毛皮の国際取引を促進させるためにカリフォルニアのボブキャットが殺されている
和訳協力:コスキー・福田 志保、校正協力:鈴木 洋子
2015年4月3日 OneGreenPlanet Animal Monster
2013年、カリフォルニア州内の国立公園や野生生物保護区内、もしくはその周辺でのボブキャットの商業捕獲を禁止するBobcat Protection Act(ボブキャット保護法)案が、カリフォルニア州議会を通過した。
加えて、法案ではボブキャットの毛皮の商業販売および輸出も禁止されている。
この法律が整備される以前は、捕獲業者が国立公園の外周に沿って罠を仕掛け、公園の保護を受ける境界線の外へボブキャットをおびき寄せ、最終的に殺すことは完全に合法的なものだった。
毛皮を得るための大々的な猟がメキシコのボブキャット個体群を減少させ、この種の下位分類群である亜種が「絶滅危惧種」として分類されるに至った。
ボブキャット保護法の整備によって、自然保護論者はこの種に努力次第で生き残れるチャンスが与えられると期待した。
しかし、こうした法的保護にもかかわらず、ボブキャットは州の他の地域で捕獲が続いているため、いまだに苦境にある。
また、2年が経過した今も、法律がまだ厳密には施行されていないためでもある。
ボブキャットは、カリフォルニアの野生生物観光事業の経営的に大きな役割を果たす鍵となる種なのだが、中国およびロシアでのボブキャットの毛皮の需要が増加したことで毛皮の価格が跳ね上がり、またそのことがカリフォルニアにおけるボブキャットの捕獲ブームを巻き起こした。
この美しい大型のネコは、本質的に残酷な毛皮の国際取引を満足させるだけの目的で野蛮にも捕獲され、殺され、皮を剥がされている。
この種が生息地の破壊によって苦しんでいるだけでもひどいことなのに、毛皮のコートにされる目的で殺されているとは、聞くだけで誠に不愉快なことだ。
生態系で非常に重要な役割を果たすボブキャット
ボブキャットは小型哺乳類や齧歯類の個体数を調節することにより、生態系において非常に大きな役割を果たしている。
ボブキャットは最上位の捕食者であり、ボブキャットがいなくなると、生態系のバランスが完全に崩れてしまう可能性がある。
よく知られているように、人間の活動が最上位の捕食者を一掃してしまった地域では、イエローストーン国立公園でオオカミが排除された場合のように、食物連鎖のより下位の動物の個体数が過剰となり、生態系の劇的な衰退が引き起こされるのだ。
あらゆる最上位捕食者と同様に、自分の楽しみや利益のためにボブキャットを殺したいと望む人々が広げた誤解や誤報により、ボブキャットも危険にさらされている。
その壊滅的な影響は、反オオカミ主義により、アメリカの生き残ったオオカミ個体群が阻害された様子を見れば一目瞭然である。
そのような方法がとられれば、ボブキャットが絶滅の危機に瀕するであろうことは疑う余地がない。
だからこそ、ボブキャット保護法は極めて重要な法律なのである。
しかし、法令が効力を得るには、現行の法律を適正に施行し、捕獲禁止を州全体に拡大することが次に必要となってくる。
現在の状況では、法律の精神は完全に台なしになっている。
今こそ政策決定者は、こうした迫害行為を傍観してそれに加担するのではなく、権力や影響力を行使して、野生生物のために立ち上がるべき時なのだ。
国際的な毛皮取引が牽引するボブキャットの捕獲
ボブキャット保護法施行の失敗に応じて、Center of Biological Diversity(注1:生物多様性センター)の展開する、ボブキャット保護法の適正な施行を監視するためのキャンペーンが拡大している。
心強いことに、ボブキャットに関する意思決定機関であるCalifornia Fish and Game Commission(カリフォルニア州魚類狩猟委員会)が熱心に検討しているのは、ボブキャットの捕獲をカリフォルニア州全域で禁止することである。
人々がこうした捕獲に憤慨している声が大きく、はっきりと耳に届けば、委員会はこの選択肢を採るだろうと、キャンペーンの実施者たちは強調している。
従って、人々が声を上げて、ボブキャットの捕獲、殺戮、および皮剥ぎを容認できないことを委員会に示すことが非常に重要となる。
ボブキャットが自然環境下での迫害から解放され、モスクワや北京で毛皮コートとして着用されるために利用されないよう、法律が強化されなくてはならない。
この問題全体で最も言語道断な点は、カリフォルニアでの本種に対するこうした迫害行為を行う捕獲業者が100人ほどに過ぎないという点である。
いつものことながら、楽しみや利益目的でボブキャットを殺すのは、ごく少数の人間なのだ。
100人に満たない個人の懐を満たすために毛皮の国際取引を支えることと、この種が地域の生態系および経済に与えるあらゆるプラスの貢献とを比較評価すれば、プラスの貢献のほうに値打ちのあることが分かるだろう。
Project Coyote(プロジェクト・コヨーテ)のCamilla Fox氏はうまく要点をついている。
「1匹の生きたボブキャットが野生生物ウォッチングを楽しむ何百万もの人々に対して持つ価値は、1匹の死んだボブキャットが1人の捕獲業者に対して持つ価値をはるかに上回ります」。
ボブキャットを救うためにできること
生物多様性センターは、カリフォルニア州魚類狩猟委員会に対して、州全体でボブキャットの捕獲を全面禁止にし、生態学的に重要なカリフォルニアに生息するこの動物を保護するよう要請している。
「これらの動物は一握りの業者によって不当に利用されてもいいような商品ではないのですから、われわれはこれらの動物を、健全な生態系に生きる一員として、あるべき姿で保護し、価値づけする必要があります。州が野生生物に関する法律を21世紀に沿うものにしたいのであれば、ボブキャット捕獲の全面禁止に賛成票を投じるべきなのです」。
この活動に参加することで、あなたもこのキャンペーンをサポートできる。
注1:Center of Biological Diversityと思われれる。
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