カメルーンで大量の象牙を押収
和訳協力:蛯名 郁矢、校正協力:杉山 朝子
2014年11月13日 IUCN Redlist News Release
カメルーンで190,000ドル(約2250万円、2015年2月23日換算レート:1ドル=119.01円、以降同レートとする)以上に相当する量の象牙が押収された。
これは、同国内での一度の押収量としては過去最大規模であった。
恐ろしいことに、マルミミゾウ39頭分に相当するほどの量の象牙が、カメルーンのMinistry of Forestry and Wildlife (MINFOF:森林・野生動物省)管轄の保護区の一つである、Dja Biosphere Reserve(ジャー生物圏保護区)の環境保護官に発見された。
Zoological Society of London (ZSL:ロンドン動物学協会)の支援する諜報ネットワークからの密告により発覚したものだった。
カメルーン南部の町Djoum(ドジュム)で検閲を受けたトラックで、カカオ袋の下に隠してあるのが見つかったのだ。
摘発された違法な積荷は総重量91kgで、それぞれの象牙の重さは4kgに満たなかった。
押収された象牙の数と大きさから、少なくとも20頭の子ゾウがこの闇物資調達のために殺されたことになる。
押収された象牙は、東南アジアに出荷予定だったようだ。
東南アジアでは、象牙の装飾品や装身具の需要が旺盛で、2001年以降アフリカのマルミミゾウの頭数を60%も減少させた。
象牙を運搬していたトラックを所有する地元業者は、逮捕され公判待ちの状態である。
カメルーンでは象牙の密売者は、一本につき最長で懲役3年が課される。
しかし、刑が執行されるのは稀であり、そのためMINFOFやZSLは象牙密売関連の訴訟が一般の人々の目に触れるようにしておきたいのである。
ジャー生物圏保護区でMINFOF管理委員を務めるAchile Mengamenya Goue氏は、「象牙1kgはカメルーンの闇市では500ドル(約6万円)、アジアでは最大2,100ドル(約25万円)の値がつきます。そのため、この違法取引の誘惑を阻止するには、関わった者をすべて起訴することが重要なのです」と述べている。
最も小型のアフリカゾウであるマルミミゾウの牙は、サバンナに生息する同種の象よりもまっすぐで強いため、うっそうとした茂みを押し倒して進むことができる。
マルミミゾウは、その牙の需要が高く、今やIUCNレッドリストの「絶滅危惧II類」に入っている。
ZSLの保護部門の代表であるJonathan Baillie教授は次のように述べた。
「象牙の違法取引を食い止めるためにいかなる機会でも得たいのであれば、取引に関与した犯罪者を重刑に処するしかありません。購入者は自分自身でよく考える必要があるのです。象牙の装飾品に、この威厳に満ちた堂々たる動物を虐殺するほどの価値があるのかを」。
ZSLは2007年以降カメルーンの地元の協力者とマルミミゾウの保護に取り組んでいる。
保護活動には、法施行の支援、ゾウの個体数調査、コミュニティの監視網を通じて野生生物犯罪に対処できるように地域コミュニティへ権限を付与すること、などがある。
IUCNのGlobal Species Program(グローバル種プログラム)の副代表であり、とSOS(Save Our Species)の理事でもあるJean-Christophe Vie氏は、次のように付け加えている。
「厳しい状況下で危険性も高いのですが、第一線で展開されている保護活動への協力者間の連携によって、密猟者と密売業者の逮捕率が高まっているようです」。
「カメルーンでの取り締まりが成功すれば、明日のIUCNのWorld Parks Congress(世界公園会議)に参加する環境保護者にとってさらなるはずみになるでしょう。というのも、参加者らは、野生生物犯罪を減らす上で、保護
区域の効果的な活用が果たす役割を強調する予定なのです」。
野生生物犯罪を取り締まることは、SOSが特に注意を向けている点である。
ジャー生物圏保護区でのZSLの取り組みは、地球規模の連携により資金提供されている85あるプロジェクトの一つである。
ニュースソース
http://www.iucnredlist.org/news/major-ivory-haul-seized-in-cameroon
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