的状況にある際に、支援を行うことを目的としている。
今回のRRFの28,715USドル(約350万円、2015年12月20日付換算レート:1USドル=121.1円)の助成金は、ガランバ国立公園の密猟対策の設備の改良のために2014年7月に設立されたRRFの基金と、隊員の車の修理代を補うために集めたクラウドファンディングの資金を基盤としている。
RRFによる支援は、今回の危機に対する様々な組織からの支援の一部であり、支援の中には、United States Africa Command(AFRICOM:アメリカアフリカ軍)の支援を受けているAfrican Union Regional Task Forceとの一層の協力、反密猟チームをより早く配置するための新たな設備の構築、そして公園中の通信ネットワークの拡張なども含まれる。
ニュースソース
http://www.fauna-flora.org/news/emergency-support-for-elephant-crisis-in-drc/
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