スマトラサイは緊急措置がとられなければ絶滅の危機―IUCNが警告
和訳協力:三尾 美里、校正協力:松尾 亜由美
2015年9月22日 IUCN International news release
野生のスマトラサイの生存数は100頭を切り、インドネシア政府が緊急にスマトラサイの回復計画を実行に移さなければ、この種は絶滅する恐れがあると、IUCN(国際自然保護連合)は世界サイの日に警告した。
生き残った100頭のスマトラサイは、2008年に行われた最新のIUCNのレッドリスト評価で推定された個体数の半分以下に過ぎない。
スマトラサイは、IUCN Red List of Threatened SpeciesTM(絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト)で絶滅危惧IA類に指定されており、先月、学術雑誌オリックス上で発表されたように、現在マレーシアでは野生下で絶滅したと推定されている。
この50~100年にわたって、スマトラサイはバングラデシュ、ブータン、ブルネイ、カンボジア、インド、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムで絶滅してきた。
IUCNのSpecies Survival Commission(SSC:種の保存委員会)のAsian Rhino Specialist Group(アジアサイ専門家グループ)によると、スマトラサイは現在スマトラ島の数ヶ所で見つかっているのみで、わずか一握りの個体だけがカリマンタン(ボルネオ島)で生息していると思われている。
「マレーシアはかつて、スマトラサイにとって最後の砦の一つとみなされていました。従ってこの国でサイが絶滅することは、この種の生き残りの可能性に大打撃を与えることを表しています」と、IUCNのSSC委員長、Simon Stuart氏は説明する。
「現在も続く密猟の危機、個体数減少の加速化、生息適地の破壊により、近い将来スマトラサイが絶滅する可能性が高まっています。インドネシア政府は緊急に、スマトラサイが今もなお生息しているすべての場所で、より安全性を高めた厳格な保護区をつくる必要があります」。
当初、スマトラサイの個体数の壊滅的な減少を引き起こしたのは、伝統薬に角を使用するために密猟と、この種にとって極めて重要な森林生息地の分裂を導いた、インフラ整備に関わる継続的な生息地の喪失である。
今日、この種の個体群は小さく、孤立している。
現在も続いている密猟の脅威に加えて、個体群の縮小と孤立化が繁殖率を低下させているのだ。
定期的に繁殖できないと、孤立した雌は生殖器に腫瘍を発症する危険性があり、そのことが不妊やさらなる繁殖率低下の原因となっている。
スマトラサイを救済する緊急措置は、2013年10月にインドネシアで開かれたAsian Rhino Range States
Meeting((仮)アジアのサイ生息国会議)で同意されたものであり、その後はこの種の新しい回復計画を発展させるために利用されている。
IUCNによると、インドネシア政府は現在、計画を実施するために資金を配分し、また計画実施のための緊急で迅速かつ大胆な決定をする体制を確実に整備する必要がある。
厳格な保護区をつくることと孤立したサイをより大きな集団に合流させることに加えて、飼育下繁殖がこの種を救済するために必要な主要戦略の1つである。
スマトラサイを救済する国際的な取り組みの一環として、シンシナティ動物園で産まれたHarapanという名前の若い雄が、来月スマトラ島にあるワイカンバス国立公園内のスマトラサイ保護区に生息する他の5頭のサイの群れに加えられる予定である。
「Harapanを野生の群れに入れることで、この種の飼育下繁殖がさらに加速されることが期待されています」と、IUCNのSSCアジアサイ専門家グループの代表であるBibhab Kumar Talukdar氏は言う。
「しかしこの種の長期的将来は、最終的にはインドネシア政府と市民社会の行動にかかっています。我々は、国民からの強い支持と同様に、政府機関と自然保護組織との間の効果的な協力や、インドネシア政府や国際的な資金支援団体による多額の資金の配分を必要としています。」
スマトラサイ(学名:Dicerorhinus sumatrensis)は、減少率が高いために、サイ全種の中で最も絶滅の危機に直面している。
同種はまた、最小で最も毛深い種で、アジアのサイの中で唯一、2つの角を持つ種である。
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