農業関連企業がチンパンジーなどの大型類人猿にとって重要な熱帯雨林の生息地を破壊
和訳協力:三尾 美里、校正協力:K.M.
2015年2月23日 African Conservation Foundation News
グリンピース・アフリカからの新たな証言によると、絶滅の危機にある大型類人猿が、熱帯雨林の生息地を破壊され、中央アフリカでの農業関連事業の拡大に脅かされている。
グリンピース・アフリカが入手した衛星画像からは、カメルーン南部の中国が所有するHevea Sud ゴム・パーム油の利権地内において、Dja Faunal Reserve(ジャー動物保護区)に隣接する3,000ha以上の熱帯雨林がすでに破壊されていることがわかる。
保護区はユネスコ世界遺産であり、ニシローランドゴリラとチンパンジー、マンドリルの生息地でもある。
「農産工業の開発は、すぐにアフリカの熱帯林地帯における生物多様性を脅かす最大の脅威に浮上するでしょう」と、ジェームズ・マディスン大学の人類学の助教であるJoshua Linder博士は説明する。
「大規模な生息地改変の影響を軽減するための事前策がすぐに実施されなければ、アフリカの霊長類の多様性が急速に低下することが予想されます」。
ユネスコは以前、ジャー保護区に何らかの被害が出ているかどうかを評価するための調査を要求したが、現地当局の許可が下りなかった。
大農園が、Paul Biyaカメルーン大統領の地元選挙区に位置していたのである。
この森林伐採は、米企業Herakles Farmsがカメルーン南西部でパーム油事業のために行ったものよりもかなり大規模なものだ。
このプロジェクトもまた、重要な野生動物の生息地を破壊し、人々が生計を立てるために依存している森林を地域コミュニティから奪っている。
グリーンピース・アフリカが12月の調査で明らかにしたところでは、カメルーン企業のAzurもまた、カメルーンのリトラル州にある広域の密林をパーム油の大農園に改変しようとしている。
その大部分はエボ森林に隣接しており、国立公園の予定地とされている。
そこは、マルミミゾウなどの絶滅の危機にある哺乳類のほか、亜種ナイジェリアカメルーンチンパンジーや、希少で絶滅の危機にあるドリルを含む多くの霊長類が利用している。
グリンピース・アフリカはAzur社に2度手紙を送り、彼らの計画を詳細に説明し、その事業に関する環境への懸念を緩和することを求めたが、何の返答も得ていない。
ナイジェリアカメルーンチンパンジーは、世界で最も絶滅の危機にある霊長類で、不法伐採による生息地の破壊、密猟、野生動物の肉の売買、気候変動の影響を含む、非常に多くの脅威にさらされている。
ドリルは希少な類人猿で、世界の残存個体数の80%がカメルーンに生息している。
Azur社の大農園事業は、このすでに絶滅寸前の霊長類の生息地破壊を一層進める可能性がある。
産業規模の農業関連の利権の多くは外国企業が所有しているが、西アフリカや中央アフリカ中で、適切な土地利用計画なく利権が配分されている例がしばしば見られる。
森林伐採が地域社会の事前の承諾なく行われる場合、社会的衝突が頻繁に引き起こされる。
利権のある土地の多くが、生物多様性の価値の高い森林地域と重複しているため、深刻な環境悪化を引き起こし、絶滅の危機にある野生生物種に影響を与える結果となる。
「政府は、産業利権を配分する前に行う住民参加型の土地利用計画作成の手続きを緊急に作る必要があります」とグリンピース・ベルギーの森林キャンペーンの責任者であるFilip Verbelen氏は言う。
「生態学的価値の高い地域において、十分に地域社会との協議を行わずに進められる事業は、さらなる社会的紛争や環境への悪影響を生じ、そのリスクを高めるものであり、許されるべきではありません」。
コンゴ盆地は世界で2番目に大きい熱帯雨林地域である。
その豊富で多様な生態系は、何千万人もの人たちに食料、真水、住まい、薬を提供する。
これらの森林の保護は、気候変動との戦いにおいて不可欠なものだ。
しかしこの地域において、世界の資源に対する需要の増加、汚職、法の施行不足がもたらす脅威は増大している。
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