商業的農林業は生物多様性にとって全体としてプラスになりえるか―IUCNレポート
和訳協力:鈴木 亨、校正協力:長井 美有紀(Myuty-Chic)
2015年4月16日 IUCN Redlist News Release
最新のIUCNの研究では、採取産業およびインフラ産業界の数社が運用する先進的な取り組みを用いて、商業的農林業製品が如何に地球上の生物多様性の損失を減少させられるかの、初の検証を行っている。
この研究レポート「No Net Loss(ノー・ネット・ロス)とNet Positive Impact(ネット・ポジティブ・インパクト):生物多様性へのアプローチ」では、ある条件下で、企業の経営活動やサプライチェーンと関連した農業景観や森林景観に対し、ノー・ネット・ロス(NNL:全体として損失とならない)およびネット・ポジティブ・インパクト(NPI:全体としてプラスになる)アプローチをとることで、他の産業より生物多様性損失を削減できる、大きな可能性があるとしている。
IUCN Red List of Threatened SpeciesTM(絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト)によれば、農業は全世界の8,482種の、林業では7,953種の絶滅危惧種に脅威を与えている。
それと比較してインフラ産業および採取産業は、それぞれ最大4,688種と1,692種となっている。
同レポートでは、NPIアプローチの採用により、農林業に携わる企業が体系的で科学的な措置をとることで、自らの生物多様性への影響を評価し、生物多様性保全目標を設定し、この目標達成のために行動する必要に迫られるとしている。
「NPIは、ある程度の保全の効果をもたらす、責任ある経営業務の範疇を超えた、さらに進んだ取り組みです」と、IUCNのグローバルビジネスと生物多様性プログラムの代表であるGerard Bos氏は述べている。
「近年の食糧、繊維、燃料、林業製品への需要の増加に伴い、農林産業界は自らが生物多様性へ与える影響を認識し、更に持続可能となるための行動計画を実行する必要があります」。
NNLとNPIはともに、生物多様性への影響を相殺する(NNL)か、または負の影響を上回る保全対策を行う(NPI)ように努める開発プロジェクトの生物多様性保全目標として、徐々に認識されてきている。
NPIには、生物多様性リスク管理のための階級的な緩和措置を使うことも含まれる。
同レポートは、NPIアプローチが、農林業に携わるある種の企業で採用される可能性があると結論付けている。
あ
る種の企業とは、開発地域から離れた場所で野生生物の生育地や生息地を保護するのとともに、保全するにあたって懸念がある種を含む、その地域の野生生物の
個体数の増加や保護を目標としている企業や、作物の多様性、作物の生産性、現地での天然資源の使用効率の改善を目指す企業などである。
このレポートは、IUCNのグローバルビジネスと生物多様性プログラムが2013年に召集し、産業界と自然保護関係者から本件に関する専門家を招聘したワーキンググループによる成果である。
また、採取産業やインフラ産業の経験に加え、商業的農林産業界において今まさに進められている持続可能性への取り組みを活かして作成された。
次のステップは、適した農林産業の現場でNPIを試用するところまで来ている。
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