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2016年2月 5日 (金)

ヨーロッパに生息する野生ミツバチ類の約10%が絶滅に直面しており、50%以上の状況が不明

和訳協力:赤瀬 エリサ、校正協力:山本 麻知子

2015年3月19日 IUCN News story

ヨーロッパに生息するすべての野生のミツバチ類に対する史上初の評価書では、9.2%が絶滅の危機にさらされており、5.2%が近い将来絶滅する可能性があるとされた。
また全体の56.7%にも上る種が情報不足として評価されており、専門家やデータ、資金の不足により、これらの種の絶滅の危険性の評価は不可能な状況となっている。

本評価書は、European Commission(EC:欧州委員会)より資金提供されたIUCN European Red List of Bees((仮)ミツバチ類に関するIUCN欧州版レッドリスト)およびStatus and Trends of European Pollinators(STEP:(仮)ヨーロッパ花粉媒介者の状況と動向調査)プロジェクトの一環として、本日公表された。
これにより、ヨーロッパに生息する1,965種すべての野生のミツバチ類の状況や分布、個体数の動向、脅威などの情報が、今回初めて提供されたことになる。

「本書は、ヨーロッパの野生ミツバチ類の状況をこれまでで最もよく把握した評価書です」とIUCN(国際自然保護連合)のGlobal Species Programme(グローバル種プログラム)副代表のJean-Christophe Vie氏は語る。
「しかしながら、我々の持つ専門知識と資源はあまりにもわずかで、野生のミツバチ類に対する理解は不完全なものです。ミツバチは作物への花粉媒介に必要不可欠な役割を果たしています。ミツバチの減少をどのようにして覆すかということにおいて、考えられる最良の提言を提供するため、さらなる研究に早急に投資しなければならないのです」。

報告書によると、ミツバチの個体数は7.7%の種で減少し、12.6%の種では安定しており、0.7%の種で増加となっている。
ミツバチ類の残り79%の個体数の動向は不明である。

変わりゆく農業の習慣や集約的農業の拡大が、生息地の大規模な損失と劣化を導いている。
このことは、ミツバチの生き残りに対して大いなる脅威の一つである。

例を挙げれば、干し草を作付する代わりに貯蔵用の飼料牧草を大量に生産すると、草花の豊富な草原が減り、花粉媒介者にとって重要な食糧源となる花の開花期間が短くなる。
広範囲におよぶ殺虫剤の使用も野生のミツバチにダメージを与えており、除草剤は野生のミツバチがよりどころとする花をあまり利用できなくさせる。
また肥料の使用は、多くのミツバチ類が好む食糧源である顕花植物やマメ科植物があまり繁茂していない草原に変えてしまうのだ。

集約化した農業や農作業によって、乾燥した草原の面積が急減した。
乾燥した草原は、絶滅危惧種II類のAndrena transitoria(ヒメハナバチ科のハチ)が住処とする場所だ。
このハチは、以前は地中海東岸でよく見られた種で、シチリアからウクライナおよび中央アジアにも分布する。
殺虫剤の使用に加え、耕起や刈り取り、また放牧による顕花植物の減少が、この10年間でミツバチの個体数を30%減少させ、また国によっては絶滅させた。

気候変動は、多くのミツバチの種、特にマルハナバチ類に絶滅の危険をもたらすもう一つの重要な要因である。
大雨、干ばつ、熱波および気温の上昇は、個々の種が適応する生息地を様変わりさせ、また劇的に生息地の規模を縮小させることで、個体数の減少をもたらすと考えられている。
ヨーロッパに生息するマルハナバチ類の25.8%が絶滅の危機にさらされていると評価書は示している。

都市開発や頻発する火事もまた、ヨーロッパに生息する野生のミツバチの生存を脅かしているという専門家の意見もある。

報告書には、最も代表的な花粉媒介者であるWestern Honeybee(学名:Apis mellifera、セイヨウミツバチ)の評価も含まれる。
セイヨウミツバチはヨーロッパのほぼ全域での分布が認められるが、それが飼育された種ではなく、完全に自然発生しているものかどうかは定かではない。
レッドリストは人工飼育された種ではなく野生の種のみを対象にするため、人工飼育された種は情報不足として評価されている。
IUCNによると、今後、ミツバチの野生のコロニーとそうでないコロニーを区別し、ミツバチのコロニーへの栄養不良、殺虫剤、および病原菌の及ぼす影響をよりよく理解するためには、さらなる研究が必要であるという。

「重要な花粉媒介者としてセイヨウミツバチに世間や科学の注目は集中しがちですが、ほとんどの野生の花や作物は、様々な種のミツバチ類によって受粉されていることを忘れてはいけません」と、STEPのプロジェクト・コーディネーターであるSimon Potts氏は語る。
「野生と人工飼育下の両方の花粉媒介者の個体数を増やす支援をするためは、広範囲にわたる活動が必要です。これを達成することで、野生生物、地域や食糧生産に多大な恩恵をもたらすでしょう」。

「我々の生活の質、そして未来は、自然により無償でもたらされる多くの恩恵(生態系サービス)に依存しています」とEU(欧州連合)のEnvironment, Maritime Affairs and Fisheries Commissioner(環境・海事・漁業担当委員)であるKarmenu Vella氏は語る。
「授粉はこれらの生態系サービスの一つであり、その中で最も優秀な花粉媒介者の数種が危機にあるということはとても不安なことです。我々が野生ミツバチ減少の背後にある原因に向き合い、早急にその減少を阻止するための行動を起こさなければ、本当に非常に高い代償を払うことになるかもしれません」。

報告書の著者らは、保護地区の管理およびヨーロッパの農業政策におけるミツバチへの一層の注意を呼びかけている。
また、長期にわたってミツバチの状態を観察し、効率的な保全活動を確実にするため、国レベルおよびヨーロッパレベルでの調査活動とミツバチの分類学者に対するさらなる支援の必要性を強調している。

ミツバチは生態系および農業にとってなくてはならないものである。
ミツバチがもたらす作物の授粉の価値は、世界的にみて、年間約1530億ユーロ(約21兆円、2015年6月24日付換算レート:1ユーロ=138.6円、以下同率とする)、ヨーロッパだけでも年間約220億ユーロ(約3兆円)に値する。
花粉媒介者は、世界の農業生産量の35%におよぶ生産高を支えているのだ。

ヨーロッパで食用に育てられた主要作物の84%が、生産物の品質と収量を高めるため、昆虫による授粉を必要としている。
それはたとえば、多種の果物、野菜、ナッツなどである。
授粉は、野生または人工飼育されたセイヨウミツバチ、マルハナバチ類、その他多くの野生のハチ類、その他の昆虫など、様々な昆虫によってもたらされる。

生物多様性の損失に歯止めをかけるためにヨーロッパにおける戦略の実施の進捗を検討するときに、The European Red List of Bees((仮)ミツバチ類に関する欧州版レッドリスト)がもたらされた。
この評価の結果は、「2020年までにEUにおける生物多様性の損失と生態系サービスの劣化を阻止し、実現可能な限り修復する」という生物多様性目標を達成するために、EUの2020 Biodiversity Strategy(2020年生物多様性戦略)を確実に実施する必要があることを強調するものである。

ニュースソース
http://www.iucn.org/news_homepage/?19073/Nearly-one-in-ten-wild-bee-species-face-extinction-in-Europe-while-the-status-of-more-than-half-remains-unknown---IUCN-report

 

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