クジラやイルカの肉を消費するという悪しき文化が人々に与える影響
和訳協力:山田 由加里、校正協力:日原 直子
2015年4月1日 OneGreenPlanet Animal Monster
我々はクジラやイルカの肉に含まれる水銀について数十年にわたり警告を発し続けてきたが、それを食する人々は事の重大さに気づかないふりを続けている。
フェロー諸島や、ノルウェー、日本およびアイスランドにおける、ゴンドウクジラの仲間やイルカを捕って食す習慣に必要性はまったくない。
グリーンランドで捕られるクジラ肉の大半は現地の人が食べるわけではない。
グリーンランドで殺された絶滅に瀕しているクジラの肉は、ホテルやレストラン、クルーズ船で旅行客に提供されていることが我々の調査により判明した。
最近アイスランドから日本に向けて船積みされたクジラ肉は、水銀の含有量が多いために日本で廃棄された。
これはアイスランドで違法に捕獲されたクジラの生命を無駄にする驚くべきことである。
商業捕鯨は国際捕鯨委員会により1986年以来非合法化されている。
ノルウェー、日本、アイスランドおよびデンマークは、国際的に定められた商業捕鯨の中止措置に反して、違法に商業捕鯨を続けている。
クジラやイルカに含まれる水銀のことが騒がれているにもかかわらず、クジラやイルカを捕って食べる人々にとっては、大きな変化はないようである。
一番厄介なのは、多くの種のクジラやイルカがもつ水銀やその他の重金属の影響について、ほとんど何も言われていないことである。
人々は、汚染された、有毒なクジラやイルカの肉を食べることを選択している。
彼らは、水銀で汚染された魚を食べることを選択しているのだ。
クジラやイルカには選択肢はなく、海中の水銀や重金属の毒によって、ひどく健康をそこなっている。
海棲哺乳類の知性におよぼす影響はいかなるものか?
また、その生理学的な影響は?
何千頭ものアシカが息絶え、アメリカ合衆国西海岸の浜に打ち上げられている。
イルカの遺体は、世界中の浜に打ち上げられている。
一世紀以上にわたり、海は産業社会のゴミ捨て場となってきた。
化学物質、プラスティック、汚水、放射線および重金属の蓄積により、プランクトンからクジラに至るまで、生物多様性が減少しつつある。
海は瀕死の状態であり、もし海の環境が完全に損なわれれば、われわれ人類も生きてはいけない。
海洋生物の減少は文明の縮小を意味する。
海の生物多様性の消滅は、人類の終りを意味するだろう。
伝統の名の下での有毒な肉の消費
高緯度北極のイヌイットは、彼らが消費している肉の毒性が危険なレベルにあるというデータに直面しているにも関わらず、クジラやアザラシを食す習慣を、重要な文化の一部と主張して正当化している。
イヌイットやその子孫の生命こそ、その文化の犠牲になりつつある。
生き残っていくということは適応していくことであり、適応とは文化的習慣の変化かまたは、有毒な環境を避けるために地理的に移動することを意味する。
人類は海の生物多様性が直面している危機という問題に取り組まなければならない。
もし、産業社会がもたらす海中の毒をそのまま何の対処もしなければ、我々人類が自身の無知と傲慢の犠牲者になるであろうからである。
我々が、食べているクジラやイルカ、アザラシの肉が有毒であることを指摘すると、文化に対して鈍感だと非難される。
しかし、毒は毒なのだ。
水銀のレベルや水銀が人々の健康、海洋生態系における生物多様性に与える影響に関する事実を述べることは、まったく文化的に鈍感という話ではない。
クールー病とは、パプアニューギニアの女性や子供が主に罹患し死に至る、致命的な神経の変性疾患である。
ヒトの脳の組織を食べる際に摂取されるプリオンが原因とされた。
ヒトの脳を食べるのは、部族文化の一部であったのだ。
解決方法は、人肉を食す習慣をやめるよう部族を説得することであった。
同様に、狂牛病を引き起こすプリオンは、すりつぶした牛の脳や脊髄を牛に食べさせることが原因であった。
その習慣をやめることにより解決に至った。
ナスカのマヤやその他の多くの文化が、取り巻く環境が汚染され、もはや人々の生命を維持できなくなった時、消滅した。
自然の法則に特例はないのだ。
悪循環
論理は実に単純である。
もし、何かが毒なら、いかなる理由でも、どんな人でも、いかなる場所でも、食すべきではない。
もし人々がそのように行動することを選んでいるならば、毒を食すことをやめさせるためにできることはそれほどない。
しかし、科学や保健当局の役割は、毒の危険性について人々に警告することである。
水銀に汚染されたクジラやイルカ、アシカの肉を頑固に摂取し続けることは、自殺行為に等しい。
有毒な肉を故意に子供に食べさせることは、文化や伝統とは関係なく、児童虐待となる。
地球の状態は多くの理由により急速に変化しているが、その主な理由は人口過剰と工業化である。
イヌイットとフェロー島の人々は、まったくこの問題の原因ではないと間違いなく言える。
しかし残念ながら、文明社会は地球全体にクモの巣状に広がり、そのあらゆる部分が他のあらゆる部分と相互に複雑に関係しあっている。
人間社会全体と無関係に、特定の文化だけで存在し続けられる安全な場所はないのである。
クジラやイルカ、アザラシを食し続ける人々は、畜産工場で飼育された動物や農薬で汚染された農作物を消費し続ける人々と同じ結果に苦しむだろう。
悲嘆にくれても、文化の正当性を訴え続けても、誤りが正されることはないであろう。
毒はあらゆるものにとって毒なのだ。
人々には有毒な肉や魚を食べないという選択肢がある。
残念ながら、海洋生物にはこの選択肢はないのだが。
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