IUCN、2015年「世界トラの日」を祝う
和訳協力:下島 深雪、校正協力:浅原 裕美子
2015年7月29日 IUCN statement
「世界トラの日」に向けてのIUCN(国際自然保護連盟)のInger Andersen事務局長による声明
トラは、森を象徴する動物です。
強さ、優美さ、権力のシンボルでもあり、伝説の存在です。
子どもの頃に恐れ、驚いたこの素晴らしい動物が、絶滅の危機に追いやられるなど想像も及びませんでした。
ところが、現実にそうなのです。
今日は、世界トラの日ですが、これは、20世紀に97%のトラが姿を消し、その個体数が約10万頭から現在の約3千頭にまで急激に減少しているという衝撃的な事実を受けて開かれた2010年の国際サミットで制定されたものです。
残った個体群は今や孤立しており、アジアでの薬の取引のための密猟、生息地の喪失や分断化、人間が生活のために狩猟をするトラの餌となる種の減少などによって、さらに切迫した状況下にあります。
重要なトラの生息地およびその周辺で生活する住民が増え続けるにつれて、森林資源の減少という脅威も続くことになるのです。
捕食動物の頂点として、健全な生態系を維持するのにトラは重要な役目を担っています。
トラの運命は、生息地としている森林や草原の運命と本質的に結びついていて、同様に食糧の確保や生計を立てるためにこうした資源に依存している人々の運命とも関係しています。
食糧源がますます限られてきているため、トラは家畜を捕食せざるを得なくなり、地元住民との衝突が生じています。
人間を襲うことが増え、生息域の多くでそのことに激怒した住民による報復的なトラの殺害が頻発し、トラの繁殖や下位個体群を維持するのに重要となる動物も減少しているのです。
この人間対トラの衝突を解決することは、互いに利益を享受しながら、いかにして人間と野生生物が共存できるのかという現代の保全に対する課題の典型例なのです。
ドイツ政府による援助とKfW(ドイツ復興金融公庫)との連携により、IUCNは2014年にIntegrated Tiger Habitat Conservation Programme((仮)統合的トラ生息地保全プログラム)を開始しました。
そしてその最初のプロジェクトがまもなく始動する予定で、それによって地球規模の取り組みが加速化することになるでしょう。
これらのプロジェクトは、トラとその餌動物の個体群をモニタリングし、孤立した個体群をつなげるために生息地をコリドーによって確実に連結させることに焦点を当てています。
一方で関係する地元住民、とりわけ先住民には、この活動が彼らの生活の持続可能な発展と両立できることを約束しています。
同時に、多様な形で協力しあっているGlobal Tiger Initiative(GTI:グローバル・タイガー・イニシアティブ)の存続を世界が強く望んでいることをうれしく思います。
IUCNは、GTIとそのパートナーとの緊密な連携によって前進していきたいのです。
長期的にトラの個体群を保護するために、何をすべきかは分かっています。
必要とされているのは、生息地の保全と回復、また注意深い個体数モニタリングと、密猟に終止符を打つことです。
それと同時に、地元住民の住環境を向上させ、森林資源への圧迫を軽減させるために、彼らが生計を立てるための代替的な資源を得られるようにしなければなりません。
今日はトラに注目が集まっているでしょうが、この種を救うことで、我々はより多くのことが達成できるということを世界に示すためにも、さらに多くの人に注目してもらわなければなりません。
アジアの森林をかつてのような手つかずの美しく豊かな場所にすることで、何百万という人々の生活を向上させることができるのです。
ニュースソース
http://www.iucn.org/news_homepage/?21728/IUCN-celebrates-International-Tiger-Day-2015
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